連載 #7471の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
イングリット ヘブラー ピアノリサイタル 愛知県豊田市に3年ほど前に開館した〈参合館コンサートホール〉では、毎 日のようにクラシック演奏会が行われていて、その日程表を、ボランティアの 人たちが点訳してくれる。KS君は、豊田市の治療院に勤めている関係で、先 日そのプログラムを私に見せながら、「どれか気に入った演奏会があったら、 一緒に聴きに行こう」と誘ってくれた。それで、向こう半年間の予定表の中か ら、本日開催の〈イングリット ヘブラー リサイタル〉を選び、4人(夫婦2 組)分の切符を購入してもらったものである。 開場1時半・開演2時というので、車で行くか電車で行くか迷ったあげく、 妻が車を運転して行くことにする……。 11時前にわが家を出発し、K宅近くまで来て、時間に余裕があったので、 白山神社に参拝してから行くことにした。急な坂道を登り切る手前で、駐車場 待ちの車が停車していたため、妻もその後ろに付けて停まったまでは良かった が、いったん止めたエンジンを廻そうとしたら、何故か車が前へ進まず、坂道 を後ろへ下がり始めたので驚いた。懸命にクラッチやアクセルを踏んでも後ず さりするばかりで、ついに坂道の途中の民家の塀に接触して、かろうじて停止 した。わが家の車〈カロゴン〉は、新車を3年前に購入した物で、故障するに はまだ早い。けれども、クラッチがすり減って滑るようになったのか、ギアが うまくかからなくなったのかなどと、色々案じてみる。 携帯電話でJAFを呼んだが、今日は日曜日のせいかなかなか来ず、約1時 間待たされてやっと到着した。JAFの若いあんちゃんが、妻に替わって車を 簡単に動かし、事もなく解決したが、坂を上れなかった理由は、そのお兄さん の言に依ると、「単に運転の仕方が悪かっただけで、車の故障は全然ありませ ん」とのことだった。まあ、不幸中の幸いとしておこう。 K夫妻を乗せて、国道153号線を快適に走り、豊田駅付近で少し迷ったが、 無事参合館の地下駐車場に車を納めた。この建物はまだ新しく、手触りや足触 り、ほのかに漂う木の香りも清潔な感じがする。 十階のコンサートホールに入り、席に就いたのは1時20分頃。今日の座席 は3列の6〜9番、A席4000円だ。 モーツァルト挽きとして名高いイングリット ヘブラーを、私は初期の頃か ら高く評価し、生のコンサートにも2回ほど行ったことがある。けれども、レ コードで聴くのと実際の演奏とではまるで音色が違っていて、いささか期待外 れの思いがあり、レコードで聴くヘブラーのピアノは鋭く固く切れの良い音な のに、本物の演奏ではむしろ篭もったような音で「ポコポコ ポコポコ」とい う感じの音色だった。会場の音響効果や使用する楽器(ピアノ)によっても異 なるし、柔らかな音の方が女性らしくて良いという解釈もあるだろうが、私は レコードの方が好きだ。 「はたして今日の演奏はどうだろう?」 心中密かにそういう期待もあった。 演奏開始……。場内はしーんと静まり返った。このホールは音響設備が抜群 で、名古屋の大ホールと異なり残響が強くない。舞台の演奏が鮮明に聞こえる 一方、観客席の僅かな物音も手に取るように分かり、それが良いのか悪いのか、 正に「針1本落としても聞こえるほどの静けさ」である。近年聴衆のマナーが 乱れ、いささかそれに慣らされてきた私も、この参合館ホールでは認識を新た にせねばなるまい。周囲の人の息づかいや衣服のすれる音までよく響くから、 お互いよほど注意しなければならず、咳払いは勿論のこと、プログラムをめく る音もじゃまになるし、まして、しつけの悪い子どもを入場させるなど絶対に 許せない。 今日の演奏は、昔聴いた実演とレコード録音の中間くらいと言えようか。硬 質の音ではないが、柔らかすぎて不鮮明ということもない。テンポを緩急変化 させているが、大げさすぎはしない。 選曲が割合地味で、特に第1部・第2部の初めに演奏した『幻想曲』は、短 調の暗い旋律がモーツァルトらしくなく、普段レコードだとあまり真剣に聴か ない私なのに、今夜は随分引き込まれて聴いた。ということは、生のコンサー トでこそ、この音楽の真価が発揮されるのである。 ヘブラーの年齢は70代半ばくらいだろうか? 妻の話では、大層太って体 格の良い人だそうだ。精神性の深さをたっぷり聴かせてくれて、勿論テクニッ クも磐石であった。 1 幻想曲 ニ短調 K.397 2 ロンド ニ長調 K.485 3 ソナタ ニ長調 K.576 4 「ああ、お母さん聴いて」による12の変奏曲 ハ長調(キラキラ星 変奏曲) K.265 幕間休憩(20分) 5 幻想曲 ハ短調 K.475) 6 ソナタ ハ短調 K.457 入り口で配られたチラシの中に、明日12日のコンサートの案内があり、プ ログラムが私好みだったので、帰りに八階事務所に立ち寄って、入場券を4枚 (4人分)購入した。 参合館を出て、〈ゴヤ〉というレストランに入った。S君が推賞するだけあ って、なかなか良い店だ。食べ物や飲み物の種類や品数が豊富で、上品な味と 静かな雰囲気、ことに、やけどするほど熱々の料理が運ばれてきて、これは何 処の店にも負けないのではないだろうか。 参合館・コンサートホール・ゴヤ、いずれも私の趣味にピッタリで、もしか すると、豊田の街そのものが体質に合っているらしく、それはすなわち、三河 人が三河の風土や人情に対し、目に見えないある種の共感を覚えるのかもしれ ない。 [2001年(平成13年)2月11日 竹木 貝石]
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