連載 #5042の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「ソウルズのマークよね?これって」 サオリの言葉も耳に入らぬまま、カーティスは恐る恐る、自分の握っていた スタッカートをひっくりかえした。ストックの同じ場所に、同じデザインのマ ークが浮き出している。 「そんなばかなことが……まさか……」 「ちょっとカーティス、カーティス・ブランダッシュ!」 サオリの怒鳴り声に、カーティスは我に返った。 「すみません。お嬢さん」 「何よ、ソウルズがそんなに怖いの?」 「私の世代では、ソウルズの恐怖は条件反射みたいなものですから」カーティ スは苦笑を浮かべようとしたがうまくいかなかった。「すみません。でも、あ なたには分かりませんよ、お嬢さん」 「でも、戦争のとき、あなたはまだ子供だったんじゃないの?」 「私の家族は<ジブラルタル>移住の最終組だったんです。軌道エレベータに 乗った日、戦争……俗に言うホーリーストームが始まったんです。何とか軌道 ステーションまで無事に到着できましたが、戦争の混乱でシャトルが出るのが 6日ほど遅れましてね。おまけにステーションにも、ソウルズが何人か潜入し ていて破壊活動を始める寸前でした。幸い、阻止されましたが。それでも銃撃 に巻き込まれかけました。生きた心地はしなかったですね」 「家族はいなかったんじゃなかった?」 「ええ。そのときの混乱で母と弟を失いました」カーティスは淡々と答えた。 「父親は5年前に病死です」 「気を悪くしたらごめんなさい」サオリは横を向いた。 「いいんです」 「でも、そうすると何?ここはソウルズのステーションなの?確か、全部破壊 されたはずだけど」 「私もそう聞いてましたがね。たとえ、ホーリーナイトの混乱で見逃されてい たとしても、30年の間には発見されて破壊されていてしかるべきです。お嬢 さんでも発見できたぐらいだから、プロのサーチャーや、航宙管制官が見逃す とは思えませんしね」 カーティスはスタッカートを構えると、慎重な足取りで可能な限り急いで通 路を進みはじめた。その後を小走りに歩きながら、サオリが訊く。 「あたしたちより先に、ネオ・ソウルズが見つけてて、武装したのかもしれな いじゃない」 「不可能でしょう。ネオ・ソウルズは潜在的な者も含めて、厳重に監視されて いますからね」 「母さんは特に厳しくしたわね」サオリは軽蔑したように鼻を鳴らした。「そ の基準を。議会に提出した要監視者法規修正第6条は否決されたけど」 「全てのコロニーの市長にとって、第二のジン・バーソロミュー誕生は、最大 の悪夢ですからね。特にグレイヴィル市長が厳しいということにはなりません よ」 「雇い主だからって、かばうことないのよ、カーティス」 「別にかばっているわけではありませんよ」 「まあどうでもいいわ」サオリは本当にどうでもよさそうに答えた。「ところ で、あの人間もどきたちは何なのかしら?ソウルズの兵士なの?」 「おそらく。ですが、そうだとすると不思議ですね。軌道上ステーションに兵 士を配置しておいても、たいして役には立たないと思うんですよ。ここが軍事 用途で建造されたとしたら、もっと固定武装で固めてあるはずです。そもそも 火器管制官、航宙管制官、施設維持要員、それに駐留兵力や技術兵を入れても 通常は30人から50人というところです。何の目的があって、700人以上 の兵士を置いておかなければならないのか、理解に苦しみますね」 「どこかのコロニーを奪取するとか」 「それなら、プラットフォームに強襲揚陸シャトルぐらい用意されているはず でしょう」 「用意するのを忘れたのよ、きっと」 思わずカーティスはため息をついた。 「あなたみたいに全てを楽天的方向に考えられたら、人生はもっと楽しいんで しょうね」 「何それ?皮肉?」 「いえ。言ってみただけです」 「そこよ」唐突にサオリは、数歩先に開いているドアを指した。 ドアには何の表示もなかったが、武器庫であることに疑いの余地はなかった。 そこにはスタッカートをはじめとして、対人地雷、グレネードなどの兵器がず らりと並んでいた。 奥には小さなカウンターがあり、ターミナルが2つ設置されていた。ジャー ランは片方のデータグローブに両手を埋め、ヘッドマウントディスプレイで顔 の半分を覆って、一心不乱に何かにアクセスしている。二人が入ってきたこと に気付いた証拠に、かすかに首を傾けたものの、言葉をかけようともしない。 「ジャーラン」サオリが顔をしかめて声をかけた。「何かわかったの?」 「ごめんなさい。今、ちょっと手が離せないの」 たったそれだけの言葉を発する時間も惜しむように、ジャーランはものすご い早口で答えると、再びデータの流れの中に戻っていった。サオリは少なから ずむっとしたものの、弟の手がかりの探索を中断させてまで、自分の不興を表 明しようとは思わなかった。 カーティスはというと、きれいに兵科ごとに分類されて並べられた兵器の数 々を調べている。その顔に奇妙な表情を浮かんでいるのを見て、サオリは近寄 っていった。 「どうかしたの?」 「いえ、少し偏っているんですよ」 「何のこと?」 「対人兵器しか置いていないんです」 「それのどこが悪いの?」 「悪くはないんですがね。これらの兵器が攻撃用であるにせよ、防御用である にせよ、歩兵に対しては充分すぎるほどです。ただし、敵にある程度の装甲防 御兵装があれば、ここにある火器では制圧は困難でしょうね」 「つまり何が言いたいのよ」 「ここの兵器群は軍隊を敵と想定したものではない、ということが言いたいん です。この装備では、コロニーのポリスでも撃退されてしまうでしょう。こん なずさんな発注をすれば、後方勤務兵長あたりの首が飛びますよ」 「ソウルズの……というか、ソウルズが残したものなんでしょ?」 「それは間違いないですね。大抵の銃器やナイフには、ソウルズサインが付い ていますから」 「ふうん。確かにヘンね。何なのかしら。やっぱり、コロニー侵略用だったん じゃないの?ホーリーナイトのせいで、計画が中断されたままになってたとか」 「まあ、そうかもしれませんがね……」カーティスはなおも、納得できないま まに首をひねった。「重火器が一つもないというのは……」 そのとき、ジャーランが大きく息を吐き出しながらHMDを外した。 「おもしろいことがわかったわ」ジャーランはどこに隠し持っていたのか、ミ ントバーを口に放り込むと、包みをくしゃっと丸めた。「ねえ、何かバー持っ てない?」 「おもしろいことって何よ?」サオリはジャーランの2つめの言葉を無視して 訊いた。 「うん。このステーションは、あのホーリーソウルズが極秘に建造したものら しいの」 「そんなことぐらい、とっくにわかってるわよ」サオリはがっくりと肩を落と した。「もっと他に役に立つデータはなかったの?」 「たとえば?」 「サニルの居場所とか、脱出する手段とか」 「サニーの居場所はまだわからないわ。脱出する手段も同じ。というより、こ このナザレってOS、そういうことの管理はしてないみたいなの」 「ステーション統括OSじゃないの?」 「そうよ」 「じゃ、なんでわからないのよ。訊き方が間違ってるんじゃないの?」 「あたしは間違ってないわ」ジャーランが珍しく感情を露にした。といっても、 サオリの感情表現と比べれば控えめすぎるほどだったが。「そもそも、このス テーション<ベツレヘム>は、軍事ステーションとして使用する目的で建造さ れたんじゃないの」 兵器を物色しながら耳を傾けていたカーティスが、興味の色を浮かべて訊い た。 「その目的とは何なんだ?」 「ナザレよ」 「はあ?」 「内容はわからない。わかったのは、この<ベツレヘム>は、ナザレ計画とい う計画を遂行するために建造され、ナザレ4000というOSはノーマルな施 設統括OSじゃなくて、ナザレ・プランに特化したOSだってこと」 つづく
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