連載 #5202の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
0855時 第二航空戦隊旗艦「翔鶴」 「三航戦がやられました!」 見張り員の絶叫に、原忠一二航戦司令官は、艦橋の窓辺に駆け寄った。彼の目に 入って来たのは、何度も艦体を震わせ、断続的に甲板から黒煙と火の粉を吹き上げ る「赤城」「天城」「蒼龍」の姿だった。 やがて一際大きな爆発音が轟き、「赤城」の前甲板の一部が捲れ上がり、エレベ ーターが飛んでいって艦橋を押し潰すのが見えた。 「南雲長官が……!」 同時刻 第16任務部隊 「攻撃隊より入電! 敵空母3隻に爆弾命中、大火災発生の模様!」 通信参謀の報告に、旗艦「エンタープライズ」の艦橋は沸き返った。一番興奮し ているのは、言うまでもなくハルゼーだ。右手を何度も突き上げ、派手なガッツポ ーズをとっている。宿敵である日本空母に痛烈な一撃を加え、マーシャル沖で旗艦 と運命を共にしたキンメルの仇を、一部なりとも討ったのだ。 ハルゼーは、航空参謀に向かって叫んだ。 「第二次攻撃隊を出せ! 一隻も逃がすなよ!」 0905時 第八艦隊 既に3隻の空母の火災は、手の付けられないところまで来ていた。格納庫内や飛 行甲板上で、爆弾や魚雷、航空ガソリンが次々と誘爆し、火の手は弾薬庫やガソリ ン庫にまで及んでいた。 「蒼龍」の艦後半部全体が轟然と爆発し、数百メートルに及ぶ火柱を高々と吹き 上げた。後部弾薬庫とガソリン庫が、同時に誘爆したのだ。 「蒼龍」は、後半部を原型をとどめないほどずたずたに引き裂かれ、無数の破片 を撒き散らして、艦尾から引き込まれるように沈んでいった。電装関係が全く使用 不能になっていたのか、最後まで総員退艦命令は発せられなかった。最後にもう一 度、すっかり海没した頃に、まだ足りぬとでも言うが如く水中から爆発音が聞こえ て来た。それによる波紋と、水中爆発でぐしゃぐしゃの肉塊に変じた水死体だけが、 かつて「蒼龍」と言う艦がそこに存在したと言う唯一の証拠だった。モレスビー攻 撃隊と直掩隊の搭乗員を除き、柳本隆作艦長を始めとして生存者は一人もいない。 「天城」は、艦内火災の延焼を食い止める事が出来ず、火の手がついに機関部に まで及んだ。主機・発電機が次々と停止し、「天城」は完全に航行不能となった。 「赤城」は、誘爆こそ発生したものの、機関部や操舵系統は全くの無傷で、青木 泰次郎艦長の迅速な対処指示の下、火災も何とか鎮火の方向に向かっていた。だが、 吹き飛んだエレベーターが艦橋を押し潰してしまい、南雲長官以下第八艦隊司令部 は壊滅状態だった。艦自体も、格納庫内で起きた大規模な誘爆のために飛行甲板が そこかしこで隆起してしまい、艦載機の運用は不可能となっていた。 0910時 第二航空戦隊旗艦「翔鶴」 指揮権を引き継いだ原中将がまず行ったことは、第二次攻撃隊をとにかく兵装転 換の済んだ機体から飛ばすことだった。すぐに出せる零戦は、直掩予備としてとっ ておいた2個中隊18機のみだったが、いつ米軍の第二次攻撃があるか判らない以 上、とにかく篭の中に卵を詰め込みっぱなしにすることは避けねばならない。 こうして、零戦18・艦爆36・艦攻27からなる総数81機の第二次攻撃隊が、 米空母目指して飛び立っていった。直掩隊の予備にとっておいた零戦を出すのは危 険な賭けだったが、結果的にこの判断は的中した。少なくとも、米空母を攻撃する と言う一点においては。 0920時 第八艦隊上空 「母艦が……」 「『赤城』が……!」 誰かが発した悲痛な声が、富沢のレシーバーに飛び込んで来た。水平線の彼方に 黒煙を認めた時から嫌な予感はしていたが、まさかこれほどまでにやられていると は…… モレスビー攻撃隊が帰還した時、彼らを迎える筈の空母は、出撃時の半数の3隻 に減少していたのだった。 二航戦でも最快速で知られた2隻の片割れである「蒼龍」の、小柄ながらも精悍 なシルエットは、そこにはない。波間を漂う無数の破片が、辛うじてその痕跡を留 めているのみだ。 「天城」は、黒煙と炎を吹き上げて、未だに激しく炎上を続けていた。火勢が衰 える様子は全く見られず、飛行甲板に張り巡らされた木材は真っ黒に炭化して、あ ちこちで炭が燃える時特有の赤い光を発している。艦の行き足は完全に止まり、 「天城」は僅かに傾いた状態で漂流していた。 「赤城」は、火災こそ収まりかけているものの、飛行甲板全体が下から膨れ上が ってしまい、とてもではないが着艦出来る状態ではなくなってしまっている。前部 エレベーターがふっ飛んで、数十トンの重量を持つ無意味な金属板と化したそれが、 艦橋にのしかかっている。 「攻撃隊は健在な空母に向かえ!」 第八艦隊の指揮を引き継いだ二航戦司令部からの命令が、モレスビー攻撃隊に下 された。第二次攻撃隊が発進していたために、残る3隻の空母にはかなりの余裕が 残っていたが、それでも30機余りが母艦に着艦出来ず、周囲に不時着水した。搭 乗員の多くは、直衛の駆逐艦や、空母から下ろされた内火艇などに救助されたが、 着水に失敗して愛機と共に海の藻屑と消えた者も、一人や二人ではなかった。 0950時 第八艦隊 「敵、第二波来襲! 