AWC かみかみコンビのお題1:手紙   永山


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#512/567 ●短編    *** コメント #508 ***
★タイトル (AZA     )  22/01/22  20:22  (294)
かみかみコンビのお題1:手紙   永山
★内容
※本作は短編シリーズの第一作に当たりますが、AWCでの掲載は都合により二作目の
方が先になりました。本作のみで独立したものとして読めますので、ご笑覧いただけれ
ば幸いです。

             〜         〜

 KK学園高等学校の文芸部は、かつては文学少年、文学少女の集う場であった。しか
し時代は移り変わり、入部希望者が激減。一旦は休部扱いとなっていたところを、一人
の女生徒が復活させた。委員長キャラの彼女は学校側には伝統ある文芸部の復興を訴え
る一方で、部員を集める唯一の切り札として、「ライトノベル大歓迎、BLもOKだよ
〜」を密かに打ち出し、これはと目を付けた生徒に声を掛けることで、部として必要な
人数を集めることに成功した。
 彼女自身、ライトノベルを読むのも書くのも好きでいたのだが、キャラクター故に大
っぴらに語れないことでストレスを溜め込んでいたのだ。発散できる場を確保したこと
で、蓄積されてきたパワーが一気に開花し、文芸部は隆盛を極める。
 その女生徒が卒業すると、徐々に勢いは弱まり、復活十三年目となる今年度は、ゆる
〜い雰囲気の部として細々と、しかし確実に生き残っていた。
「ところで来月のテーマは何だったの?」
 風邪で学校を休み、部活にも当然出られなかった神林《かんばやし》アキラが言っ
た。枕元に立つのは、神酒優人《みきゆうと》。神林とは幼馴染みかつ同じクラスかつ
同じ文芸部とあって、今日の宿題やら連絡事項やらを伝えに、見舞いがてらやって来
た。
「あれ? 送ったんだけど、見てなかったか。『手紙』だよ」
 神酒は携帯端末をちょんちょんと指差しながら答えた。
 彼らの言う「テーマ」とは、文芸部が月一で決めるお題で、それに沿った作品を月末
までに書いて、皆で回し読みし、品評するのが習わしとなっている。
 そのテーマを決めるのは持ち回り制で、今月は副部長の当番だった。
「『手紙』かあ。今の時代、書きにくいんじゃない?」
「真面目に捉えると、多分そうだね。メールやLINEが当たり前のご時世に、手紙を
出す場面は限られてくる」
 神酒は鞄の蓋を閉じてから、「でも」と付け加えた。
「副部長が言うには、LINEはだめだがメールはOKにするってさ。だから厳密な意
味での手紙じゃなくてもいい」
「そっかー。でも、私は縛りがきついほど燃える質だから、厳密な方で行こうかな」
「……」
「どうかしたの、急に黙り込んで?」
「ちょっとエロい想像をしてみようと思ったけど、無理だった」
「な、何のこと?」
「“『縛りがきついほど燃える』神林”……うーん、どう思い描こうとしてもエロくな
らない。お子様向け特撮番組で人質に取られて、火責めに合っているおっちょこちょい
な女の子の姿になってしまう」
「あほか」
 布団の中で足をばたつかせ蹴る真似をする神林。その表情は怒っていると言うより
も、呆れている。が、不意に真顔に戻った。
「エロいで思い出した。昔、ネタだけ考えて作品にしてないのがあるんだ。あれも一種
の手紙だから、行けるかも」
「興味あるな。聞かせて」
 文芸部員同士のおしゃべりで、アイディアは割とオープンな話題である。盗作しても
すぐにばれるってのが大きな理由だが、それよりも何よりも、複数名でブレーンストー
ミングする楽しさに部員の誰もがはまっていた。
「『瓶詰の地獄』って知ってる?」
「そりゃもう。夢野久作の短編。傑作と言っていいよ」
「あれのパロディになるのかな。というか、パロディになるから書きにくいなあと思っ
て躊躇して、お蔵入りさせたんだけど。タイトルは一応、『瓶詰の極楽』か『瓶詰の快
楽』にしたいなと思ってる」
「その仮題を聞いただけで、ぼんやりと内容が想像できた気がする」
「うん、多分それ当たっている。でもまあ聞きなさい」
「分かった。僕から求めたんだしね」
「『瓶詰の地獄』で、島に流れ着いた幼い兄妹が持っていた物、いくつかあったでし
ょ。覚えてる?」
「え? えっと……水の入った瓶が三本に、鉛筆とノートと……ナイフ、虫眼鏡……だ
っけ」
「あと一つ。テーマに結び付いている大事なアイテムが抜けてる」
「テーマって、『手紙』のことじゃないよね。『瓶詰の地獄』のテーマ……ああ、聖書
も持ってたね」
「そう。私が考えてたのは、他の持ち物は同じにして、聖書だけ別の物に置き換える
の」
「快楽なら――エロ本?」
「エロから離れろ」
 布団の中でキックの音がした。神酒は距離を取ってから、反論する。
「いや、でも、そっち方面に進むんじゃないの、物語は」
「うーん、それはまあ認める。描写は別に濃厚にエロくしてもいいし、さらっと流して
もいいかな。――身体を動かしていたら元気になってきたわ」
 いきなり起き上がって、カーディガンを羽織ると、神林は勉強机に向かった。その抽
斗、一番上のを開けて、中からメモ書きが山と詰まった缶の箱を取り出す。
「おいおい、大丈夫なのかい」
「ぶり返したら明日も休む。――あった。これ、思い尽いたときのメモ書き」
 神林はよれて折り目の付いた紙切れを、神酒の前に突き出した。
「どれどれ……“・『瓶詰の地獄』のパロディで『瓶詰の極楽』。十一歳の兄と七歳の
妹が船の遭難により南の離れ小島に流れ着く。持ち物は鉛筆、ノート、ナイフ、水の入
った一升瓶三本、虫眼鏡、そしてライトノベルが一冊”……なるほど、理解した」
 少し吹き出してしまった。聖書の代わりにライトノベルと来たか。
「で、このライトノベルの内容があれなんだろ? お兄ちゃん大好き妹の出て来るタイ
プ」
「そうそう。もしそんなライトノベルを携えていたのなら、二人はハッピーな結末を迎
えたはず」
「うーむ、それはどうかなあ」
 苦笑いを浮かべ、言葉を濁す。メモを返してから、こほんと咳払いをした。
「一つアイディアを聞いたからには、こちらも礼儀として一つ披露するかな」
「待ってました」
「といっても、今日聞いたばかりで、君みたいにテーマに合うストックはないから、ま
だ全然まとまってないんだけどね。考えながら言ってみる」
「どうぞごゆっくり」
 ベッドへ戻り、布団に潜り込む神林。なまめかしさはほとんどゼロだが、同級生女子
の普段とは違う姿を目の当たりにするというのは、ちょっと感慨深い。
「テーマを聞いて真っ先に思い付いたのは、トイレットペーパーなんだ」
「うん? 何でまた。文字が印刷されているのがあるけど、あれは手紙じゃないでしょ
う」
「中国語で『手紙』と書いたら、トイレットペーパーのことなんだってさ」
「あ、何か聞いたことあるような」
「そこから発展させたいんだけど、なかなか……。ただ、ノックスの十戒と絡めてみよ
うかなと思ってる」
「ノックスの十戒って、推理小説を書くときの決め事だっけ。凄く昔の」
「ああ。それも一作家が言ってるだけと言えばそれまでなんだけど。ロナルド・ノック
スという作家の記した十の戒めの中に、『中国人を登場させてはならない』という意味
の条項があるんだ」
「へえー。どうして?」
「はっきり書かれていない。“ノックスの十戒が記された当時、中国人は怪しげな術を
使うと信じられていて、論理的な推理小説にはそぐわないと思われていた”とか、“中
国人は皆似たような顔立ちで、西洋人が見ても区別が付かず、一人二役トリックが簡単
に成立してしまうから”といった解釈があるよ。で、僕も新たな解釈ができないかなと
軽い野望を抱いたんだが、どうもうまく行かない」
「とにかく聞かせなさいよ」
 うずうずを体現したかのように、上体を起こし、全身を揺する神林。
 クッションにあぐらを掻いた姿勢の神酒は、片手で耳をいじりながら答えた。
「えーっと、理屈だけを言うよ。“中国人は『手紙』を見たらトイレに流してしまう。
そんな登場人物がいたら、世界最初のミステリと言われている『盗まれた手紙』が成立
しなくなる。だからミステリに中国人を登場させてはならない”」
「……うーん、ナンセンスギャグとしてやっと成立するかなってところ?」
「手厳しいなあ」
「だって、無理があるんだもの。君が言った『盗まれた手紙』って、ポーの作品よね。
あれならさすがに読んだことあるから分かるけど、文字として漢字の『手紙』が出て来
る訳じゃないんだし」
「あー、分かった分かりました。もう、この案は撤回する」
「いいの? 他にあるの?」
「なくはない。たとえば……大隈重信《おおくましげのぶ》って知ってる?」
「馬鹿にしないでよ、常識でしょ! ――詳しく説明はできないけど」
「はは。名前さえ知ってくれてればいいよ。大隈重信は十代半ば以降、字を書かずに通
したらしいんだ」
「ふぇ? 何でまた。というか、政治家をやったり大学を創ったりするような人が、字
を書かずに済むもの? 信じられない」
「口述筆記で済ませていたらしいね」
「へー!」
「唯一、憲法発布の際に大臣として自筆署名しなければならない場面があって、仕方な
く名前を書いたんだって。それしか残っていないそうだよ。僕が思い付いたのは、著名
人の手紙を偽造して売りつける輩の話で、うまくやっていた犯人が、お得意さんの希望
に応じて大隈重信の手紙を偽造したことによりばれる、というストーリー」
「悪くないじゃない。書いてみたら」
「でもよく考えると変なんだ。著名人の手紙を偽造することを生業とする犯罪者が、大
隈重信が字を書き残さなかったというエピソードを知らないなんて、あり得ないと思わ
ない?」
「あ、そうか。不自然よね。よし、没決定」
「だから厳しいって」
「使えない物を使えるって言う方が優しくないでしょ」
「そりゃまそうだけど。病人の方が元気になってるじゃん」
「お見舞いに来た甲斐があったというものじゃない? それで、他にはないの?」
「公平の原則に従うなら、次はそっちの番だよ」
「じゃあ、ストックじゃなく、今から絞り出してみるわ」
 腕組みをして、うんうん唸る神林。傍から見ていて実に分かり易い。その内ぶつぶつ
言い出したので、神酒が耳を澄ませていると「手紙は忘レター頃に届く」「郵便が指定
通りに届かないと気がメイル」なんて聞こえてきた。
「駄洒落!?」
「盗み聞きはよくないよっ」
「そっちが勝手に言ってるんですが」
「黒やぎさんと白やぎさんの歌って変じゃない?」
「いきなりだな〜。それって『やぎさんゆうびん』の歌のことだよね。読まずに食べた
ってやつ」
「そうそれ。読まずに食べたのに誰からの手紙なのか分かるのは、まあ外に書いてあっ
たとしても、内容を問い合わせるのに、何で紙の手紙を送るのかしら。相手も自分と同
じやぎだと分かってるのなら、手紙を食べられてしまうことくらい想像が付くでしょう
に。そもそも、やぎは自分で書いた手紙を食べてしまわないのかってのも不思議。空腹
なら、送られてきた手紙じゃなく、自分の家にある封筒や便箋を食べれば済むのに、何
で――」
「ストップストップ。言いたいことがたくさんあるのは分かるよ、謎多き歌詞だもの。
ただ、残念というか何というか、すでにそのことは多くの人によって指摘されているの
だ」
「え?」
「ネットで検索してみれば、結構たくさん出て来るよ。今君が言ったことも多分、指摘
されている。その上で、どうにかして合理的な解釈を与えようという試みもされてい
る。君が書こうとしたのは、この解釈を与えることじゃないかな」
「当たり。思うんだけど、白やぎが黒やぎに送った手紙の内容は、貸していた物を返し
てと催促するものだった。黒やぎは読まなくても察しが付くし、返したくても返せない
状況だったから、読まずに食べる。でも届かなかったよ〜と知らんぷりする訳にはいか
ない。何故なら黒やぎは郵便配達のやぎに恋をしていたから」
「は?」
 予想外の登場|人物《やぎ》に、神酒の目は点になった。
「ど、どうしてそういう論理展開になるのかな」
「だって、白やぎは黒やぎから何の反応もなかったら、ある程度は繰り返し手紙を送る
でしょ。その都度食べて無視していたら、白やぎは郵便局に問い合わせるわ。そして担
当配達員のやぎが郵便物を捨てている、もしくは食べているのではないかと疑いの眼を
向けられる。黒やぎにとってそれは全くもって本意ではない。そんな迷惑を掛けること
のないように、さっきの手紙の内容は何だったんでしょうと手紙を出す」
「なるほどね。出さなくてもいい、むしろ出したくない返信を黒やぎが出すのは、そう
いう理由付けか。だったら何で白やぎはその手紙を食べちゃうんだろ?」
「待ちに待った返事だったから、喜びのあまりつい。あるいは、本当は中身を読んだん
だけど、その内容に激怒して、『こいつふざけやがって。こうなったこっちも手紙を食
ってやる。そしてそっくりそのままの文章で聞き返してやる!』となったのかも」
「ふむふむ。ちょっと面白いけど、紙の手紙で出す理由がない。また食べてくださいっ
て言ってるみたいなもんじゃないかな」
「それはもう意地になっている感じ?」
「弱いな。僕だったら、いつでも事故死に見せ掛けて殺せるようにってことにするね」
「事故死? 何がどうなってそうなるの」
「白やぎは黒やぎに対して堪忍袋の緒が切れたとき、紙に毒を染み込ませればいいんだ
よ。それまでに数回やり取りがあって、食べても大丈夫と分かっている黒やぎはすっか
り油断して、毒の手紙でも食べてしまう」
「白やぎも結構黒いねー。だけど、どこが事故死なんだか」
「そうかい? 手紙を食べるなんて、どう見ても誤飲誤食でしょ。たまたま身体に悪い
成分が入っていた、不幸な事故だ」
「あははは、確かに。紙の手紙を出し続けることで、黒やぎの命運を握り続けられる。
こうなると、黒やぎが紙の手紙を出し続けた理由もほしい」
「さっき君が言ったように、無視する訳には行かないから、返事は出さなきゃならな
い。紙に拘ったのは……案外、黒やぎも出した手紙が白やぎに食べられていることを把
握していたのかも。その上で、黒やぎの方も相手をいつでも毒殺できるように備えてい
るつもりだった、とか」
「お互いに読んでいるのに読んでないふりをする。そうすることでお互いにいつでも殺
せる状態を保つ……そこまで行くと、お互いに殺そうと思えば殺せるんだぞと考えてい
ることにも気付いちゃうんじゃあないのかしら」
「そこに気付いたら、成り立たなくなるね。手紙が来ても食べずに捨てる」
「それもそっか。うーん、結構いい線行けそうだったのに」
「没にする判断は、ちょっと早いんじゃないか」
「うん。でもねえ、ネットで検索して似たようなネタが山ほど出て来ると聞いたら、情
熱が薄れた。よっぽど優れた解釈を用意できない限り、書いてもしょうがないかな。平
凡なネタだと、誰かがどこかで先に発表していそう」
「じゃあ、保留ってところか。他にもアイディアはあるのかい?」
「あるよ。全然まとまってないけど、その断片を示すとしたら……」
 右手人差し指をぴんと伸ばし、顎先に当てた神林。上目遣いになって天井を見やりな
がら、しばし沈思黙考。
 やがて、顎から指を離して視線を戻し、閃いた!って風に口角を上げた。
「私は敵が嫌いじゃない」
「……ん?」
 何のことやら。断片に過ぎる。
 神酒のきょとんかつぽかんとした表情がおかしかったのだろう、神林は唇の両端をさ
らに上げた。
「『私は敵が嫌いじゃない。でもこれは非鉄』、これが手紙だとしたら、別の意味にな
るのだよ」
 神林はふふんと鼻息で笑った。
「意味がさっぱり掴めない」
「帰り道にでも考えるといいよ」
「え、今この場で教えてくれないのか」
 思わず腰を浮かした。彼の前で神林は「何せ、非鉄、だからね」と言った。
「分からん……何かヒントないのかな」
「ヒントは、さっき聞かれた駄洒落路線。もう一つ大サービスすると、平仮名、だね」
「ちょっと待ってくれ。忘れない内に書き留める」
 生徒手帳を胸ポケットから引っこ抜くと、神酒は白紙のページを開いて鉛筆で書き記
した。『わたしはてきがきらいじゃない。でもこれはひてつ(駄洒落)』と。
 そろそろおいとまする時間になったこともあり、神酒は立ち上がった。
「結構、盛り上がったけれども、ぶり返さないように注意しろよな」
「分かってる。実を言うと顔がちょっぴり熱いよ、今」
「ほら見ろ。あー、うつされたらかなわないし、そろそろ帰る。お大事に」
 神酒は少しだけ開け放してあったドアを押して、廊下に出た。
「散々いといてよく言う」
 神林は苦笑いを浮かべ、それから神酒を呼び止めた。
「神酒! ありがとね。ヒントとしてもう一つだけ。テーマを忘れんなよ!」
「……分かった。声、かすれ気味になってるぞ」

