連載 #5260の修正
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うんこのちからを考察する前に、まずうんこの汚さについて、考えてみたい。 飲尿療法というものが、かつて流行ったようだ。これは、尿ほどきれいな液体は、 存在しないという発想があるように思える。 元々尿は、血液だったはずである。体内を巡っていた水であるから、そこに毒 素や雑菌が入っているはずがない。尿が自然界には存在しえないきれいな水とい うのは、こうした考えに基づくようである。 うんこを同様に考えるのは、無理があるのかもしれない。ただ、うんこや尿と いうものが、この世のはじめから汚いものであったとは、思えない。むしろ、歴 史的に汚いという観念が、付与されていったと思う。 歴史的にというのは、都市の発達と農業の衰退という産業構造の変化に、結び ついているのではないかと、思えるからだ。農業を中心に考えれば、糞尿は肥に なるものであるから、廃棄すべきものではない。都市において、忌むべきものと なる。 うんこはその自然性によって、都市という人工空間で汚いというスティグマを 与えられるように思う。自然から遊離していく資本主義社会において、自然その ものであるうんこは、排斥される。 うんこの自然性とは、何か。ようするに、体内から出てくるものという事だろ う。体内こそ、我々のもっとも身近にある異界であるといえる。 民俗学的社会において、異界とは海の底(例えば竜宮)であり、森林奥深くで あり、険しい山の中である。そうした異界から訪れるものが、民俗学で分析され るような山人であり、鬼であり、山姥だ。民俗学的社会は、こうした異界から訪 れる異人と接触する事により、富と災いをもたらされた。ようするに、異人とい う周縁的存在と接触する事により、活性化された。 これは、自然との接触であったともとれる。自然の擬人的表現としても、異界 から訪れる者は解釈できるからだ。 うんこは、体内をひとつの異界として捉えれば、異界より訪れる他者として考 えることもできる。民話の中には、鬼が残していったうんこが、黄金に転じると いったものもある。異人とうんこは、周縁的存在として、近い位置にあるといえ る。 では、なぜ体内が異界であるのか。そこに考察を移したい。ハイヌ・ウェレ型 の神話というものがある。これは、一般に穀物の起源を説明する神話として、知 られる。 ハイヌ・ウェレ型神話の形態は、以下のようなものである。訪れた英雄を、女 神がもてなす。もてなす為の馳走を用意する為、女神は排泄行為を行う。その嘔 吐物、あるいはうんこが食物に転じていく。 この行為を覗き見た英雄は、女神の行為を汚いものとして、女神を殺す。その 後、女神の死体から様々な穀物が生え始め、大地を豊かなものえと変えていく。 この神話の中では、女性が豊饒の力の源となっている。女性の死が、大地を豊 かなものへと変える。体内の異界とは、本来女性の持つ豊饒性よりくるものでは ないか。 女性は文化人類学の社会の中では、一つの富であった。そもそも、近親相姦の タブーは、富を蓄積することが汚れを産むとするモースが贈与論の中で分析した ような考えかたから発生してきたものとする説がある。 家族の中に女性をとどめておくのは、富の独占に繋がるという事だ。女性は子 を産む。このことが、豊饒性につなかっていく。 ところで、神話的世界において、人間はどこから生まれてくる事になっている かというと、冥界すなわち死後の世界である。人は死んで、冥界へゆく。そして そこから又、この世へ戻ってくる。 そういう見方から女性を見た場合、女性の体は冥界と現世を繋ぐ通路であると 見る事ができる。女性は豊饒のシンボルであるとともに、死の世界を象徴する恐 るべき存在ともなる。 ヴァギナ・デンタータとよばれるタイプの民話がある。女性器に歯を生やした 怪物がでてくる民話である。これは、女性器が冥界への入り口であり、死の象徴 ともなりうる事をあらわしている。 さて、人間の体の中には豊饒性、他界への通路が潜んでいる事を見てきた。と すれば、うんこも又、死の世界から訪れた恐るべき存在であり、又、富をもたら す豊饒性の象徴ともなりうるという事だ。 都市の発生は、あたかも生活空間から自然を駆逐したように見える。しかし、 私たちの体内にある自然は、決して消し去ることはできない。 それは、物理的な意味においても、精神的な意味においてもである。私たちの 精神は、畏怖すべき他界、豊饒な周縁に向かい、祝祭を希求する。 都市空間の中でそうした魔術的世界への欲望は、どのような形で噴出するので あろうか。うんこの作り出すちからは、何をもたらすのだろうか。
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