連載 #6708の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
●1992年・続き 【3月・ボード構成見直し】 とりあえず仮運用で進んでいた運営打合せボードとデータボードであったが、 いよいよ名前を付けようということになった。作品ボードを二つ作って二リーグ 制にしようという案や、作者の言葉ボードを作ろう、下ネタ作品用のボードを作 ろうという案も飛び出したが、投票の結果結局ボード構成自体は変わらず、名称 は以下のように決定した。 1.フレッシュボイス 2.空中分解2 3.AWC編集室 4.AWCアートスペース 【4月・本3号完成】 第2号の完成から10ヶ月、藤井ぴろしきさん編集によるAWCの本「空中分 解」第3号が完成した。今回からA5版になり、参加者19人、作品数31、2 92ページ、定価700円。 ちなみにこの第3号、最近になって3部欲しいという人が現れた。私の手元に は余りが1部しかなく、ぴろしきさんのところにも在庫がなかったので仕方なく 1部だけ送ったが、何だったんだろう? 【6月・リレーQスタート】 6・7月のお題として新企画「リレーQ」が採用された。 題して「ブッシュ大統領殺人事件」。書く順番は定めず思いついたら書くこと とし、無責任に撤して気楽にやるのがルールとなった。 かくしてふみさんの第1回を皮切りに新連載がスタートした。 AWCでもリレー小説は何度かやっているが、やはりストーリーの整合性を保 つのが難しい。リレーQもたちまちストーリーに矛盾がでてきた。どう考えても ブッシュが複数いないと辻褄が合わなくなったのである。 そこで、ブッシュを複数にした。 さらに、登場人物で一人よく考えると名前の付いてない女性がいることに気づ いたのである。 そこで、名前のないままにした。 さらに物語の展開上、ブッシュ大統領は一日に5個の卵を産むことにした。ス ヌヌ大統領首席補佐官はインディアンのヌヌ族出身になった。キャラクターとし て登場した青木無常氏に発狂してもらうことになった。 かくしてAWC史上もっともハイテンションなリレー小説が繰り広げられたが、 もうみんな30歳前後になってこんなハイテンションで体が持つわけがない。6 月中36回までいったリレーQは、7月に入って3回しか続かず終了したのであ る。 【9月・ヘッダ制・カタログ制論争】 混沌の小説化ともいえるリレーQが終了し、「今の作品ボードごちゃごちゃし ていてどこに何があるんだかわかんなくないかい」という意見が出てきた。 作品のタイトルに「SF>推理>冒険>幻想>」とかのジャンル別のヘッダを つけようという案がまず一つ出された。しかしこれはヘッダの強制を望まない人 が多く、ジャンル分けが難しい作品もあることで、任意によるヘッダの付加にし ようということになった。しかし今度はつけるヘッダをどのようなものに決める かが難しく、結局立ち消えになった。 作者が作品紹介を書いてアップしようという案も出たが、定着しそうもないと いうことで結局立ち消えになった。 作品の内容を紹介するオンライン新聞を作ろうという案も出たが、どえらい手 間であることから結局立ち消えになった。 ではそれを自動化して、冒頭の数行を紹介したり頻出語を抽出したカタログを 作ろうという案も出たが、ネタばれの危険があることから結局立ち消えになった。 一言でいえばみんな結局立ち消えになったのだが、この論争がやがてAWC最 大のボード改革作品ボード3分割につながることになる。 【10月・由布子さん事件】 AWCに由布子さんという人がいた。 ちょっと前衛的で内面探求的な作品を書く人で、フレッシュボイスにはあまり 顔を出さなかったが、ときどき空中分解に作品をあげていた。文学少女がそのま まわき目もふらずに大人になったような人であった。 その由布子さんが、このころVANの地域掲示板の一つである大阪ボードに顔 を出すようになっていた。当時の大阪ボードは気取らない雰囲気の庶民的なボー ドで、フィリピンパブとお下劣言葉をこよなく愛する人々で活気にあふれていた。 私も大阪ボードの人にフィリピンパブオフに誘われたことがある。さすがに神 奈川から大阪のフィリピンパブには行かなかったが、妙に偉ぶってみせるパソコ ン通信のボードの中で飾り気のないいい人が多くて私は好きなボードだった。 そんなボードであるから、由布子さんがそこにいたのは何か違和感があった。 でも由布子さんは周りとコミュニケーションするでもなく、自分のことを書き続 けていた。 曰く、私の家には変な電波が送られている。私は常に監視されている。奇妙な 実験装置を作っていやがらせしている。 誰が見てもこの人ちょっと危ないなという印象は受けたが、特に誰かと関わる わけでもなく、AWCのメンバーも興味津々で見守り、ときどき由布子さんの文 体をマネして遊んだりしていた。大阪ボードのメンバーもときどき同文連続アッ プがあるのは閉口していたが、もともとがなんでもありのボードなので特に気に する様子もなかった。 そして運命の日。1992年10月10日を迎える。 0時37分。由布子さんの「私のMSGって、」というメッセージを大阪ボー ドにアップされた。このメッセージは10回同文がアップされた。 2時31分。由布子さんのメッセージが5件アップされた。このくらいはよく あることだったので、それを読んだ人も「早く寝たら」という程度だった。 そして3時21分。「そして、そういう関連があると、」というメッセージが アップされた。私を利用しようとしている人がいる、チェックくんが夜通し起き て私を見張っている、私のお婿さんを決めることまで考えてる人がいるみたいと いったメッセージである。そしてこのメッセージは、4時21分まで立て続けに アップされた。その数138。 それでは終わらなかった。7時49分再び同じ文のアップが始まった。 9時4分まで65件のアップが続き、いったん中断して10時44分から再び アップが始まり11時26分までにさらに50件、12時51分から5件、今度 は一気に13時59分から16時35分までに251件の同文をアップしたので ある。 もはや大阪ボードは完全に麻痺していた。オートパイロットは不可能になって いた。他の人のメッセージを手動で探すにも、スクロールするタイトル一覧は全 て同じメッセージだった。 大阪ボードのメンバーもただ呆然としていたわけではない。 由布子さんに警告文を書く者もいた。しかしその警告文は存在しないかのよう に未読の中に埋もれていった。 PC−VAN事務局にメールを書く者もいた。しかしおり悪くこの日は体育の 日で事務局は休み、おまけに翌日は日曜日だった。 彼女に優しく呼びかける者もいた。会話の通じる相手だったら、その声は届い ていたかも知れない。しかし彼女からはレスポンスの代わりに同文メッセージが 返ってきた。 そのころAWCでは。何も起きていなかった。 彼女は常々AWCのRAMであることを公言していたので、AWCを覗きに来 た人もいたが何も起きてないのでがっかりして帰った。 AWCのメンバーも何人か大阪ボードに出向いて彼女に呼びかけたが、なんら 反応はなかった。 彼女と直接コンタクトを取らないとどうしようもないのではないか。みなそう 思い始めていた。 そして17時3分。メッセージが変わった。 『今日の朝からの、設定を分析すると、 由布子 今日のかみ様とやらは、松の木の上のすなかけばばでしょう。(笑い) クロノス・クァルテットをサービスします。 私は、どんな人でも、くだらないことで私に嫌がらせをする人間は嫌悪の 対象だし、そんな妖怪連中とは関わりを持ちたくは無いわ。』 そしてすなかけばばに関するメッセージが2回同文でアップされた後、再び 「そして、そういう関連があると、」のアップが始まった。 間に違うメッセージを挟みつつ、17時28分から43分まで22件。 それからはメッセージが変わっていった。どうも彼女の敵はNHKと、バス会 社の寮と、三塚博と、低所得層のようだった(実在のNHKさん、実在のバス会 社の寮さん、実在の三塚博さん、実在の低所得層さん、気にしないでください)。 結局、この日一日で彼女のメッセージ数562。大阪ボードの番号は7411 から8031に進んでいた。 翌日。5時33分に由布子さんは再び「そして、そういう関連があると、」を アップした。しかし今回は3件アップされただけでしばらく沈黙が続いた。結局、 「そして、そういう関連があると、」は537回アップされたことになる。 そしてその2時間後。由布子さんがAWCに現れた。 「ホモセントリック・ラバーズ」という新連載をひっさげて。 さらに2時間後、由布子さんは「ホモセントリック・ラバーズ」の2回目をア ップした。由布子さんがAWCでしたのはそれだけだった。大阪ボードのメンバ ーの中には、AWCと大阪ボードでえらく違いや怒る者もいたが、こればっかり はどうしようもない。 その日の午後から、由布子さんはまた大阪ボードに今度は断続的にアップを始 めた。彼女の標的にT・Yという人とピノキオの弟が加わったらしい。いや、誰 かと聞かれても困る。 そんな彼女の文章の中に、一つだけ、といっても同じのが四つあったが、どう やらメールに反応したらしい文章があった。 『一つ、違う趣味をもう一つくらい作りなさい!! をいただいたのですが、だったら私に嫌がらせを している人たちに辞めさせてよ。本当にしつこいんだから。 その元気でやっつけて頂戴! それと、私、パソコン通信は、趣味じゃないわ。 嫌がらせをされなかったら、書かないわ。 だから、私に通信を辞めさせたかったら、嫌がらせを辞めさせてね。 ちなみに、趣味は、誰にも迷惑をかけない読書です。』 そして、いつの日か彼女は姿を消した。事務局がIDを止めたのか、それすら も知るよしがなかった。 だいぶ後で知った話だが、事件の真っ最中、我慢できなくなった大阪ボードの メンバーが彼女に電話したそうである。彼女は以前に大阪ボードに自分の電話番 号をアップしていたのだ。 2時間の会話の間、彼が喋ってるのは10分か15分くらいで、それ以外は由 布子さんが喋った。彼女の話の中味はボードの内容をさらに詳しくしたものだっ た。彼が何を言っても効果は無かった。彼女はこうも言ったそうだ。 「PC−VAN(事務局)にID取り消しされてもいいから、ずっと同じメッセ ージをアップし続ける」 「徹底的にみんなから気違い扱いされて、一人ぽっちになるのを望んでいる」 彼には返す言葉がなかった。 ◎この年からAWC大賞は従来のボードによる投票を改めて現行のメールによる 形式になった。受賞作は以下の通り。 長編賞 リーベルG 雨の向こうに 短編賞 ゐんば 大型ものすごい小説「ものすごい熱情」 文芸賞 青木無常PLUS ネパールの三馬鹿 お題賞 リレーQ>ブッシュ大統領殺人事件 キャラクター賞 フク(くり えいた フクさんのいた年) 教授(椿 美枝子 教授のスーツは着たきり雀) 松本喜三郎(ゐんば 大型××小説) 新人賞 うちだ フレッシュボイス賞 ハロルド・五月うさぎ 五ハ戦争 センテンス賞 うちだ 「EASY LOVERS」より 『彼が他の人のことを考えていたとしても、私のスカートの中身にしか興味がな かったとしても、今この瞬間こうして一緒に星をみていてくれることに、感謝し ます。』 (続く)
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