連載 #5060の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「海、その愛」は生徒にいじめられていたイシカワに花を持たせようとテッ ちゃんのギター伴奏で彼に歌わせた。加山雄三の海の讃歌であるが、海辺に育 った不良どもへのサービスを兼ねている。二年の担任として出発して挫折した イシカワだったが、今年は一年生の担任となり、最初からやり直そうとがんば っていた。しかし三年になった悪ガキたちが一年生の目前で「逃げたくせに偉 そうにしているんじゃねえ。」と彼を挑発し、彼の自我はことごとく壊されて いく。結局イシカワはその年度の終わりに父親の後釜として工業高校へ転出し ていったが、彼の最初のクラスで一番彼に反発していた学級委員のアケミとの 恋愛沙汰を土産として残していった。ノイローゼ教師と現役女子中学生との恋 のてんまつは次章に譲る。 尾崎豊の「シェリー」とロッド=スチュワートの「セイリング」はテッちゃ んの弾き語りで、ユーミンの「リフレインは叫んでいる」はマリちゃんが歌っ た。この辺は本格的な歌唱力で会場の女生徒や母親たちを酔わせるのがねらい。 そしてトリはキンニクマンヨシダが桑田佳祐の歌を歌う。 ヨシダは体育科の教師のわりにナイーブで、これといって人に抜きん出る能 力を持っていないのに生徒に対して偉そうな振る舞いはできないと考えてい る。「サッカーならサッカー部の生徒の方がうまく、バスケットならバスケッ ト部の生徒の方がうまい。自分は陸上をやっていたが人に自慢できるほどの記 録を持っているわけではない。」という話である。そして夜遅くまで生徒の個 人ノートを読みコメントを書き入れている。しかし生徒や周りの教師は体育科 教師の彼に機敏な行動力や判断力を期待しているので、彼の地道な努力はほと んど報いられていない。私たちはそんな彼に一皮むけてもらいたくメインボー カルを割り振った。ヨシダは最初、気が乗らなさそうにしていたが、いざ練習 を始めてみるとスポーツマンの持つリズム感の良さでけっこうパワフルでいい 味を出すようになった。 「リンダリンダ」は当時爆発的に売れていたブルーハーツの曲をアンコール 用に用意した。生徒らのバンドはブルーハーツのコピーが多かったのでエンデ ィングは生徒らを交えたセッションで締めようという意図である。 『自由発表』前日の夕方、街の楽器店からレンタルしたアンプやスピーカー などの機材が到着した。出演する教師たちが一人五千円ずつカンパしてコンサ ート用機材一式を二日間借り受けたものだが、かなり本格的なものがトラック で運ばれてきた。ぼくらは「何か楽しいことはないか」とうだうだしていた不 良たちに手伝わさせて機材をセット始める。彼らのうちの何人かはバンドを作 っていたが、そう簡単にギターが弾けたりドラムが叩けるようになるものでは ない。その辺を見越してぼくらは彼らを裏方として使う。『ウッドストック』 の警備をヘルスエンジェルスたちが行ったのと同じ流れだ。ステージの両サイ ドにスピーカーを積み上げ、ギターアンプを背後に置き、ボーカルマイクを四 本ほどセットし、ミキサーを使って一つ一つマイクテストをしていく。コンサ ート前の何とも言えない高揚感。一グループ二十分の持ち時間でリハーサルを させた。そして、生徒たちを八時頃に帰宅させ、近くのレストランで夕食を摂 った後、教員バンドがビールを飲み飲みリハーサルを行った。体育館全体を震 わせる音響で十二時近くまで最終チェックを行ったが、周りに民家が無いため 苦情もこない。町中の学校では信じられない話である。 本番当日、『自由発表』は三年女子生徒のファッションショーから始まった。 制服やら体育ジャージやらを訳の分からない取り合わせで着こなしてシナを作 るが、まあ正視できるものではなかった。その後、生徒のバンドが四組ぐらい 出演したが、キーボードとドラムとベースギターの組み合わせとか、ベースギ ターとボーカルだけとか、不良がドラムを一回叩いて終わりとか、そんなもの であったが、観客の母親たちはそれでも一緒になってこぶしを振り上げ振り上 げ踊っている。町内のお祭りの演芸大会のノリである。 さて我々教員バンドの演奏であるが、マイクセッティングの時から会場がシ ーンと静まって何とも異様であった。朝礼の時など静かにさせるのにずいぶん と手間取るのだが、こちらがまだ準備中なのに水を打ったように静まっている。 それにぼくのオカリナ演奏がトップなので、ぼくとしては余計に緊張してしま う。それでも何とか演奏を終え『自由発表』は行事として成功したようであっ た。これをきっかけとして教師と生徒の間の壁も徐々になくなり、学校全体の 雰囲気がほのぼのとしたものになっていった。
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