AWC お題>無人島>私の一歩は小さな一歩   永山


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#792/1336 短編
★タイトル (AZA     )  97/ 6/ 6   1:42  ( 56)
お題>無人島>私の一歩は小さな一歩   永山
★内容
 船の舳先付近に立つクック81は、細長い望遠鏡で、海の上を、あちこち覗
いていました。
 と、彼が突然、叫びました。
「あれだ! あの島だ!」
 指差した先には、絵に描いたような無人島がありました。
 何故、無人島だと分かるのか。
 一瞥すればその全貌が見渡せるほど、小さな島だからです。目立つ物と言え
ば、椰子の木らしい大木が一本。でも、実は成っていなくて、残念です。人間
どころか動物さえ、今のところ見当たりません。
 謎の化学薬品で見えなくされた人がいるか、超近代的な技術による地下秘密
基地が作られでもしていない限り、あの小さな島が無人島であるのは間違いな
いでしょう。
「あそこにお宝が?」
 船員その一のセミコロンブスが、クック81に聞きます。
「そうだ。この地図によるとな」
 クック81が懐から引っ張り出した地図のほぼ中央には、大雑把なペケ印が
着けてあります。
 地図の中央に描けるぐらいなら、最初からこの島の位置ははっきりしていた
はず。ですから、ここまで来る道程でも迷いはしませんでした。ちょっと波が
高かったけれど。
「よーし、もうすぐだ。ゆっくりと寄せるんだ」
 そうこうしている内に、船は随分と島に接近しています。カウボーイよろし
く投げ縄を放れば、椰子の木に引っかけることができましょう。もちろん、海
の男はそんな真似はせず、正式なやり方で船を係留させようと必死です。
 三十分ほどの悪戦苦闘の後、船を島へ横付け(?)させるのに成功したクッ
ク81達一行。
「いよいよ、拝めるんですね。船長」
「待て!」
 はやる船員どもを、クック81のたくましい腕が制します。
「まだ早い。上陸してからも、少しばかり歩き回って探す必要がある。おまえ
ら全員、土方をやってもらうぞ」
「そうなんですか?」
 セミコロンブスはがっかりしたように息を吐きました。
 それを見て、クック81は「わっはっは」と苦笑しました。彼は、からかわ
れるのが嫌で、笑うときは、その笑いのタイプに関わらず、いつも豪快に大口
を開けます。間違っても、声を殺して笑うようなことはしません。
「何がおかしいんです?」
「いや、なに。この地図は正確だが、不親切でいけない。島の大きさも考えず
に、こう、でーんと馬鹿でかい印を付けたもんだから、島のどの辺りなのか、
分からなくなっちまってる」
「はあ」
「ま、心配するな。あんな小さな島だ、そこら中を掘り返したって、さして時
間はかかるまい」
 気楽に言うと、クック81は自分用にもスコップを持って来させました。
「さあ、念願の獲物は目前だ!」
 船員達が数人がかりで持って来た黄金のスコップを握りしめ、クック81は
力強く宣言。さまになっています。
「これから上陸する! 私に着いて来い!」
 おー!というかけ声を背に、クック81は船の縁を蹴って、無人島の土の上
に降り立ち−−。


註.途中ですが、これ以降は、今回のお題にふさわしくなくなりましたので、
 カットさせていただきます。
  クック81らの一行がどうなったのか。また、島はいつ、元の状態に戻る
 のか。それらについては、機会があれば描くかもしれません。あしからず。




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