連載 #7067の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
作者註:この物語は、一九六八年の米映画「猿の惑星」の「ネタバラ」になって おります。もしこの映画をまだご覧になっていない方で、これから劇場 (近日再公開予定)やテレビ、ビデオ等で鑑賞したいという希望があり、 尚かつ物語の結末を知らずに、予備知識なしで純粋に映画を楽しみたい、 という方は、絶対にお読みにならないようご注意願います。 ************************************* テイラー隊長は、海辺の砂浜で泣き崩れていた。 今や残骸となった自由の女神像を目の当たりにして、今の自分の絶望的な状況を 悟ったのだ。<一体何故こんなことが起こったのか?> 彼の傍らでは、今や伴侶となった半裸姿の女性ノバが、彼のその姿を不思議そう に眺めていた。 そこへ人間の男二人がやってきた。 「ちょっと、あんた。何泣いてるの?」男の一人がテイラーに尋ねた。 「あー、言葉喋れる人間だねえ」テイラーは、驚いて男を見上げた。 「そうです。ちなみに名前は柏原郁三十郎と言います。柏原郁太郎の祖先です」 それを聞いて、もう一人の男がたしなめた。 「そんな、柏原郁太郎って言われても誰のことか相手に伝わらんでしょう。大体、 郁三十郎なんて、そんな変な名前があるか!」 「じゃああんたの名前は?」郁三十郎が尋ねた。 「小原譲三十治と言います」 「もっと酷いやないか!」 二人のやりとりを見ていたテイラーは口を開いた。 「ところでこれどういうことなの? ちなみに私ね、光速ロケットで宇宙旅してて 『猿の惑星』に降り立ったと思ったのよ。今も人間の言葉を喋る猿達と別れてきた ところだったんだよ。そしたら、ここは二千年後の地球だったんだねえ」 「まあねえ、地球以外の『猿の惑星』で何で地球の言葉が話されてるか不思議に思 わないのかってツッコミたくなりますけど、そんな細かいことはおいといて、大変 なことが起こったんですよ」 「猿達の話によると、人類が核戦争で絶滅したって聞いたんだけどねえ」 「核戦争やないですよ。大体冷戦が終結してるのにそんな大がかりな核戦争が起こ るわけないじゃないですか。バジパイさんやシャリフさんも戦闘機撃ち落とされた のに仲良うしたでしょ。あれで一九九〇年以前のSF映画はみんな苦労してるんで すよ。『ターミネーター』なんかソ連が消滅したときに『2』を作ったから……」 喋り続ける郁三十郎に、テイラーが言葉を挟んだ。 「じゃあ何で人類は絶滅したの?」 「銃ですよ。銃による暴動が起こったんですよ」 「えっ? 銃?・・・」テイラーはうろたえた。 「そ、銃ですよ。ネオナチとかミリシアとかいう怖い連中が銃ぶっ放してねえ、そ れで全人類の大半が死滅してしまったんですよ」 テイラーの表情に動揺が見え始めたが、郁三十郎と譲三十治は構わず話し続けた。 「全米ライフル協会の会長とかいう奴がねえ、銃規制するべきやない現行の法規制 で充分だとかぬかしやがってねえ。それが災いのもとだったんです」 「そう、だから銃規制さえちゃんとやっていれば、今も平和が続いていて、人類は 滅びずに済んだんです! 猿の天下にならずに済んだんです」 テイラーは二人の話を黙って聞いていたが、やがて口を開いた。 「だから何?」 「いや、『何?』って何ですの?」郁三十郎が言った。 「銃の所持はちゃんと認められた権利なんだよ。ちゃんと自衛しなきゃいけないん だから。それを不当に奪うことは出来ないんだよ」テイラーは主張した。 「でもそれで人類が絶滅したんですよ」 「そんなことあるわけないよ。銃で絶滅したんじゃない。核戦争で死滅したんだよ」 「そんないくら核戦争が起こったからって、そんな人類が死滅するほど酷くなるわ けないじゃないですか。冷戦はもう終結してるんですよ」 「それだったら銃による暴動のほうがよっぽど説得力がないじゃないか!」 「別におかしゅうない。そういう話やの、これは」 「とにかく銃で人類が絶滅してしまって、私ら以外もう言葉を喋れる人間は誰もい ないんですよ。寂しいとは思わないんですか?」譲三十治が横からたしなめた。 「別にい。僕、寂しくないもーん。ほらこんなに楽しいじゃん」テイラーは無理に 笑顔を作って飛び跳ねた。 「あ、こいつ開き直りやがった」譲三十治はムッとしながら言った。 「俺はどっちかいうたら銃規制派の『バーバラ寺岡さん』を支持するけどな」 「それを言うなら『バーブラ・ストライサンド』や!」 「それに比べてあの全米ライフル協会の会長っちゅー奴。あいつ、しゃーないね」 テイラーの表情が強張った。 「そう、あいつどうしようもない。要するに自分ら銃で楽しみたいから言うてるだ けやろ」 テイラーが口を挟んだ。「いや、そんなことないんじゃないかな……。