連載 #5112の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
不意にサニルの目がゆっくりと開いた。 「サニル!」 サオリの叫びはサニルの耳には入らなかったようだ。少年はゆっくりと周囲 を見回した。その幼さを残した顔に、浮かんだ異質な表情を見て、サオリはぞ っとした。 ヴェロニカが震えながら口を開いた。隠しきれない畏怖を顔に浮かべながら。 「本当にジーザズ・クライストが復活されたのですか?」 「そのとおりだ!」メルキオルは恍惚を顔中で表現していた。「これが何を意 味するかわかるかね?私の罪が許されるときがきたのだ!」 「あなたの罪?」 「私の本当の名はアハシュエロス」メルキオルは涙を流している。「ゴルゴダ の丘へ十字架を背負いながら歩いていく神の子を罵ったとき、永遠の呪いを受 けた者だ。あのときジーザズは、私に言われた。『私が再び地上に戻ってくる その時まで、あなたはこの地上で待っていなければならない』と……」 メルキオルはヴェロニカを見た。常に浮かんでいた嘲笑はすっかり消えてい る。 「その言葉通り、私は死ぬことができなくなった。私は世界中をさまよい歩き 数々の王朝や国家の誕生と衰亡を見た。何度も信仰を捨て、また取り戻した。 何千もの賢者に、この苦しみを逃れる術を求めたが、ついにそれは得られるこ とがなかった。そして、ジン・バーソロミューという天才と出会ったとき、私 はジーザズの復活を確信したのだ!」 「そんなばかな……」ヴェロニカはうめいた。「あれは17世紀頃誕生した、 ただの伝説にすぎない……」 「伝説などではない。私は現にここにいるのだから。神の王国の実現を見たと き、私はとうとう永遠の眠りにつくことができるだろう」 サオリはサニルに近寄った。サニルはサオリを見たが、それは見知らぬ他人 を見つめる視線だった。 「サニル!あたしがわからないの?」 「下がれ、娘!」メルキオルが叱りつけた。「神の子の前に、信仰心なき者が 立つことは許さぬ!」 「何が神の子よ!あたしの弟を返して!」 「カスパル。この娘を下がらせろ」 カスパルがハンドガンをサオリに向けた。サオリはやむなく足を止めた。 「娘、お前が持っている槍をヴェロニカ様に渡すのだ」 「どうするつもりよ」 「いいから渡せ」 渋々サオリは、手にしていた槍をヴェロニカに差し出した。ヴェロニカは、 血にまみれた槍を、おそるおそるつかんだ。 「私に何をやらせるつもりですか?」 「ジーザズを槍で刺すのだ」 サオリとヴェロニカはそろって驚愕の声をあげた。 「なんですって!」 「2000年前、ジーザズはゴルゴダの丘で全人類の罪を背負って、十字架に かけられた。もう一度それを繰り返すのだ。それ以外に、今の人類の罪を浄化 する方法はない」 「あなたが何を言っているのかわからない」ヴェロニカは恐ろしそうに一歩下 がった。 「ジン・バーソロミューの娘のくせにわからないのかね。このままでは、人類 は遠からず自滅の道を歩むだろう。それは人類が生来備えている争いを好む性 質のためだ。欲望のままに資源を浪費し、有毒な廃棄物を将来の子孫に先送り することで今を享楽している。銀貨30枚のためにジーザズを売ったイスカリ オテのユダそのものだ。30年前、人類を壊滅させなければ、人類が地球を壊 滅させていただろう」 「狂ってるわ」サオリが吐き捨てた。 「今、残った人類に神の心を持たせなければ、100年後には再び地球を荒ら し始めるだろう。そうなる前に、彼らの罪をジーザズに背負ってもらわねばな らない。その後、秘かに活動を続けていたソウルズたちが、人類の導き手とな るだろう」 「そんなこと……そんなことを、私がすると本気で期待していたのですか?」 「もちろんだ。ただし、あなたの自由意志で、とは思っていない。カスパル」 カスパルがコンソールを操作すると、音楽が流れ始めた。とたんに、ヴェロ ニカは身体を硬直させた。 「グノーのアヴェ・マリアだ。あなたは地上を離れるとき、すでにこの音楽を 聞くと私の命令に従うように、識閾下に暗示を埋め込まれていたのだ。さあ、 その槍でジーザズの魂を持つ少年を刺すのだ」 ヴェロニカは涙を流しながら、懸命に後ずさりしようとしていた。だが、そ の意に反して、足は前に進み、座っているサニルに向かって歩き始めていた。 「ヴェロニカ!やめて!」サオリは叫んだ。 「サ……サオリさん」ヴェロニカは苦しげに答えた。「駄目です。止められな いのです。お願い、私を、私を殺してください」 「動くでないぞ、娘。お前を生かしておいてやるのは、私の慈悲なのだからな」 「何が慈悲よ、くそったれ!」 そのとき、不意に部屋全体が大きく揺れ動いた。ディスプレイのいくつかに 警告が表示され、けたたましく警報が鳴り出した。 「何事だ」 「高温のヘリウム/プラズマだ。まだ距離が遠いから拡散しているが、高温を 検知して防衛システムが警告を出しているんだ」 「損傷は?」 「センサーが2、3個焼き切れたぐらいだ。だが、残りが立て続けに来るぞ。 しかも、だんだん、距離は近くなってくる」 「宇宙機はどうなのだ」 「残り一機を追尾中だ。残りのミサイルを全部発射して、弾幕を張ればくい止 められるだろう」 「時間はどれぐらい残っているのだ?」 「7、8分といったところだ」 「よかろう」メルキオルはヴェロニカの方を見た。「早く刺せ。人類全ての業 を消滅させるのだ」 「間違っている!」ヴェロニカは絶叫していた。「こんなこと、絶対に間違っ ています!」 「ヴェロニカ、やめて!」 二人の叫びも空しく、ヴェロニカはサニルの前に立った。そして、槍を逆手 に握ると大きくふりかぶった。 「神よ!お許し下さい!」 次の瞬間、誰もが驚愕に打たれることになった。 つづく
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「連載」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE