連載 #7478の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
Doru もののけ姫のつづきです。 Zin こんどはちょっと別の角度から……。 Doru と、言うと? Doru この前は自然と人間のいとなみについてでしたね。 Zin 今日はもののけ姫を通して見える社会の平等というものについてお話を してみようかなと思ってる。 Doru ふむふむ Zin この作品のなかで印象に残ったもののひとつにエボシ御前がアシタカの 前で新型の石火矢を試してみるシーンがあった。 doru アシタカが彼女の秘密の庭に招かれたとこね。 Zin そこでハンセン病患者らしき工人たちが石火矢を製作していた。 Doru エボシ御前はもっと軽いものをと彼らに要求していた。 Zin 実際の石火矢という武器は中国ではずいぶん昔から使われていて、いわ ゆる近代的な銃とは違うものなんだけどね。性能は悪いししばしば爆発してしまうよ うなしろものだったらしい。でももののけ姫のなかでは命中性能のいい完全に近代的 な武器としてあつかわれていた。 Doru ポルトガルから火縄銃が伝来するのは1543年だからもう少し時代は後ね。 Zin 戦国時代に使われていた火縄銃にしても近代的な銃とは言えない。近代 銃である条件は三つあるとぼくは思う。ひとつは命中精度。ひとつは女性でもあつか えるほど軽いこと。 Doru そう言えばもののけの中でもエボシ御前はさかんに『女でも使えるように軽 く』って言っていたわね。 Zin そう。それは大きなポイントだね。あのシーンで宮崎駿はあきらかにフ ランス革命を意識していたと思うんだ。 Doru おおっと。話が飛躍するわね。 Zin そうでもないさ。18世紀にフランス革命が可能になったのは近代的な銃 が普及したからなんだよ。 Doru マリー・アントワネットがお菓子を食べなさいと言ったので民衆が怒ったか らじゃなかったの? Zin ま、きっかけはそんなとこかも知れないけどね。でも歴史のあの時点に 革命が可能になったのはまさに銃のおかげなんだ。Doruはドラクロアの『民衆をひき いる自由の女神』を知っているでしょ? Doru 有名な絵よね。 Zin 実際はあの絵に描かれたのは後の七月革命なんだけど近代市民革命とし ての本質は同じだ。あの絵のなかで三色旗をかかげた自由の女神の傍らに描かれてい た人物を覚えている? Doru うーんと、なぜかフォーマルスーツできめたおじさん。 Zin そうそう、あの人は結婚式場でいきなり銃をわたされて……じゃなくっ て! その反対側に両手に拳銃をもった少年が描かれていたでしょ? Doru うん。いたかも Zin つまり銃は女子供でもあつかえるということなんだ。命中精度が高くて、 特別に体力のない者でも扱えるほど軽くて、そして三つめの条件……誰でも簡単に入 手できるほど大量に安価に製造できる……という条件をそなえていれば、訓練されて いないごく普通の市民でも国王の軍隊に対して十分に戦えるわけさ。 Doru なるほど。 Zin 剣や弓矢ではそうはいかない。それらの武器は職人が手作りするわけだ から高価だし有効に使いこなすためには何年も何年も修練をつんで専門の技術を身に つけなければならないからね。でも銃ならずぶの素人でもそうした熟練した軍人とも 互角に戦えるんだ。銃口を向けて引き金を引きさえすればいいんだから人を殺すなん て簡単なことさ。 Doru だからエボシ御前の要求をあのタタラ場の工人たちは『怖や、怖や』と言っ たのね。 Zin 言い換えれば銃は人間を平等にする。女子供でも銃を持てば男に守って もらうことなく自分の身を自分でまもれる。開拓時代ローラのパパが買い出しに行っ ている間はママが炉端に銃を置いて熊やインディアンから娘たちを守った。両親が留 守だったらローラ・インガルス自身がそうしなければならなかった。熊やインディア ンのかわりにイギリス軍が攻めてきたから植民者たちは老若男女を問わずみんな銃を とった。気がついたらいつのまにか独立してしまっていた。アメリカ合衆国憲法が銃 の所有を市民の権利としているのはまさにそのためなんだ。 Doru でも今は銃の破棄を叫んでいる Zin 理想は現実のしっぺがえしを受けるものだね。 Doru だったら核もそうかしら? Zin 核は銃の延長にあるかも知れないね。 Doru 国同士の平等か Zin 弱い国でも核を持てば強国と対等に交渉できるからね。貧しい国でも核 武装すれば米国と対等になれる Doru 日本が核を持とうとしないのはなぜ? Zin アメリカの核の傘に入っているから必要ないもの。 Doru アメリカの核に守ってもらいながら核に反対していても説得力ないね Zin 核軍縮や核実験の規制ってよいことのようだけど核保有国に一方的に有 利な主張でもあるよ。保有国は核を独占したいからね Doru それはいえるな。自分の国だけ実験しまくって、他の国が実験を反対する のはおかしいもの。 Zin みんなが核を持つようになったらフランス革命みたいに王様アメリカの 優位が崩れてしまう。 Doru 秀吉の刀狩りみたいなものね。あれも農民が武士にはむかえないようにした のじゃないの? Zin どちらかと言えば家康の鎖国かな。江戸時代に銃が普及したら武士の優 位がおびやかされるものね Zin 刀の時代には農民は武士には勝てないでしょ? 島原の乱は結局鎮圧さ れてしまった。でも近代的な銃があったら話はべつだったろう。 Doru フランス革命がおこってしまう Zin 訓練されていない一般市民が訓練された国王の軍隊をうちやぶった。あ れはパリに銃砲店がたくさんあったからなんだ。 Doru 産業革命で性能がよく安い銃がたくさん出回っていたのね。 Zin 近代市民社会は銃なしにはありえなかった。昨今の日本の銃社会への批 判はそこのあたりを捉え損ねているんじゃないかとぼくは思うな。結局、自分たちの 手で民主主義を勝ち取った経験のない国民性ということかも知れないけど。 Doru でもいっぽうで銃社会はひどいことになっているけどね。いまではアメリカ はバトルロワイヤルになっている。 Zin うーん。確かに誰でも銃を持つ権利を認めるとなると自分の行動に責任 をとれない人間まで銃を手にする機会を得ることになるからね。子供が悪戯して事故 を起こすのは管理の不備としても、人間的に未成熟だったり病的だったりする者が銃 を簡単に入手できるというのはあきらかに問題だ。 Doru 銃を手にすることができるのはきちんとそれを使える人間じゃないとこまる。 Zin 題名は忘れちゃったけど、こんなアメリカ映画の一シーンを思い出すな。 黒人の少年がハーレムに迷いこんできた主人公に銃を向けて言うんだ。『おれは黒人 だ。貧しいし、教育もない。だから世間の誰もおれの言うことをまともに聞いちゃく れない。でも銃があれば話はべつだ……』 Doru なんの力もない者はせめて銃を持って強くなったつもりになりたいのね。でも、 それって哀しいね。 Zin 近代的な人間観の限界なのかも知れないなあ。表現の自由や信仰の自由なん かとも共通する問題だよね。それらを乱用したり悪用する人間がかならず出てくる。 結局人間っていうのは真の自由を持つ資格がないのかも知れない。 Doru 日本だってだんだん病めるアメリカみたいになっているものね。 Zin 誰かが学校で銃を乱射するのも時間の問題という気がするなあ。 Zin 渋谷あたりで乱射するとかね Doru いつ牛刀が銃になってもおかしくない。 Zin たぶん十年以内におこるのでは? Doru それでも平等はいいことだと思う? Zin それが近代社会を成立させた人々の夢だものね。手放してはいけないと 思う。でも難しい問題だなあ。 Doru 銃は平等をもってきた。 Zin そのとおり Doru しかし同時に人間自身への信頼を破壊した Zin 近代科学技術は自然だけでなく人間そのものを損ねているのかも知れな いな。 Doru 人間は猿のままの方が幸せだったということ? Zin いまさら猿には戻れないでしょう。猿どころか江戸時代にも戻れない。 Zin だってちょっと不況になっただけでこれだけ凶悪な事件が増えたのだか らね。 Doru 環境をまったく破壊しないように経済を鈍化させたら社会は壊れてしまう Zin いまや日本は全部がたたら場になっている。 Doru シシ神の森はどこにも残っていない。 Zin そしてその動きは世界中をまきこんでいる。プナン族の森が跡形もなく 消滅するのもじきだろう。 Doru そして最後はどうなる? Zin そして誰もいなくなった、かな? Doru うーん。ちょっと寂しいね
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