ちゃんと 彼にも理念があって……」 「ないない、そんなもん。銃を持ちたい言う奴にろくな奴はおらん」 「いいじゃん。持ちたいっつってんだから」テイラーはむきになった。 「貴方ねえ本当に寂しくないんですか? どうやって人類を存続させるんですか?」 「いや、伴侶だったらここにいるよ」テイラーは誇らしげに、傍らにいるノバの腰 へ腕を回した。 「ちょっと待って下さいよ。それは不公平ですよ。ただでさえ女性少ないのに独り 占めしないでくださいよ」譲三十治が抗議した。 「いや、彼女は僕のことが好きだって言ってるんだよ」テイラーは惚けた。 「何言ってるんですか。言葉喋れないのに、『好き』って言えるわけないじゃない ですか」 「それじゃあこうしましょう」 郁三十郎は砂浜に棒きれで線を書いた。 「この線からこっちが銃規制賛成派、向こうが反対派。それで彼女が貴方を選ぶか、 そして、この小原譲三十治を選ぶかを決めていただきます」 譲三十治は驚いて郁三十郎を見た。 「ちょっと待って! そんなことするの?」 「大丈夫、お前やったら勝てる!」郁三十郎は励ました。 「無理やて、そんなん。相手むっちゃカッコええアメリカ人やないの!」 譲三十治は自信なげに嘆いていたが、郁三十郎は彼に構わず作業を進めた。そし て砂浜の線の向こう側にテイラーを、その反対側に譲三十治を向きを同じにして立 たせ、その向きの線の延長上にノバを立たせた。 「この勝負に勝った方が種の保存の権利を獲得することが出来るんです!」郁三十 郎は叫んだ。そしてノバに向かって言った。「さあどっちを選ぶ!?」 二人の男は、お辞儀をしながらノバの前に握手を求める手を差し出した。 「お願いします!」二人は同時に言った。 男と男のプライドがかかったこの勝負に全員が緊張を感じた。テイラーは風格も 魅力もある野性的な白人男性なのである。しかし譲三十治も痩せてはいるが筋肉質 で若々しく、精悍な面構えをしている。郁三十郎は興味津々で見守った。 ノバはしばらく考えていたが、やがて譲三十治の手をとった。 「うそっ!」 譲三十治は自分の勝利が信じられなかった。 郁三十郎も唖然としてしばらく口がきけなかった。郁三十郎は当然、譲三十治が 負けると思っていたので、振られた彼をからかうつもりでいたのである。 一方、テイラーは苦笑いしながらがっかりしていた。 「これもねえ、貴方が銃規制に反対した報いやと思って下さいよ」郁三十郎がテイ ラーに詰め寄った。「銃規制に賛成していたら、独りぼっちにならずにすんだんで す」 郁三十郎は上機嫌で、ノバと譲三十治の方に歩み寄り、ノバを間に挟む形で肩を 組んだ。「これで彼女は俺達のもんだなあ」 それを聞いたノバはムッとした表情で、郁三十郎を睨んだ。そして郁三十郎の腕 を振り解き、線の向こうに郁三十郎を押しやった。そしてテイラーの手を引いて線 のこちら側へ招き入れた。 「ちょっと待て……。どういうことやねん!」郁三十郎は言った。 譲三十治が代弁した。「つまり彼女が言いたいのは、種を保存すると言っても、 僕ら二人のどちらかが相手やったらいいけど、君の子供だけは産みたくない、とい うことやろな」 「でも僕は銃規制賛成派で、この人は違うで……。君も賛成派やのに何で一緒にお るの?……」 「まあ早い話、それとこれとは別ということでしょうな」 郁三十郎は呆然とした表情で、ニヤニヤ笑っている三人を見つめていた。しかし その嘲笑が恐怖の表情に変わるのを見ると、彼は自分の中に今にも爆発しそうなも のがこみ上げているのを悟った。 やがて彼は懐からベレッタ社製の十五発入り自動拳銃を取り出し、宙に向かって 弾丸を数発、発射させた。 「うおおおおおおおおうっ!!」 そして今度は三人の足下にめがけて引き金を引いた。三人は弾着を避けようとし て、飛び跳ねた。 「おどらんかいっわれええええぇっ!!」 自動拳銃の排莢口が開いたまま、閉じなくなったので、郁三十郎は全弾撃ち尽く したのを悟り、それを地面に叩きつけた。 「やってられっか!」郁三十郎は踵を返した。 「どこいくねん?」 郁三十郎は砂浜のそばにあった洞穴へ入っていった。 「帰るぞ俺はっ!」 「どこへ?」 「一九九九年に帰るんじゃっ! ついこないだこの洞穴がタイムトンネルっちゅー ことを発見したんじゃ。これ通っていったら帰れるから俺は帰るっ!」 「それを先に言え!」テイラーは言った。 こうしてテイラー隊長は、現代に帰還した。尚、二千年後の人類の未来を目撃し たその後のテイラーが銃規制の重要性を訴えたかどうかは定かではない。 (1999/05/29) ※この物語は架空のものであり、実在する団体、商業作品、事件、個人等 とは何の関係もありません。
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