AWC ニューハーフ殺人事件18    朝霧三郎


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#1154/1158 ●連載    *** コメント #1153 ***
★タイトル (sab     )  22/10/10  11:45  ( 76)
ニューハーフ殺人事件18    朝霧三郎
★内容

副題:ガイシャが薄いのはニューハーフの仲間がいたからじゃないか。

レストラン マロニエの前には、ランチの見本が並べてあった。
ラーメン800円。
チャーハン700円。
ランチメニュー(日替)ロールキャベツ、サラダ、スープ付き900円。
「これでいいや」と光男はランチメニューの食券を買った
店内に入ると会議室にある様な椅子を引いて腰掛けた。
「なんだよ、社食みたいな店だな」と光男。
「村上春樹みたいですね」と明子巡査。
「え、なんで?」
「皇居の周りをうろうろしていると、村上春樹みたいにおのぼりさんに
なった気分になるんですよ」
「おいおい、俺らだって警視庁の警察官なんだからおのぼりさんってことは
ないだろう」
「村上春樹の小説って、
はとバスみたいに都内の名所をぐるぐる回るんですけれども、
西武系とか出てこないんですよね」
「へー」
「和敬塾とか、イグナチオの土手とか、伊勢丹の裏の深夜映画館とか、
アルプスの広場とか、
はとバスみたいに東京の名所が出てくるのですが、渋谷とか出てこない。
「ノルウェイの森」に限ってですが。
あれはミツさんみたいに、コンプレックスがあるんですかね。
西武とか金持ちに。
金持ちなんて糞くらえ、と書いていますが」
「村上龍の小説には出てきそうだな。プリンスホテルとか。
村上龍の方が濃いんじゃないの? 村上春樹に比べて」
すぐにロールキャベツが運ばれてきた。
「それにしても、あのガイシャは薄かったな」
「あのガイシャが薄かったのは…」
ロールキャベツを口に運びながら明子巡査が言う。
「やはり「神の死」が関係しているんですが」
「おい、又精神分析かよ」
「表参道のブランドショップには脂ぎっていては行けない、って言いましたよね。
阿部寛やTOKIO長瀬だったら脂ぎっていてもシンメトリーだから大丈夫なんですが。
脂ぎっていてシンメトリーでもない人だったらダメなんですよ。
例えば、ミツさんがよく聴いている“ヤクブーツはやめろ”のSHOとか無理ですね。
だって大切な商品に手脂がつくから。
でも、ドン・キホーテなら平気なんですよ。
「神の死」があるから。
でもこの時には同時に、身体を嫌っているんですね。
だって身体からは手脂が滲み出てきますからね。
だから、拒食症患者が皮下脂肪を嫌うみたいに、どんどん身体を殺していくんです。
滅私です。
これは、フロイト博士流に言うと、死に向かっている感じですね。
生に向かっている時にはエロス、ペニスの愛ですが、
死へ向かっている時はタナトス、肛門性愛なんです。
性の退行というやつですね。
だから、ドン・キホーテに行った時には、肛門性愛に走る筈です。
でもこの段階では一人でアネロスでやっている感じです。
しかし、その内、滅私が完成して、完全に、すっぴんを捨てる感じになると、
これはもう、スーパーフラット、シミュラークルです。
「薔薇族」的濃さからBL的スーパーフラットへの移行です。
この時には、BLですから、ニューハーフの相手がいる筈です。
という訳で、あのガイシャが薄いのは、
ニューハーフのパートナーがいるからではないかと」
「何でニューハーフなんだい? ゲイの仲間でもいいんじゃないの?」
「ゲイだと「薔薇族」みたいで濃いですからねえ。きっとニューハーフですよ」
「ふーむ」
「そしてニューハーフの仲間がいる時には、濃い表参道のブランドショップへの
コンプレックスはなくなっている筈です」
「何で?」
「だって、「神の死」もあるし、スーパーフラットでシミュラークルだから」
(うーむ。難しい。
しかし、本当かも知れないとも思う。
俺はデカ長がイケていると思っていたが、アリスにやられてからは、
デカ長がただの加齢臭のおっさんに見えてきたから。
もしそうだったら、つまり、もしニューハーフを相手にしていたら、
西武へのコンプレックスも、
阿部寛やTOKIO長瀬みたいな濃いイケメンへのコンプレックスも
解消されるというのなら、夢の様な話だな。
本当だろうか…。
しかし、そこまで推理しているとは、見かけによらず鋭い女だな)





元文書 #1153 ニューハーフ殺人事件17    朝霧三郎
 続き #1155 ニューハーフ殺人事件19    朝霧三郎
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