#2778/5495 長編
★タイトル (AZA ) 94/ 9/30 8:52 (167)
夏、十三(3) 永山
★内容
錦野兄弟と飛び入り組の女子学生コンビ・藤本利香と安川佐知代は、まるで
ダブルデートのような格好になっていた。
すっかり日も落ちて、空はロマンチックな語らいをするにはもってこいの絵
を描いている。
藤本と安川はそもそも、錦野兄弟に関心を持って、彼らのグループに合流し
たようなところがあった。だから、こういう展開になっても、何も怖じ気付い
てはいない。
「何度も言うけど、本当にきれいな星空だよなあ」
いささか空々しいのは、双子の弟である安彦の方。話題が少ない訳ではない
のだが、四人でいることに息苦しさを感じているといったところか。
兄の博樹も、どうでもいいような景色を眺めている。
そんな雰囲気を察した二人の女性は、お互いに目配せをした。場所はちょう
ど道の分岐点に来ている。そして藤本。
「ねえ、そろそろ二人ずつに分かれましょうよ」
「え?」
同時に同じ声を上げたのは、双子である所以か。錦野兄弟もまた、顔を見合
わせる。
「そうよ、いつまでもこうしていたって不毛だよ」
安川も調子よく言う。
「そういうことなら」
博樹が、やや声をうわずらせながら言った。
「問題はどういうペアになるかってことだ」
さすがに社会人と言っていいものか、安彦は具体的なことを口にする。
「私達の方は、こう言ったら身も蓋もないかもしれないけど、お二人のどちら
でもいいの」
藤本のあっけらかんとした言葉に、双子の男は何とも言えぬ表情になる。
「だって、顔が同じ上に、まだ知り合ったばかりで、あなた達がどう違うのか
分からないしさ。だから、とりあえず、両方ともつき合ってみたいなって。そ
ういう感じ」
「なるほど、そういう感じ、ね」
藤本の言葉を理解して、男共はにやりとした。
「くじ引きでもいいんだが……。やっぱり、第一印象を大切にしよう。安彦は
藤本さんと安川さん、どちらが好みだ?」
博樹の問いに、安彦は少し迷った素振りを見せてから、
「安川さんの方かな」
と答えた。
安川は素直に喜びを表し、藤本はちょっとむくれてやる。
「まさか、私を一人にするんじゃないでしょうね」
「いや、ちょうどよかった。俺は藤本さんが好みなんだ」
安彦は、どうも調子のいいことを言う。藤本は疑って問い詰める。
「本当に?」
「もちろん、嘘じゃないさ。俺、空手をやってるからかな、かわいいかわいい
ってだけの女性よりも、大柄なのに引かれる訳」
「あら、それはよかったですこと」
茶化したような安川。とにかく、ペアは決定した。
「じゃ、まあ、右と左に分かれるか」
と、安彦の組が右に行った。自然、博樹と藤本は左を選ぶこととなる。
この選択は、少しばかり彼らの運命を変えた。ほんのわずかな違いではあっ
たが。
小屋に入ったと言っても、すぐに眠るはずもない。アキらは鮫島夫人の注意
も半ば無視して、UNOをしながらお喋りに華を咲かせている。
「そうだよ、だいたいさ−−」
アキはルミの話に相づちを打とうとして、言葉を途切れさせた。
「どうしたの、惚けちゃって?」
ルミと倫がおかしそうに、それでいて気になったように言った。
アキは正面にある窓を指差した。
「窓の外、誰かいたみたい」
「え?」
振り返るルミ。窓の外は、ただ暗いだけだ。
「何にもないじゃない」
「さっき、影みたいなのが通ったのよ。一瞬だったけど」
「どうせ、外にいる誰かだろ」
つまらないことにかまってられないといった様子の倫。
「でも、どうして裏に回るのかしら。ずっと火の側にいればいいのに」
「ああ、なるほど」
倫は分かったような声を出した。
「何よ、兄貴。気味悪い」
「おまえ達にはまだ早いんだなあ」
「もったいぶるな、この」
殴る真似をするルミ。そんなことされなくても、倫は最初から話すつもりだ
ったようだ。
「あの大学生達とかさ、栗山さんや寺坂さんとかのこと。適当にくっついて、
どこか静かなところに散ったんだよ」
「え、それって」
「アキちゃんの考えている通り」
意味ありげに口元をつり上げてから、笑い出す倫。
「もう、兄貴。何を考えてるのよ。ケーベツされるぞ、そんなことを女の子の
前でやると」
「おまえらはまだ半人前。ケーベツされようがどうされようが、一向に気にか
けません」
そして倫は、手元のカードから一枚を捨てた。
