AWC かわらない想い 21   寺嶋公香


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#38/1165 ●連載
★タイトル (AZA     )  02/05/31  23:06  (339)
かわらない想い 21   寺嶋公香
★内容
 なかなか、都合のいい日は見つからなかった。と言うのも、四月はばたばた
と過ぎ去ったし、五月に入ると中間試験、そして修学旅行が控えているからだ。
「うーむ」
 うなっているのは悠香。喫茶店の白い丸テーブルの上には、手帳が三つが寄
せ集められていた。開かれたページは、スケジュール欄。悠香の物と、公子の
と、要のと。今日は久しぶりに、中学のときの三人組だけがそろった。
「だめだなあ。カナのとことうちらの修学旅行、ちょうど入れ替わりなのが、
最大の問題よね。これですべてぱぁ、だわ」
「いっそのこと、六月にしてしまえば」
 公子の提案にも、首をひねる悠香。
「六月は雨が多いから、予定が立てにくい。嫌い」
「じゃあさ、七月」
 要が髪を揺らして言った。きれいにカールしている。
「七月は期末試験でしょうが」
「あ、そうか」
「もう、この話は後回しにしましょ。夏休みに入れば、どうにだってなるわ、
きっと」
 公子はストローに唇を当てると、ジュースを一口飲んで、続けた。
「それより、折角そろったんだから、前みたいにお喋りしたいな」
「そうよねー。私、あんまり、キミちゃんと話せてなかったし」
 要はとけ始めたアイスクリームを口に運ぶ。
 二人の様子を見て、悠香は手帳を、音を立てて閉じた。
「わ、私の苦労がっ。……まあ、いいわ。それなら今は、遊びに行く計画は忘
れた。ただし、夏休みに行くんなら、本格的な旅行にするわよ」
「それ、面白そうっ」
 はしゃぐ要。
「どこ行こう?」
「か・な・め・ちゃん? その話はもうしないの。お喋りするんだから」
「そ、そうだったね。キミちゃん、学校には慣れたの?」
「ええ。もう、すっかりね。秋山君とか頼井君、もちろん、ユカも、助けてく
れるし」
「あ、思い出しちゃった。秋山君、クラス委員長になったんですって? 何だ
か忙しいみたいで、あんまり会ってくれないの」
 要にしては珍しく、声のトーンが落ちた。
(カナちゃんも秋山君のこと、本気だもんね)
 公子は気持ちを押し隠して、要に声をかける。
「本当に忙しそうよ。さっき言った修学旅行でも、クラスのまとめ役でしょ。
先生から色々と指導されてるみたい」
「そうなの? もう嫌われたのかと思って」
「そんなことないって」
「あー、要」
 悠香が割って入った。
「前から聞きたいなあと思っていたんだけど……秋山君に、どんな打ち明け方
したの? 私ゃ、喫茶店までついていって、影から見てたけど、さっぱり聞こ
えなかったもんで」
 途端に、要の顔は赤くなり、うつむいてしまった。
 公子だって、少しばかりどきどきして、悠香の方を見た。
(唐突に、何てことを)
「聞きたい」
 悠香の言葉の調子は強い。
「だってぇ……恥ずかしい」
「私達の他、誰も聞いてないって。誰にも言わないしさ」
「……本当?」
 意外に早く、話す気になったらしく、視線だけ上げた要。
「ほんとだって。ねえ、公子も約束できるよね。誰にも話さないって」
「え? う、うん。話さない」
 悠香に言われて、ついそう答えた公子。本心では、聞いてみたいのは公子も
いっしょだ。むしろ、聞いてみたい気持ちは誰よりも強いかもしれない。
「じゃ、じゃあ言うけど……笑わないでよ」
 声が一段と小さくなった。それに相づちを打つ悠香。
「うんうん」
「あのとき、ほんとはね、恋人になってって言おうと思ってたの。実際、家を
出るときはそう決心してたのよ」
 そこまで聞いて、公子はつばを飲み込んだ。
「それがね、喫茶店に入って、秋山君と向かい合わせに座った途端、頭の中が
パニック状態になっちゃった。もう、何を喋っていいのか分からない。それど
ころか、顔もまともに見れなくて、とにかく、プレゼントを出して、必死に言
葉を考えたの。それで出てきたのが」
「何?」
 悠香の顔は、少し笑みが浮かんでいる。当日、覗き見していたから、まざま
ざと記憶がよみがえるのだろう。
「『お友達からでいいから、付き合ってください』って」
「何とも、まあ」
 机に乗せるようにしていた上半身を起こして、悠香は椅子の背もたれに身を
預けた。その横で、公子も内心、ほっと安堵の息をつく。
「カナちゃん、それで、秋山君の返事は?」
「うーんとね。『友達なら、今でもそうだよ』って言ったの。だから、私、急
いで付け加えたわ。『二人きりでデート、してくれる?』って。そしたら秋山
君、ちょっと考えたみたいだったけど、『うん、いいよ』って笑ってくれたか
ら、うれしくなって」
「ふむ」
 一つうなずき、悠香は公子に耳打ちしてきた。
「秋山君、思っていた以上に、相当鈍いよ。頭いいのに、こういうことにはう
といのかしら? どこまで本気で考えているやら」
 笑うに笑えない公子としては、曖昧にうなずくにとどめた。
「お友達以上には、なってないよね」
「や、やだぁ、ユカちゃんたらっ!」
 一層、頬を赤らめて、要は悠香の肩を叩いた。
「そんなの、とても無理だってばあ。やっと、二人きりで歩いていても、緊張
しなくなった程度なんだから、私」
 楽しげに話す要を見ていると、ちょっぴりうらやましくなる反面、私と似た
ところあるなと思える公子。
(カナちゃんも三年かかって、ここまでたどり着いたんだ。私といっしょ。こ
れ以上、私は進めないかもしれないけど)
 応援したい気持ちと、自分のための気持ちが、公子の中で交錯する。
「そうだわ、キミちゃん!」
「は、はい?」
 大声で呼ばれて、変な調子の返事をしてしまった。
「前の高校で、いい人、見つけた?」
「カナちゃんも、ユカと同じ質問してくるのね」
 心の中では動揺した公子だが、何とか取り繕って、受ける。
「そんな人、いないんだって」
 片方の肘をついていた悠香は、空いている手でお手上げのポーズをした。
「えー、ほんとに? だってだって、それなら、キミちゃん、三年間も好きな
人、いないってことになるよ」
 指折り数える要。多分、要自身が秋山のことを好きだと宣言したあのときか
ら数えたのだろう。
「誰もいない? 片想いの人でいいから」
「片想いの人なら……いる」
 これぐらいはいいかと、公子は口を滑らせた。
「え、誰、誰?」
「教えたげない」
「ずるーい! 私は言ったよ、あのとき」
「あれは自分から言い出したんでしょうが」
 悠香が横合いから釘を刺す。しかし、要は記憶にないらしい。
「そうだった? よく覚えていないけれど……とにかく、知りたいよ。ユカち
ゃんもそうでしょ?」
「別に。無理矢理に聞くのは悪いよ」
「知りたくないのお? 信じられないよ。――そっか、ユカちゃんは好きな人、
いるもんね。他人のことにかまってられないとか」
「ばっ」
 立ち上がった悠香。けれども、店内にいた客数名の視線を引きつけたと気づ
いて、すぐに座り直した。
 こほんとせき払いをし、静かに口を開く悠香。
「えっとね、要。私が誰を好きだと思ってるのかな?」
「決まってるじゃない。頼井君でしょ?」
「言うと思ったわ……。だいぶ前に同じことを言われた覚えがあるけれど、そ
のときにも言った通り、私は理想が高いの!」
「けれど、口喧嘩しながらも、未だに離れず、仲いいってことは、それしかな
いよ。ねえ、キミちゃんもそう思うでしょう?」
「それは思う」
 大まじめにうなずく公子。実際のところ、頼井が悠香をどう思っているかは
まるでつかめないけれど、悠香の方が頼井を気にしているのは確実だと、公子
は考えている。
(頼井君は人気あるから、ぐずぐずしていたらどこかへ行っちゃうよ。女の子
みんなに優しいもの。私も何度も励まされて、うれしかった)
 公子の感想も知らず、悠香は、
「腐れ縁が原因で引っ付くなんて、そんなのは嫌だっての。断固、拒否する。
恋をするなら、もっと美しく楽しいものがいい」
 と言うだけ言って、残っていたジュースを、ごくごくと一気に飲み干した。
そんな悠香の言葉や態度を目の当たりにし、とりつく島もないわとばかりに、
公子と要は目を合わせた。
(ひょっとしたら、ユカも結構、苦しんでいる? だったら、ファイト、だよ)

 五月病になることもなく、公子にとって、この一ヶ月はあっという間に終わ
りそうだ。
 こちらの学校に来て初めての定期試験をうまく乗り切ったあと、待望の修学
旅行となった。九州半周である。
 男女別でそれぞれ五ないし六人で一つのグループになり、そのグループ単位
で行動する。もちろんグループはクラス内の者同士に限られる。公子は結局、
富士川や工藤、剣持、畠山の四人といっしょになった。
「ねえ、公子」
 この高校に来てから友達になった相手からは、公子はそのまま名前で呼ばれ
るか、そうでなければ「さくら」と呼ばれることが多い。「朝倉」の「あ」が
取れたらしい。
「なーに、ミナ?」
 ドライヤーを使っていた公子は、大きな声で富士川美奈に聞き返した。それ
からスイッチを切る。
 宿に落ち着いて今、夜の九時ちょうどだった。グループ全員、布団の上。服
装は寝巻き代わりの体操着姿。
「昼間、白木さんともめていたみたいだけど」
 富士川は豊かな黒髪を揺らしながら、言葉を重ねた。茶道部という先入観も
あるだろうが、和服が似合いそうな雰囲気をまとっている。
「あ、あのこと。心配ないよ」
 手にドライヤーを持ったまま、首を振った公子。乾かす途中の髪が、ぱらぱ
らぱらっと広がった。
「本当にそう?」
 心配げな富士川。
 波長が合うのか、公子が一番最初に新しく友達になれたのが、富士川美奈だ
った。その性格も似たところがあるらしく、特に気遣い性なのはかなり似通っ
ている。もっとも、富士川のそれは気配りといった方が適切かもしれないが。
「大丈夫だってば」
「秋山君のことなんでしょう?」
 話題をかぎつけた畠山と剣持が、公子ら二人のそばに寄ってきた。男女の仲
だの三角関係だのの話に目がないのは、女子一般にある程度共通しているもの
だろうけど。
(何か、話さざるを得ない雰囲気……)
 まずいなと感じて、公子は笑みでごまかしながら、ドライヤーのスイッチを
入れた。
 が、すぐに止まってしまう。コードの先を見ると、一人、窓辺で本を読んで
いたはずの工藤が、コンセントからプラグを引っこ抜いていた。
「だーめ。私も聞きたいな」
「ユリちゃんってばー」
 意地悪そうに笑った工藤由里恵に、公子は弱り顔を向けた。
 それから他の三人に目を向ける。富士川以外は、どう善意に受け取っても、
好奇心が上回っているに違いない。公子は内心、ため息をもらした。
「……せめて、髪、乾かしてからにさせてちょうだい。ね?」
「ま、それならいいか。髪は女の命」
 工藤は、今はほどいてある髪を、いつもしているポニーテールの形にまとめ
る手つきをした。そしてプラグを元のように差し込む。
(どうしてこうなるのかなあ)
 心の中で、しきりに首を傾げながら、公子は髪を乾かし終わった。
 みんなの方を見れば、さあ、と待ちかまえるような視線が返ってきた。
「しょうがないな。本当に、大したことじゃないのに」
「いいから、いいから」
「……昼、阿蘇で、自由にお土産を買う時間があったでしょ。あのとき、秋山
君や四組の友達二人といっしょに、色々見ていたの。それが終わって、みんな
のところに戻ろうとしたら、白木さんが」
「何て言ってきた?」
 畠山が言葉を差し挟む。一番、興味深そうにしている聞き手だ。
「『中学のときのお友達を引き込んで、うまくやってるみたいね』って。四組
の友達って言うのは、私と同じ中学なの」
「嫌味ね」
 工藤が、窓の桟に片肘をついたまま、そんな感想をもらした。
「元からあんまり好きじゃないけど、ますます嫌いになりそう、あの子のこと」
「白木さんって、男子には人気あるから」
 剣持の言葉。男子にもてる女子は、同性から嫌われるものだという意味か。
「それで公子は?」
「それでって?」
 聞かれても何のことか分からない。
 対して、尋ねた畠山の方は、さも当然という表情をして、唇を尖らせた。
「決まってるじゃない。言い返したんでしょ? がつんと」
「そ、それは」
 言い淀む公子は、みんなから視線をそらした。
「まさか、何も言い返してないの? そんな嫌味を言われたのに」
「何も言わなかったわけじゃ……」
 公子は話したことを後悔し始めていた。
(本当は言いたくても、『秋山君とは単なる幼なじみ。好きとかどうとかいう
感情は持ってません』ってことにしておかないと)
「じゃあ、何て?」
「『ただの友達よ』って」
「へ? それだけ? 弱気な」
「本当のことだもの」
「それなら、公子。地学部に入ったのはどうしてよ。白木さんに独占されない
ようにするためじゃなかったの?」
 工藤が聞いてきた。公子が地学部に入ったことは、彼女だけでなく、他の三
人も知っているところ。
「それはやっぱりさ、秋山君がいるクラブだと、助けてもらえるから、気が楽
かなと思って」
「それだけなのかな」
 畠山は大きな目で、公子を見据えてきた。別の答を引き出そう、そんな意図
が見え隠れする笑みを浮かべて。
「それはまあ、星座に興味あるけど」
「そういうんじゃなくてぇ。本当に、本当に、ほんとーに、秋山君のこと、何
とも思ってないわけ?」
 がくっと来た畠山だが、気を取り直したように両手で握りこぶしを作った。
「親切にしてくれて、感謝してる」
 あっさり返事した公子。
(ユカ達を前にしてるときよりは、神経を使わなくて助かるな。みんな、昔の
ことも、カナちゃんのことも知らないから)
「……こうなったら、はっきり聞きましょう」
 意を決したようにつぶやくと、工藤は立ち上がって窓際から離れた。そして
公子の真正面に座る。
「公子って、好きな人、いるの?」
 質問が出た瞬間、まただわと思う公子だった。
「答えてもいいけど……みんなもあとで答えてよ。いるかいないかだけでも」
「仕方あるまい」
 どこか自信ありげにうなずきながら、工藤は他の三人に目をやった。
「いいよね? 美奈も答えてね」
「私も?」
 ずっと黙って話を聞くばかりだった富士川は、戸惑ったような顔になった。
珍しく、あわてている感じ。
「当然。さあ、公子」
「――いることはいるよ。片想いだけど」
 いつもの通り、用意していた答を口にする。
「誰よ。名前は言えないの?」
「それは勘弁して。その……私からは遠い人だから」
「前の学校の人なんだ?」
 公子の言葉を、畠山がうまく誤解してくれた。
 本当は、もう手の届かない人だという意味で言ったのだが、公子は誤解の訂
正はしなかった。
「そう、そうなの。転校するとき、泣いちゃって。えへへ」
「ほー。そんな人がいたか」
 皆一様に、疑いもなく感心する。
「写真、持ってないの? 生徒手帳に挟んでるとか」
 剣持の問いかけに、少し焦った。
(持ってるけど、秋山君のだ。見られちゃ、まずい)
 気になって、ハンガーに通して壁のフックに掛けてある自分の制服を、公子
は肩越しにちらりと見た。
「持ってないわよ、今は。肌身離さずなんてしてたら、見られたときに冷やか
されるの、目に見えてるもん」
「そうかもしれないけど、寂しくない?」