 神林宅からの帰り道、神酒の足取りは普段よりも遅かった。歩きなのだが、ついつ
い、神林からの宿題を考えてしまう。
(『わたしはてきがきらいじゃない。でもこれはひてつ』で、テーマが手紙。これのど
こが手紙なんだ? 手紙に書くような文章でもなさそうだし。それに駄洒落……うー
ん)
 神酒は小説の中ではミステリを好むので、考え出すとなかなかやめられないのだ。赤
信号で立ち止まり、青に変わっても気付かないでいるほど。
(この中でも最も不自然な言葉を選ぶとすれば、非鉄だよなあ。非鉄金属って言うけれ
ども、関係ないのかな。『ひてつ』と手紙……結び付かない)
 青信号を視界の端で捉えて、ようやく渡り出す。もう点滅を始めていたが小走りで間
に合った。
 軽く乱れた呼吸を整えるために、渡った先でも立ち止まった。そのとき、小さな子供
用の横断旗が目に留まる。信号の柱に箱が設置され、中に黄色い旗が何本かあった。
「『おうだんほどうはさゆうをよくみててをあげてわたりましょう』」
 箱の側面に手書きしてある平仮名を何気なく読んだ。
(句読点がないから『よくみてて』とも読める。みてて……てがみ。もしかすると『手
紙』も平仮名で考えるべき? てがみ、てがみ)
 頭の中に平仮名三文字を思い浮かべ、心の呟きを繰り返す内に、ぴんと来た。
(あ。テがミ、か! 『て』の文字を『み』に置き換えろってことかもしれない)
 神酒は早速、元の文章を脳内スクリーンに書き、『て』を『み』に置換した。そして
一瞬息を飲み、それから目の下をやや赤くしながら独りごちる。
「――まったく。あいつめ」

 『わたしはてきがきらいじゃない。でもこれはひてつ』

            ↓

 『わたしはみきがきらいじゃない。でもこれはひみつ』

            ↓

   『私は神酒が嫌いじゃない。でもこれは秘密』


 おわり


  ・

  ・

  ・

<極めて短い蛇足>

 にんまりしてしまった神酒だったけれども、ふと我に返った。
(……うん? 神酒って僕の名前じゃなく、お酒ってことか?)

 未成年の飲酒はやめましょう。




元文書 #508 かみかみコンビのお題2:兎美味し   永山
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