戦爆雷連合、およそ60機!」 「対空戦闘用意!」 直掩隊からの敵機発見の報告と共に、伝令と命令が駆け巡り、「天城」の消火作 業と生存者の収容に当たっていた各艦は、大急ぎで所定の位置に戻って行った。高 角砲や機銃が天を睨み、現れた敵編隊に向かって、直掩機の群が突進して行く。 やがて、直掩隊の零戦と攻撃隊護衛のF4Fが、激しい空中戦に突入して行った。 1000時 第八艦隊上空 「妙だな……」 愚かにも零戦の機動に追従しようとして、コントロールを失ってふらふらと目の 前にまろび出て来たF4Fに20ミリ弾の洗礼を見舞った後、「瑞鶴」零戦隊長の 渋谷正幸少佐はふと疑問を感じた。 敵空母は、少なくとも4隻。総搭載機数は、400機近い筈だ。さっきの戦闘で 現れたのは、合わせて約120機ほどだったから、直掩隊と偵察隊を差っ引いても、 まだ150機近くは残っていると見ていい。だが、今回目の前に現れた敵機は、ど う見ても60機かそこらしかいない。と言う事は「「 「しまった、別働隊だ!」 彼が咄嗟に悟った事を母艦に連絡しようとしたその時、輪形陣の方から、凄まじ い轟音が響いて来た。 「遅かったか……!」 「いいか、狙いは一隻に絞るんだ。雷撃隊の連中が当てにならない以上、俺達だけ で敵空母を沈めてやるくらいの意気込みでかかれ。わかったな!」 「了解!」 レシーバーから、一斉に部下の応答が返って来る。 「よしっ! 行くぞ、ウィリー!」 空母「ホーネット」艦爆隊長のラルフ・ヘンダーソン少佐は、ドーントレスの後 席に座るウィリー・ジョンソン少尉に向かって告げると、操縦捍とスロットルを一 気に押し込んで、45度の急降下に入った。彼の後には、部下達の乗る10機のド ーントレスが続く。 眼下には、5隻の空母が見えていた。うち一隻は、すっかり焼け焦げて未だに黒 煙を吹き出している。 (あいつは、放っておいても沈むな) そう思った少佐は、目標を、手近に見えた他よりやや小さ目な空母に定めた。 確かにドーントレスは傑作機だが、それを操るパイロット達の腕は、決して一流 とは言えない。それを知っている少佐は、敢えて命中率の低下を承知で、その空母 を狙った。これなら、11機のドーントレスが総掛かりで当たれば、沈める事が出 来るかもしれない。 ヘンダーソンの読みは、正しかった。ただ一つ、彼自身の機が対空機銃にダイブ ブレーキを吹き飛ばされて操縦不能に陥り、目標とした空母「飛龍」の甲板に自爆 体当たりをかましてしまった事を除けば、の話だったが。 1000ポンド爆弾と大量のガソリン、そして2人の人間を抱えたドーントレス は、500キロ以上の速度で「飛龍」の飛行甲板を突き破り、格納庫の内部で爆弾 を炸裂させた。破壊された機体から撒き散らされたガソリンに火が着き、作業中の 格納庫内に特有の危険物「「給油パイプ内のガソリン、運搬中の爆弾や魚雷、機体 内部の航空燃料「「を、一気に誘爆させた。爆風は格納庫の床を吹き飛ばして艦の 弾薬庫に到達し、続いてヘンダーソンの部下達が投下した爆弾が、次々と惨状に輪 を掛け、収められていた爆弾や魚雷、機銃弾などの信管を一斉に作動させた。渋谷 少佐が聞いた轟音は、この爆発だった。 「翔鶴」艦長の中本功太郎大佐は、突如襲って来た衝撃に、大きくよろめいた。 「被害は!? どこをやられた!」 だが、返事は意外なところから返って来た。 「や……やられたのは本艦ではありません!」 「何だってぇ!?」 伝令が報告すべき情報を、何で見張り員が伝えて来るんだ「「中本が、いぶかし げに思いながら聞き返すと、見張り員は悲痛な声で答えた。 「被弾したのは……『飛龍』です……!」 「飛龍」の艦全体が、轟然と爆発した。まず、飛行甲板や舷側を貫いて縦横に白 い光の帯が走り抜け、続いて光が走った場所から紅蓮の炎が渦を巻いて湧き出し、 赤黒い茸雲となって宙天高く立ち昇った。同時に、鉄屑や肉片といった「飛龍」を 構成していたものの破片が周囲一体に飛び散り、僚艦の乗組員の頭上から降り注い だ。喫水線から上の部分を完全に吹き飛ばされ、船底を至る所でぶち抜かれた「飛 龍」は、それから三十秒と経たずに波間へ姿を消した。数十分前に沈んだ姉同様、 乗組員を一人残らず道連れとしての最期だった。 「『飛龍』が……!」 原中将は、断腸の思いでその光景を見つめていた。 (こうなったら……何がなんでも仇は打つ。米軍の空母を、最低一隻は道連れにし てくれる……) そのための攻撃隊は、今頃米機動部隊に襲いかかっている筈だ。 (頼むぞ……!) だがその時、原の祈りを打ち砕くかのように、輪形陣内でもう一つの轟音が轟い た。直掩隊と対空砲火網を突破して輪形陣内に侵入した7機のアベンジャーが、深 手を負っていた「赤城」の左舷のどてっ腹に、止めと言うべき4本の魚雷を叩き込 んだ瞬間だった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Vol
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「連載」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE