連載 #5128の修正
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「距離15000!」 観測員からの報告が入った次の瞬間、「最上」の第三砲塔に、「レパルス」の6 インチ砲弾が2発同時に炸裂した。叩き潰され、大きく歪んだ砲塔に走った無数の 亀裂から、火炎が吹き出している。 「長官!」 「鳥海」の水雷長が、早く撃ちましょう「「とでも言いたげに叫ぶ。 「まだだ。7000まで肉薄する!」 常識的に考えれば、これでもまだ雷撃には遠すぎる。この射程の短さ故に、魚雷 は弱った敵艦に止めを刺すことにしか使えない、と言うのが、世間一般での軍事常 識だった。 だが「「 「距離7000!」 「よし、発射!」 単縦陣の先頭を行く「鳥海」が大きく回頭し、舷側の61センチ発射管から、4 本の魚雷が海に投げ込まれた。後続の4隻も、それに続く。5隻合計20本の魚雷 は、「レパルス」の舷側目掛けて海中を疾走して行った。 「疾走」「「と言うと、当時の軍事関係者は首を捻ったかも知れない。欧米の海 軍が装備する魚雷の雷速は、特に速いものでも、せいぜい30ノット強がいいとこ ろだったからだ。だが、日本海軍に限って言えば、それは当てはまらなかった。 「鳥海」以下5隻の重巡が発射した魚雷は、雷速42ノット。常識では、絶対に考 えられない速さだ。 この秘密は、魚雷の動力源にある。一般の魚雷が、空気を動力としているのに対 し、日本海軍の魚雷は過酸化水素から分離した純粋酸素を燃焼させて駆動するのだ。 この方式は爆発事故が多発したために、各国では開発を断念していたが、燃焼初期 にのみ空気を使用すると言う方法によって、日本海軍はこれの実用化に成功したの だった。 こうして誕生した酸素魚雷の威力は、信じ難いものだった。雷速が従来型の1.5 倍、炸薬量は2倍、射程距離に至っては、最大40000メートルと、10倍近く に達したのだ。おまけにこの方式には、雷跡が殆ど見えないと言うおまけまで付い て来た。 だが、このうち射程距離については、余り意味のないものだったかもしれない。 何故なら、砲撃にしてもそうだが、最大射程で放った攻撃というものは、殆ど当た らないのだ。希薄な空気中を突進する砲弾ですらそうなのだから、遥かに抵抗の大 きい水中を進む魚雷の弾道歪曲率たるや、凄まじいものがある。ここから小沢が弾 き出した酸素魚雷の理想射程が、7000メートル「「これでもまだ、当時の常識 を超える距離だったが「「だった。 そのような事情もあって、「レパルス」は、接近してくる恐るべき海中の暗殺者 に対して、全く無警戒だった。彼女の見張り員は、最後の瞬間まで、接近する20 本もの魚雷に気付かなかった。 次の瞬間「レパルス」の左舷に、7本の魚雷「「炸薬量700キロの化け物「「 が、同時に命中した。242メートルの長大な船体が、硝煙の混じった真っ黒な水 柱に覆い隠される。その向こうで一瞬閃光が走り、続いて数十発の雷が同時に落ち たような轟音が響き渡った。その衝撃波は、「プリンス・オブ・ウェールズ」や 「榛名」の艦橋のガラス窓を、びりびりと揺さぶるほどだった。大量の魚雷を同時 に叩き込まれたために、艦体を伝わる衝撃波が干渉し合って増幅され、弾薬庫が誘 爆したのだ。 やがて水柱が崩れ落ちた時、「レパルス」は、海面に広がった燃え盛る重油の衣 を纏い、艦首と艦尾をそれぞれ高々と突き上げて、黒煙と水蒸気と火災炎に包まれ ながら海底深く没しつつある、巨大な鉄屑と化していた。艦体の各所で誘爆が起こ る度に、爆炎が沸き上がり、火山弾のような真っ赤に焼けた破片が撒き散らされる。 「ウェールズ」の将兵が唖然と見守る中で、「レパルス」は、テナント艦長を含 む900名以上の乗員と共に、自らを火葬に処しながら姿を消した。跡には、立ち 昇る黒煙と、波間に浮かぶ無数の破片が残された。 「ウェールズ」にも、最期の時が迫っていた。護衛の駆逐艦3隻を片付けた、軽 巡「川内」以下4隻の水雷戦隊「「1隻は、「テネドス」の放った砲弾を運悪く魚 雷発射管に食らい、誘爆轟沈していた「「が、生き残った両用砲からの砲撃をもの ともせずに突進すると、距離9000で一気に回頭し、酸素魚雷を放った。命中し た魚雷は3本と少なかったが、「金剛」「榛名」との砲撃戦で多くの死傷者を出し、 ダメージコントロール能力の低下していた「ウェールズ」には、十分な打撃だった。 リーチ艦長が対処指示を出しても、防水扉に取り付き、あるいは排水ポンプを動か す兵は僅かだった。 浸水を食い止める者のいないまま、「ウェールズ」は右舷に傾き、徐々に喫水を 下げて行く。辛うじて生き残っていた第二砲塔も、今や沈黙を余儀なくされていた。 傾斜を生じた今の状態では、撃っても当たらない。 「そろそろ頃合だろう。降伏を勧告するか」 双眼鏡で「ウェールズ」の様子を観察していた近藤が呟いた。「金剛」の前檣楼 で信号灯が明滅し、発光信号で降伏勧告が出される。やがて「ウェールズ」の旗旒 塔に白旗が翻り、乗組員が次々と舷側から海に飛び込み始めた。 「駆逐艦に、脱出した乗組員の救助を行わせろ」 「敵艦の曳航は、どうしましょう?」 白石参謀長の問いに、近藤は首を横に振った。 「向こうも王室海軍の誇りがあるだろう。むざむざと新鋭戦艦を渡すような真似は するまい」 事実この時、「ウェールズ」のキングストン弁は既に開かれて、流れ込んだ海水 が艦内区画を席巻し始めていた。17時22分、日本艦隊によって「プリンス・オ ブ・ウェールズ」の沈没は確認された。1400名を超える乗員の内、日本軍の駆 逐艦に救助されたのは約500名。その中に、フィリップス長官とリーチ艦長の姿 はなかった。 こうして、英東洋艦隊は全滅した。同時にそれは、シンガポールの確実な陥落と、 英植民地帝国の終焉を意味していた。ウィンストン・チャーチル英首相は後に、自 らの著作「第二次世界大戦回顧録」において、「未だかつて、これほどの衝撃を受 けたことはなかった」と書き記すことになる。 大本営発表(11日午前10時) ・マレー方面に派遣されたる帝国海軍部隊は、去る12月9日から10日にかけて 英国東洋艦隊主力と遭遇交戦の末、全敵艦撃沈の大戦果を挙げたり。 ・戦果内訳 英戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」撃沈 同「レパルス」轟沈 駆逐艦三隻撃沈 ・本海戦における我が方の損害 駆逐艦一隻喪失 戦艦一隻大破 (東京朝日新聞 昭和16年12月11日 号外記事より抜粋) 緒戦の大勝利を、国民は歓喜の声で迎えた。各地で祝賀式典が催され、街々を提 灯行列が練り歩いた。皇軍無敵、米英撃滅を謳う社説が新聞の紙面を飛び交い、お 祭り騒ぎは留まる所を知らなかった。 1941年12月13日 ハワイ 合衆国太平洋艦隊旗艦「サウスダコタ」作戦室 「全艦隊への補給が、本日終了する予定だ。明日午前9時を以って、全艦隊を出撃 させる。目標は、ここだ」 ハズバンド・キンメル合衆国太平洋艦隊司令長官が、作戦会議の席上で宣言した。 彼の指は、作戦地図上のマーシャル諸島を指差していた。 「日本軍の配備状況はどうなっているのですか?」 参謀の一人の問いに、ウィリアム・スミス参謀長が答えた。 「現在日本軍の艦隊は、大きく二つに分かれている。南シナ海と、トラックだ。前 者は、金剛級戦艦2隻を主力に、重巡6隻他の戦力を保有している。イギリス東洋 艦隊との戦闘でいくらかダメージを受けたようだが、その戦力は衰えていないもの と思われる。もう片方は、彼らの主力と言える部隊だ。長門級戦艦2隻を筆頭に、 戦艦8隻、空母18隻、重巡12隻、軽巡11隻、駆逐艦50隻以上。恐らく、我 々の出撃に呼応して、マーシャルに進出してくるものと思われる」 「と言うことは、空母の数では日本側が4倍半、戦艦は我々が2倍、あとはほぼ互 角か」 第二任務部隊指揮官のウィリアム・パイ中将が呟く。 「ジャップどもの戦艦など、恐れるに足りん」 空母4隻から成る第四任務部隊の指揮官を務める、ウィリアム・ハルゼー中将が、 立ち上がって言い放った。猪突猛進を以って知られる、米海軍きっての猛将だ。 「うちの艦載機が束になってかかれば、悉く打ち沈めてくれる」 「無茶を言うもんじゃない、ウィル」 キンメルがたしなめる。彼とハルゼーは、海軍兵学校の同期生だ。 「たかだか空母4隻で、8隻もの戦艦を沈められるものかね。正攻法で十分勝てる 相手だと言うのに、わざわざ奇策に頼る必要などどこにもない。それに、航空機は 未だ未知数の戦力だ。確信の無いものに、戦争の勝敗を預けることはできん」 そう言われては元も子もない。ハルゼーは、不承不承腰を下ろした。 (我が合衆国が誇る、三年計画艦隊16隻……これがあれば、日本軍が全力で迎え 撃って来たとしても、余裕をもって戦える。空母の数では向こうが有利だが、戦艦 の戦力差の前には微々たるものだ。恐れるものは何もない) キンメルは既に、自分達の勝利を確信していた。彼は日本軍が弱敵だなどと言う 幻想は抱いていない。現に、ホレイショ・ネルソンやフランシス・ドレイクの正当 な後継者である英海軍の新鋭戦艦が、奮戦空しく彼らの前に敗れ去っている。だが、 艦隊決戦においては、身贔屓を抜きにしても世界最強の実力を誇る、我が合衆国太 平洋艦隊が全力をもってかかれば、絶対に敗れることはない「「彼だけではなく、 他の誰もがそう信じていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− こんな短時間で仕上がるとは思わなかった^^;^^; Vol
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