連載 #5085の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「カーティスの具合を見て、ここを離れましょう」サオリは提案した。「ジャ ーランには、好きなようにやらせておいて。サニルを助けに行かなければ。こ いつがソウルズを殺したいなら、好きにやらせておけばいいわ!」 「わかりました」 すでにジャーランは、倒れているカーティスなど眼中にない様子で、ソウル ズの集団の方に進んでいた。サオリとヴェロニカは、できるだけジャーランの 注意を引かないように床を這って、血溜まりの中に倒れているカーティスに近 寄った。 「生きていますね」脈を取ったヴェロニカが、サオリの一番知りたかった事実 を明言した。「でも、出血は相当ひどいです。応急手当と輸血が必要です」 「そんなこと言っても……」 外界からの刺激に反応したのか、カーティスがゆっくりと目を開いた。 「カーティス!」 「お嬢さん……っ!」カーティスは苦痛に顔を歪めた。「そうか。ジャーラン に撃たれたんだ」 「しゃべらない方がいいですよ」ヴェロニカが警告した。「致命傷ではないよ うですが、重傷であることには間違いないのですから」 「……をくだ……」 「え?」サオリはカーティスの口元に耳を寄せた。「なに?」 「リーフを下さい」苦しい息づかいとともに、カーティスは意外とはっきり口 にした。「持ってるんでしょう?」 「持ってるけど、どうして……そうか、痛み止めね!」 サオリは肌身離さず持ち歩いていたナップサックを開くと、プラスティック ケースを取り出した。中には四つ葉のクローバーの形をしたパッチが2枚入っ ている。一枚のシールを剥がして、カーティスの首筋に貼り付けた。 「あと一枚あるわ。効果が消えたら使って」サオリは残りの一枚をカーティス の手に握らせた。 「あと一枚しかないんですか。お嬢さんにしては控えめですね」 「残りはサニルが持ってるのよ。家を出るとき、アマンダ夫人に見つかりそう になって……」 「とっさにサニル君に渡したわけですね」カーティスは嘆息した。「やれやれ」 「なんですか、それは?」ヴェロニカが心配そうに訊く。 「4リーフ。ドラッグよ。皮膚から吸収されるやつ。苦痛が麻痺するはず」 ヴェロニカの顔に反射的な非難の色が浮かんだ。 「仕方ないでしょう。非常時なんだから。習慣性も副作用もないし。それより 傷の手当をしてあげて」 サオリはナップサックから、携帯用の医療キットを出してヴェロニカに渡し た。<ジブラルタル>を出るとき、放り込んできたものである。ただし、中身 はほとんど入っていない。数枚のゼリースキンガーゼと、アスピリン、それに メンス用ナプキンだけだ。 「ちゃんと補充するのを忘れててね」サオリは弁解するように言った。 ヴェロニカが、手際よくスキンガーゼを傷口に密着させ、とりあえず出血を 止めた。ゼリーの効力が切れる120分以内に、専門的な治療を受ける必要が あるが、カーティスは先のことなど全く考えていない顔で、よろよろと立ち上 がった。 「この音楽の中に、ジャーランの行動をコントロールしているパルスが織り込 まれているのじゃないですかね」カーティスはスタッカートを撃ちまくってい るジャーランの背中を見ながら言った。 「そうかも知れません」ヴェロニカが同意した。 「となると、我々の目標を若干変更した方がいいかもしれませんね」カーティ スは反対を予期した顔で、サオリを見つめながら言った。「まずナザレ400 0を停止させるんです」 「サニルの救出は?」 「ナザレ計画が停止すれば、ソウルズたちが襲いかかってくる理由もなくなる んだろ?」カーティスはヴェロニカに訊いた。 「おそらくそうです」 「ソウルズの邪魔がなくなれば、ゆっくり探す時間が取れますよ。それに、ジ ャーランも正気に戻るでしょうし」 サオリは猛然と反論しようと口を開いた。が、いつもの叩きつけるような大 声が飛び出すことはなかった。感情を排して考えてみた結果、カーティスの意 見が理にかなっていると結論したのだろう。 「いいわ」平板な声で応じる。「そうしましょう。で?どうすればいいの?ナ ザレ計画をストップさせるには」 その問いに答えられる人間は一人しかいない。いや、ジャーランでも答えら れたかもしれないが、彼女は全てを忘れて殺戮に夢中になっている。 「ナザレ4000の機能にダメージを与える必要があります」ヴェロニカは答 えた。「計画プログラムそのものは、<ベツレヘム>内ネットワークそのもの なので、物理的に破壊することは不可能です。OSを攻撃するしかありません ね」 「本体はどこにあるんだ?」 「ハブ部分の隔離された複合コンプレックス構造群に分散されているはずです。 私は詳しいことを知らされているわけではないので、断言できませんが」 「とりあえず、ハブ部分に行くしかないようね」 「ジャーランはどうします?」 「放っておくしかないわよ」 「しかし、この通路のソウルズを全滅させたら、音楽も止んで正気に戻るかも しれませんよ」 「その心配はないみたいよ」 3人はジャーランの火線の先を見た。ちょうど闇雲にばらまかれる弾丸で、 一体が頭部を粉砕されて倒れたところだった。一拍おいて、壁の一部がスライ ドして、新たなソウルズが通路に降り立つのが見えた。 「なるほど」カーティスは奇妙に感心して頷いた。「どうやら敵も、ここでカ タをつけるつもりらしいですね。私でなくて幸いでしたね」 「どういうこと?」 「私だったら、今頃全滅させてます。ど素人のジャーランだから、多少時間が 稼げますね」 「えっらそうに」サオリは鼻で笑った。「プロの誇りってわけ?」 「まあね。子供にはわかりませんよ」 「私は子供じゃないわ!」 「あなたはまだ子供ですよ。グレイヴィル市長に叱られることを怖がっている ようじゃ、まだまだ一人前とは言えません」 微笑みながら二人を眺めていたヴェロニカが、控えめに口を出した。 「そろそろ行きませんか」 「そ、そうね。こんなところで不毛な言い争いをしている場合じゃなかったわ。 行くわよ、カーティス。怪我人だからってなまけてないで」 3人は冷静に戦い続けるジャーランを残して、その場から離れた。 つづく
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