連載 #6556の修正
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居間にて、正蔵と和世と晴樹と皆世と友世の五人が話し合っていた。 皆世が言った。「奥さんの妹さんの卵子だから、伯母さんが実のお母さんてこと になるのかしら?」 「じゃ産んだお母さんはお母さんじゃなくて伯母さんになって、伯母さんから産ま れてきたということになるの?」和世が言った。 晴樹は考え込んだ。「一概にそうは言えないんじゃないかな。お母さんのお腹の 中で育てられるんだから、へその緒を通して血は繋がってるわけだから・・・」 「『血が繋がる』っていうのを、そういう意味に考えるの? ちなみにお母さんの お腹じゃなくて伯母さんのお腹でしょ」皆世が言った。 和世が反論した。「どうして? 伯母さんの卵子を使ったんでしょ。伯母さんの お腹は関係ないわよ」 「だからこの場合は、伯母さんがお母さんになるんだって言ってるでしょ!」 「それはまだ『血が繋がる』の意味をハッキリさせてからでないと何とも言えない でしょ。今はまだ産んだ人をお母さんに例えて話さないと・・・」 話し合いはやがて議論となり、その場の雰囲気もやや険悪になりつつあった。 「どうしてそう融通が利かないの?」皆世がなじった。 「筋道たてて話さないとややこしくなるからでしょ」和世が言い返した。 「どうでもいいけどさ」うんざりしながら晴樹が言った。「伯母さんとお母さん二 人が両方お母さんと考えてもいいんじゃないの?」 「そんなのおかしいわよ」皆世が頑固に言い張った。「それじゃあまるで、私達の お母さんが晴樹兄ちゃんのお母さんと同じだって言ってるようなものじゃない」 「皆世!」 和世が厳しい表情で皆世に叫び、晴樹は無言で、自分の失言に後悔している様子 の皆世を睨んでいた。 「うん、そりゃ確かにおかしいね」晴樹の声には、妬みの響きがこもっていた。 「そんな話はよしなさい!」 台所の方から、今までのやりとりを聞いていた鮎子が入ってきて叫んだ。 「別に誰から産まれてこようがそんなことはどうでもいいじゃないの。自分の子供 として育てて一緒に暮らしていたら、それは立派な親子よ。誰が実のお母さんで誰 が伯母さんかなんて決めるのってくだらないと思わないの?」 鮎子の言葉に、他の五人は沈黙した。 「私だってそうよ。私は晴樹ちゃんにとっては伯母でしかないかもしれないけど、 晴樹ちゃんには死んだお母さんのことはもう忘れて、私のことを実の母だと考えて 欲しいとさえ思ってる」 晴樹の方に、他の四人の視線が集まった。晴樹は今まで黙っていたが、やがて意 を決するようにして言った。 「伯母さんには悪いけど、母さんを忘れることは出来ない」 「晴樹ちゃん、別にお母さんは・・・」 晴樹は、和世の言葉を遮るようにして話し続けた。「でもある意味で、伯母さん のことを実の母、いやそれ以上だと思ってるよ」 他の五人は晴樹の言葉に安堵感を覚えた。 「それでいいのよ」鮎子は微笑んだ。「私だって晴樹ちゃんのこと、実の息子だと 思ってるわよ」 「私だって晴樹ちゃんのこと、従弟じゃなくて実の弟みたいに思ってるもん」和世 が言った。 「私なんか思ってるだけじゃないわよ」皆世が言った。「晴樹兄ちゃんのこと、実 際に晴樹『兄ちゃん』て呼んでるもん。これは従兄のお兄ちゃんっていうんじゃな くて、本当のお兄ちゃんっていう意味で呼んでるのよ。知らなかったでしょ? 私 のことを実践派と呼んで」 「調子いいんだから!」和世は苦笑した。 「私も実のお兄ちゃんだって思ってるもーん」友世が言った。 家族六人に笑顔が戻った。 今まで黙って話を聞いていた正蔵が初めて口を開いた。「僕だって晴樹のことを 実の孫だと思ってるよ」 他の五人は、その言葉に水を差されたような気分になった。 「いや、お祖父ちゃんは僕のお祖父ちゃんなんだから、わざわざそう思わなくても 事実上、僕はお祖父ちゃんの実の孫だよ。今まで何だと思ってたの?」 「僕も何か言わなきゃいけないかなって思ったんだよ」正蔵は気まずそうに言った。 (98/06/09)
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