そのとき、鮫島雅志と宮田が戻って来たらしい。入り口のドアの方がにぎや
かになった。
「若いのは元気がいいな」
そんなことを口にしながら。
「うふふ」
寺坂友恵はわざとらしい、媚びた笑みを浮かべた。
「こういうのは初めてだな」
栗山はベルトの止め金を外し、ズボンを下ろした。屹立した彼のものが現れ
た。慣れ親しんだ女の裸であったが、状況や過程が違えば、また一段と興奮で
きるものらしい。
「いきなりは嫌よ」
「分かってるさ」
また笑いながら、二人は互いに密着した。男は下半身のみ裸、女は全裸だ。
栗山の手が寺坂の頬をなで、その直後、唇が近付いていく。すぐに二つの唇
は吸い付きあった。栗山の表情も寺坂の表情も、先ほど子供達と一緒にいたと
きとは全く違う。
「っ、はぁ」
唇が離れると、どちらからも息が漏れた。ゆっくりと身体を横にする男と女。
次に栗山は右手を相手の左乳房にやった。いつからかは忘れたが、これで始
まるのが決まりのようになっている。そしてそんな右と左の組み合わせがもう一つでき
あがる。
しばらく続けた後、栗山は仰向けの寺坂に乗る。
「そろそろ」
「え、ええ」
初めてのシチュエーションのためか、また暗いせいもあってであろう、栗山
は一度、位置を確認しておこうと身体を離した。しっかりと目標を定め、いよ
いよ入れようとした。そのとき−−。
「?」
栗山は腰の辺りに鋭い痛みを感じた。
そして痛みは腹の奥底を突き抜けるかのような感覚となり、ついには彼のも
のの先にまで達した。
「いっ!」
声にもならぬ音を出し、彼は自分のものを見つめる。先が裂けている。裂け
た先から細い何かが出てきている。月明かりに乏しいので分かりにくいが、液
体にまみれているのは間違いない。
ついに、耐え切れぬ痛みが彼を襲った。
「ぐお」
尿道が張り裂けそうな痛み。いや、張り裂けそうなのではない。事実、張り
裂けているのだ。
彼のものを貫いたその細長い物は、そのまま一直線に下にいる寺坂のそれ−
−ついさっき、栗山が目標として定めたそれへと入っていく。
「あ、ああ」
寺坂の口から声が出た。目を閉じている彼女は、快楽を得ているらしい。
しかし、栗山はそれどころではなかった。
「お、俺のじゃない!」
痛みをこらえながら、彼は何とも間の抜けた台詞を口走った。
「な何だよ、これはぁ」
息を荒くしつつ、栗山は自分のものを両手で押さえる。こうしておかないと、
はちきれてしまいそうだ。が、もう遅かった。彼の手の中で、彼のものはぐち
ゃぐちゃと音を立てながら、へたりと垂れ下がった。
「おおおお」
痛みの根源を探ろうと、振り返る栗山。腰から痛みは始まったのだ。
そこに彼は見た。己の腰に何かが深々と突き刺さっているのを。
「あががががが……。何なんだ!」
いくらわめいても、下の寺坂は異変に気が付いていないようだ。
腰に刺さる棒の向こうに、黒い影があった。その両手はしっかりと棒を握っ
ている。
「きさま?」
もう痛みでどうしようもないくらいであったが、栗山は声を絞り出した。
瞬間、激痛が走った。影が棒をさらに押し込んでいる。
栗山はたまらず前を向き、自分を貫く棒の先を見た。寺坂の内部へと消えて
いる棒は、かなりの早さでさらに彼女の身体へ入っていく。
「ああ!」
絶頂の声。
栗山は見た。寺坂の腰の下辺りに、赤黒い液体が広がっていくのを。棒の尖
った先が寺坂の身体をも貫いたに違いない。しかし、寺坂はその痛みを快楽の
一つとして感じているようなのだ。
そして何よりも、栗山は自分の腹を中心としたしびれるような激痛に、もは
や耐えられなくなっていた。
「……何でだよ」
どうにか理にかなった解釈をしようとする栗山だったが、ゲームプログラミ
ングのようにはうまくいかなかった。
何とか手がかりを得ようと再び振り向いた彼を、最大級の衝撃が襲った。
「ぐげお」
影はまだ他に武器を持っていた。何か重たく鋭い物−−栗山には分からなか
ったがそれは斧だった−−が、栗山の顔面左を襲った。上顎と下顎のちょうど
間をとらえた斧は、左から右へ一気に通過する。
栗山の頭、上から三分の二ほどが吹っ飛んだ。草しげる地面に落ちたそれは
一回転し、まるで地球をかみ砕こうとしているかのような格好で止まった。
わずかの間もなく、栗山の下顎が血を噴き出した。勢いの仲々衰えない血は、
下顎を受け皿としてたまり、すぐにあふれ出た。
−−続く