#1135/1158 ●連載
★タイトル (sab ) 22/07/15 11:21 (155)
肛門刑事(デカ) 1 朝霧三郎
★内容
警視庁玉袋署の警部補、水戸光男は、或る日、大腸内視鏡検査を受ける為に、
T女子医大系の病院を訪れた。
検査に先立ち、下剤2リットルを飲んで、大腸の中身をじゃーじゃーと
排泄しなければならなかった。
ロッカーに入って、肛門のところがくり抜いてある紙パンツに履き替えると、
検査着に着替えた。
出てくると、看護師が手の甲に点滴の注射針を刺した。
ぽたぽたと点滴筒の中を落ちてくる水滴は、脱水症状を予防する生理食塩水らしい。
こういう状態で、準備室のソファに座ると下剤を飲みだした。
パウチに入っている液体を紙コップに注ぐと、とりあえず一杯飲んだ。
甘くないポカリスエットみたいな味がした。
水戸光男以外にも3人のジジイがいて、それぞれポカリを飲んでいた。
すぐ隣のジジイは、天パーの赤鼻で、カーっと下剤を飲み干すと、
こっちをやぶ睨みに睨んで言った。
「そっちの旦那は随分若いねぇ」
「いやぁ、もう古だぬきですよ」
「あんた、あれだなぁ、三國連太郎の息子に似ているなぁ」
「はぁ?」
「そらあ、佐藤浩市だよ」と奥のジジイが言った。
「どうにかしたのかい?」と赤鼻のジジイが言った。
「職場の検診で潜血反応が出ちゃったんですよ」
「そらあ大変だ」
と、全く大変ではない様に言うと、更に一杯注いで一気に飲んだ。
「ぬるい。せめて冷やしておいてくれたらなぁ」
「そんなことをしたら下痢しちゃうよ」と奥のジジイ。
「どうせ出すんだろうが」
「ちげえねー」
「わははははは」とアホみたいに笑ってから赤鼻は又こっちを睨む。
「出なかったら浣腸されちゃうよ」
「えっ。詳しいですね。痛いんですか?」
「浣腸が?」
「いや、内視鏡が」
「うーん、コーナーのところで、カメラの先っぽが、ぐーっと大腸を押すと、
痛いこともあるね。でも女医さんにやってもらうと痛くないんだよなぁ。
ここは女子医大系の病院だから、若い女医さんが多くて、
今日も三人の内二人は若い女医さんがやるんだよ。
それは、ホームページで検査する医者の名前をチェックして、
それから待合室にぶら下がっているディスプレイの顔写真をチェックして
確認したんだから間違いないんだよ。
ところが残りの一人が野郎で、この病院の病理医なんだが、
どんなに辛い検査でも患者のために心を鬼にしてやっています、
とかホームページに書いていやがって、そんなのにやられたら堪んないな。
……佐藤浩市君も、女医狙いで今日にしたの?」
「そんなことないですよ」
「とにかく野郎の医者にやられたんじゃあ、当分立ち直れないからな」
などと話している内に腹がごろごろしてきた。
夕べ飲んだ下剤が効いて今朝から下痢だったのだが、
その上にこんなポカリを飲んだものだから、すぐに効いてきたのだろう。
「ちょっと、もよおしてきましたんで」
言うと、水戸光男は点滴のキャスターをガラガラ押しながら便所に向かった。
キャスターごと大便所に入るとバタンと扉を閉めた。
便座に座ると同時に、ぶりぶりーっと固形のうんこが出た。
それからシャーっと水の様な便が。しかしまだ茶色い。
これが透明になるまであのポカリを飲まなければならない。
ウォシュレットを強にして洗浄のボタンを押すと、
排便と同程度の勢いで温水が出てくる。
シャーッと。
準備室に戻ると又ポカリの続きを飲んだ。
他のジジイも入れ替わり立ち替わりキャスターを押して便所に行った。
「うっ」。水戸光男にもすぐ第二波が襲ってきた。
又便所に行って、シャーッと水の様な便をする。
そうやって十往復ぐらいして肛門が火照ったころに便は透明になった。
やがてジジイたちは一人又一人と検査室に連れていかれ、
最後に水戸だけが取り残された。
テーブルの上のポカリのパウチや紙コップも片付けられて、
キャンディの包み紙がまるめて転がっているだけだった。
キャンディは味気ないポカリを飲みやすくする為に二粒、三粒、与えられていた。
すぐに看護師が迎えにきた。看護師は点滴をチェックしてから、しゃがみこんで
「ミトさんね」と言ってきた。
「そうです」
「じゃあ、案内しますから」
さあ、いよいよだ。水戸は看護師に脇を支えられる様にして検査室に向かった。
がらがらがらー、と検査室の引き戸を開ける。
床も壁も蛍光灯で白く光っていた。真ん中に妙に小さい検査台があって
モニタがアームで固定されていて腸壁が映っている。
あと、血圧、脈拍のモニタもある。
奥の方に机があって、女医が背中を向けて座っている。
(やった。女医だ)と水戸は思った。
女医はPCに何か打ち込んでいたが、脇にCDラジカセがあって、
音楽が流れていた。
そこは影になっていて薄暗かったのだが、
CDラジカセの青色LEDを見ている内に、
カーオーディオのイコライザーを連想して、
瞬間的にまったりした気持ちになる。
(あの音楽だって患者をリラックスさせる為というよりも、
女医自身をリラックスさせる為なんじゃないのか)、
と、華奢な体にクリーニングの糊でバリバリの白衣を着ている女医の背中を見て
思った。
水戸は女医の顔を見てやろうと思って「よろしくお願いします」と言ったが、
絶対にこっちを向かない。照れてんじゃないのか。
水戸は看護師に促されて 検査台に寝かされた。
腕と指先に血圧計、脈拍計を装着される。
腹をおさえる係りと背中をさする係りの看護師が前後にスタンバイする。
「それじゃあ膝を抱える様にして丸まって下さいね。…先生、準備できました」
と看護師。
電灯が落とされ室内が真っ暗になった。
女医は、ぐるっと旋回して水戸の背後に回った。しかし暗くて顔は見えない。
「それじゃあちょっとぬるっとしますから」という美声が聞こえた。
と思ったら、いきなり指2本を突っ込まれて、ぐるり一周撫でられた。
ちんぽがピクピクっと反応する。
「入ります」
言うと女医は内視鏡の挿入を開始する。
直腸からS字結腸の方へずぶずぶと挿入されていくのが分かる。
しかしこの段階では、肛門の括約筋で擦れる感じがするだけだった。
S字結腸から大腸へのコーナーに差し掛かると、
「仰向けになって足を組んで下さい」と言われて、
体を仰向きにさせられる。「膝小僧の上にふくらはぎを乗せる格好で」
ほとんど正常位の恰好で金玉の下からずぶずぶ突っ込まれる。
突き上げる様な痛みが襲ってきた。
「ううぅ」。水戸はうめいた。
「リラックスして、息を吐いて、息をはいて」と言いながら、
看護師が腹を押してくる。
カメラが大腸を突き破って飛び出してくるのを押さえているかの様に。
女医はカメラのノブをルービックキューブでも回すみたいにカチャカチャ回したり、
或いは、肛門のところでカメラを出し入れしながら、
更にずぶずぶと突っ込んできた。
大腸を通り越して盲腸に向かうコーナーで、又、横向きに寝かされて、
更にぐいぐい突っ込まれる。
「はい、盲腸に達しましたからね。後は抜きなら見ていきますからね。
ミトさんもモニターを見ていて下さいね」と言われると、
看護師に又仰向けにさせられて、膝の上で脚を組んだ。
しかし散々あちこにを向いたものだから、紙パンツの丸くくり抜かれた箇所が
上にずれていて、チンポが丸見えになっていた。
しかも勃起はしていないもののガマン汁が出ている。
血圧計のモニタには脈拍130と出ていたが、その明かりでガマン汁が光っている。
ここからは抜くだけなので、全く痛みがなく、
その分アナルで擦れる感じがよくわかって、
ますます(勃起するんじゃないか)と水戸は思った。
女医はどんどん抜き出したのだが、腸壁を見る必要からか、
エアーをどんどん吹き込んでくる。
看護師が腹を摩りながら言った。
「ミトさん、どんどんガスを出して下さいねー、
おならじゃなないですからね、恥ずかしくないですよー」
そして肛門を緩めると、ぶーーーーーと、空気が出た。
(これはマン屁の感覚か。いや、チナラでもない。オナラでもない。
これがアナラの感覚か)。
勃起はしていないし、ガマン汁も、肛門から漏れ出してきたゼリーで
ベトベトで分らない。(これは案外いい塩梅かも)と思いつつ、
ミトはかま首もたげて、モニタと女医を交互に眺めていた。
ところが検査も終盤にさしかかったところで、いきなり隣の検査室のドアがあいて、
例の野郎の病理医が入ってきた。
女医の横に立つとモニタを見て、「なんかいっぱい出来てんなー、細胞とったの?」
と言われた瞬間に、肛門に激痛が走った。
「痛てー」水戸は腰を浮かせた。
「ミトさん、リラックスして 息を吐いて」と看護師。
そして水戸はラマーズ法の様に息を吐いたのだった。
最後に肛門からカメラがぽろりと出た時には、
全くの異物に成り果てていたのであった。
電気がついて、女医はPCにかじりついた。
病理医の姿はなかった。
看護師は後片付けを始めていてもうかまってくれない。
水戸は、肛門から出るゼリーを紙パンツでおさえつつ、検査台から下りた。
「細胞取りましたから。結果が出るのは2週間後ですから」と、
女医が背中を向けたまま言った。
「どうもありがとうございました」と水戸は糊でバリバリの白衣の背中に挨拶した。