 この話題になってから初めて、富士川の方から口を開いた。
「平気。――秋山君がいるから。あははっ」
 最後に冗談めかして付け加える。こういう形でも言っておかないと、全部嘘
になってしまって、落ち着かない。そんな気がしたから。
「さ、これぐらいで許して。みんなの番よ」
 公子が話を振ると、四人は一瞬、互いに顔を見合わせたが、やがて自信あり
げな工藤から始めた。
「それじゃあ、まあ」

 鹿児島は桜島。やたらと灰が積もっていた。
「タクシーの運転手も大変だわ」
 店先から外を見ていた悠香が言った。
「頻繁に火山灰を落とさなきゃいけないのね」
「毎日、降るわけでもないだろ」
 頼井は、早くも土産の物色にかかっていた。小物をたくさん買い込んでいる
ところを見ると、後輩に買って帰る分であろう。
(頼井君、人気あるなあ)
 公子は頼井の顔を横目で見ている内に、昨夜のことを思い出した。
(畠山さんと剣持さんの二人、頼井君のファンだって言ってたな。ユリは中三
のときから付き合っている相手がいるけど、その人がいなかったら、頼井君や
秋山君もいいなって言ってたし。ミナだけ、相手の名前を言わなかったっけ。
私もだけど)
 見ると、頼井の周りにいつの間にか女子数名が集まっていた。畠山と剣持の
姿もある。
 公子は悠香が気になって、その姿を探すと、こちらもいつの間にか、遠くに
離れていた。素知らぬ顔で、土産の品物を手に取って眺めている。
(相変わらずだね)
 くすくす笑っていると、今度は白木麻夜の声が耳に入ってきた。
「秋山君、それ買うの?」
「いや、買わないと思うけど。ただ、灰を商売にしてしまうのは感心するなあ
って」
 秋山は、火山灰を親指ほどの大きさのガラス瓶に詰めた物を手に取っていた。
キーホルダーになっているそれをつまみ上げ、ぶらぶらさせる。
「星の砂とか鳴き砂ならともかく……」
「鹿児島って、少し感覚が違うみたいね。『かるかん』っていうお饅頭があっ
たけど、猫の餌と同じ名前じゃない。おかしいわ」
(お菓子の『かるかん』の方が先だと思うけど。それに、鹿児島の人達の前で、
そんなこと言わなくたっていいのに。冗談にしたって、大して面白くない)
 しきりと秋山に話しかける白木を見て、公子は言ってやりたかった。でも、
もめたくない気が先に立つので、思うだけにしておく。
「白木さん、部へのお土産、買った?」
 思い出したような口振りで、秋山が白木に聞いた。地学部の二年生六人がお
金を少しずつ出し合って、買うことにしている。白木がそのお金を預かってい
るのだ。
「まだよ。私一人で決められないから、六人そろって、考えたらいいんじゃな
いかしら」
「うん。そろそろ旅行、終わっちゃうからね」
 こういう話の流れなら、割って入ってもいいだろう。公子はそう判断して、
秋山に声をかけた。
「地学部のお土産の相談でしょ? 頼井君とか、呼んで来ようか?」
「あ、公子ちゃん。頼むよ。時間があるから、ここで決めてしまおうって」
 秋山に言われて、頼井の他二人の地学部部員を見つけに行く。
 五分足らずでみんなを見つけ、秋山らの姿が見える位置に来たとき、その会
話が公子に聞こえてきた。
「朝倉さんのことだけ、どうして名前で呼ぶの?」
 白木の声。秋山の方は、困惑した表情を浮かべている。赤面しているように
見えるのは、公子の気のせいだろうか。
「ね、どうして?」
「別に……人の自由だろう」
「理由を聞きたいのよ」
 白木が調子を高くした。が、秋山はそれには答えず、戻って来た公子達を見
つけた。
「やっとそろった。部への土産、ここで決めよう」
 近寄っていく途中、公子は白木の視線を痛いほどに感じた。


――つづく





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