連載 #7475の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「本当にえらいことをしてくれたな・・・」 警官はため息混じりにそうつぶやき、押し黙ってしまった。 その時の彼にはそれ以外の言葉は見つからなかったようだ。 だが、その言葉は彼のみならず、その知らせを聞いたときは だれしもがそう思ったことだろう。 相手の男も事の重大さを分かっているのかいないのか、 その目は焦点が定まらずただ宙を見つめるのみであった。 「コン!コン!」 おもむろに部屋をノックする音が聞こえた。 すると、ドアが開き若い警官が1人入ってきた。 その若い警官は 「護送車の用意ができました」 と言った。 中にいた警官はうんとうなずき、 「じゃあ、あとは頼んだぞ」 と言うと、それを聞いた若い警官は茫然としているその男を 部屋の外に促そうとした・・・。 と、若い警官に向かって 「外はどうなってる?」 と聞いた。 「通りは大勢のマスコミと野次馬で一杯になっています」 と言った。 男と若い警官が出ていくと、部屋に一人残ったその警官はやれ やれという感じで頭を左右に振ると冗談ともつかない口調で 一言こう、つぶやいた。 「全く戦争にでもならなきゃいいがな・・・」 「学校を卒業したらどうするんだい?」 と母親の友子がコーヒーを入れながら聞いた。 パンをかじりながら朝のニュースを見ていた和志は えっ?と言うかすかに驚いた表情をみせた。 何も突然話しかけられたので驚いたのではなく彼に とってはその言葉が非常に答えにくいものであった からに他ならない。 他に言葉が見つからなかったのか、 「う、うん。分からない。まだ迷ってるんだよ。」 と言った。彼はこれ以上突っ込まれてはまずいとパンを無理 矢理詰め込んで席を立った。 そのまま慌ただしく玄関に行くと、 「行って来まーす!!」 と大声で叫んで、出ていった。 一人とり残された母親は何やら少し考え込んでいたようだが、 おもむろに台所の引き出しから通帳を取り出すと 「予備校の学費って高いのよねえ・・・」 と呟いた。 その浪人生、いや高校生のこの少年は本名を田辺和志と言う。 彼こそがこの話の主人公である。 都立に通う高校三年生で、学校のレベルとしては・・・。 まあ分かり易い例をあげると、 以前、近所の主婦から高校名について聞かれたので、母の友子 が高校名を言ったところ、 「ああそうなの・・・それでね・・・」 と、あっさり話題を変えられてしまったようなレベルである。 いつもはおっとりしているはずの母がその日はやけに機嫌が悪か ったので驚いていた和志少年だが、まさかその原因が自分に あるとはよもや思わなかったようである。 その学校での彼の成績は中位で、正確に言うと中の下で、さらに 詳しく言うと・・・ これ以上言うのはかれにとっては酷なので伏せておこう。 容姿としては背丈が175センチメートルで体は見た目よりもがっし りしている。顔は異性にもてるようなもてないような・・・ そんな顔である。 まあ優しそうではある。 ある日、母親に 「健康が一番よね」 と言われたのだがその真意は分からない。 皆さんはこんなんが主人公か?と思われるだろうが彼にはれっきと した特技がある。 まずは英語が堪能だということだ。これについては間違いなく彼の 通っている高校のみならず、他の高校生よりもはるかに優れている。 彼には賢一と言う父親がいた。 ”いた”というのはその父親が去年、突然病に倒れ無くなったから に他ならない。 実は、その父親がかなり英語が達者だったのである。 「これからの世の中、英語位出来んとな」 と言って父からの直接指導を受け、さらに英会話学校にも土日以外毎日 通わされたのである。 その甲斐あってか英語は、五科目でも英語は、そう英語だけは・・・ まあ良かった、と言うことである。 さらに彼にはもう一つの特技がある。 サッカーが得意だということだ。 彼の学校は県大会の予選でも毎回ベスト8位には入る強豪校の一つで彼 はその高校でのエースストライカーである。 そう、実は彼には大きな夢がある。 高校を卒業したら憧れのイングランドでプレーをしてみたいというのだ。 正確に言うと彼が憧れているのはイングランドという国にではなくゲーリー ・リネカーというプレーヤー個人にである。 今の彼の練習に対する取り組み方からプレースタイルに至るまでの殆ど全て がそのリネカー氏による影響なのである。 彼がイングランドに行きたいと言うのはリネカーに会いたいからとかサイン が欲しいからとかそういうミーハーな気持ちからではなく、まさに現代スポ ーツが全体として勝てば官軍と言うような風潮がある中、全くその流れに逆 行するかようにクリーンなプレーを続ける彼のその姿に憧れていたのである。 そして、そんなリネカーを育てたイングランドという国を肌で感じてみたか ったのである。 和志少年は小学生になったばかりの頃、サッカー好きの父に連れて行かれスタ ジアムに行ったことがある。 実は彼はそれまでどちらかというと野球やバスケの方が好きだった。 その日の試合前にスタジアムについた彼は父とはぐれてしまった。 彼は不安で今にも泣き出しそうになっていたのだが突然目の前に自分の 背丈の倍はあろうかという外国人が近づいてきて和志に向かってこう言った。 「ドウシマシタカ?」 その外国人は日本語が余り分からないようだったが、和志の様子を見て、どう やら迷子だと察してくれたようである。 その外国人はしゃがみこんでから笑顔で、 「シンパイナイ」 と言った。 その外国人は一緒に父を探してくれたのだが父が見つかったのはそれから5分 足らずであった。 父はその外国人に何度もお礼を言っていたが、別れ間際その外国人は和志に向か ってこう言った。 「サッカースキデスカ?」 その後、父から聞いてその外国人がゲーリー・リネカーだということを知った。
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