AWC ミスター・プラネットマン 北埜 轍


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#4/569 ●短編
★タイトル (wad     )  01/12/24  18:42  ( 68)
ミスター・プラネットマン 北埜 轍
★内容                                         01/12/24 18:43 修正 第2版
宇宙が見えるんだってさ、アンタ信じられるかい?
俺の隣の房に入っているヤツはとかく妄想癖が酷くてね、
夜中にブツブツぬかしやがって煩くて眠れやしねぇ・・・。
ところがコイツ、一見気の弱そうに見える男が某国の
大統領を暗殺しかけたっつーから驚きよ・・・。

俺かい?俺は人身売買と婦女暴行とヤクの密売と人を15人
殺したってだけで、最終地このベントプラスト刑務所に
ぶち込まれたのさ・・・そう、後は刑の執行を待つだけだ。
それが何時なのか、囚人には知らされないのがこの刑務所の
「掟」みたいなもんかな。
死期を知らされないまま生かされるのはいい気分がしねぇけど
俺はかれこれ5年・・・この務所に生息させてもらってるよ。
政府のお慈悲とやらのおかげでね!がはは。

ああ、煩いったらありゃしねぇ・・・新入りさんよ・・・
毎晩隣のヤツの戯言がどれだけ苦痛かそのうちあんたにも
分かるよ・・・そうだな、あんまりソレが酷いときには
こうやって、壁に向かって一蹴りだ!ソレッ!!!
これで30分は大人しくなる。
30分たったらまたはじまるが・・・幾分マシになるだろう。
な?

男の言うには、壁によっかかって膝を三角に折って・・・
こう顔を伏せると真っ暗闇になってそん中に宇宙が見える。
って、そう言うんだぜ。そして奴さんは闇と無数の星しかない
宇宙空間の中で星になるんだそうだ・・・
務所の連中は茶化してヤツのコトをこう呼んでるよ。
「ミスター・プラネットマン」

俺は殆ど学がねぇ。読み書きすらまともに出来んから、
ヤツの言葉を借りるとするよ。
お天道さんがそうらしくて、勝手に光ってるヤツな
あれを「コウセイ」(恒星)っつーんだそうだ。
そんでもって、ヤツが言うには人間は皆、この広い世間で
光ってる・・・その・・・コウセイって言うんだよ。

学のあるヤツの言うこた分からんね。
そんで、ヤツのしでかしたことも・・・
自分は最後に光り輝く為に、身体に爆弾くくりつけて
官邸に潜り込んでたんだとさ・・・俺には皆目分からねぇ
当人だけが知ってるこったけどな。

確かに此処はうすーいライトが一個しかねぇな。
昼なんだか、夜なんだか、生きてるのか、死んでるのかさえ
分からなくなるコトもある・・・だから囚人の中には
狂気のうちに自分で自分の舌を噛み切ってな、
死んでくヤツが多いんだってよ・・・。

うひひ、アンタだってそうだよ。
誰が、いつ死ぬか・・・それが他人の手か
自分の手なのか分かりはしないんだ。
隣の男はかれこれ15年、こん中にいるらしいけどな
きっと、もうそろそろさ・・・
アノ時爆発しなかった爆弾の代わりに
自分で爆発しちまうかも知れねぇ・・・
こう・・・

「バーン!!!」


この男?
とうとう逝ったよ・・・
自分から逝った・・・。
プラネット・マンが狂わせた
小さなビッグ・バンと共に逝ったんだ。
僕もいつかコイツと同じ運命を辿るのだろうか。
宇宙が見える僕には分からない。





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