連載 #4949の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
登校拒否を直そう ノイローゼになって学校に来れなくなったイシカワは間の悪い男で、昨年教 員採用試験に受かり、生徒の質も良く落ち着いている学校への配属が決まって いながら大学の単位を一つ取り損ねたために留年し、今年採用試験を受け直し て額田中に配属された。ボンボン育ちの彼を田舎の悪ガキたちは大いに振り回 し、約二ヶ月でダウンとなった。そんなイシカワも七月末の職員慰安旅行には 参加し、「二百万貯金したら結婚する。」だの「女は包丁三本使いこなせなき ゃダメだ。」だの異様な明るさだった。九月からは仕事にも復帰できた。旅行 の時の明るさはすぐに消えたが…。 「人助け?」が趣味のぼくは、彼の心を鍛えるためにムラさんを隊長とした登 山パーティを結成し、「敬老の日」前後の連休を利用して北アルプスへのリハ ビリ登山を行った。パーティ名は「額田解放教わがままクラブ」。隊長ムラさ んの他、スズやん、テッちゃん、イシカワそしてぼくが隊員である。「額田解 放教」とは、当時ニューエイジ思想に凝っていたぼくが作ったミニ宗教団体で ある。約三ヶ月で自然消滅したが、そのアウトラインを次章に記しておく。(な ぜ消滅したかというと、スズかんの奥さんが入会申込みをしてきたので、ぼく がビビッてしまったからである。) 一九八五年九月十五日、白馬岳の大雪渓の真ん中を異様な男たちがかけ声を かけながらアイゼンも付けずに登っていく。 「オレたちゃヌカーダカイホーキョー。ノイローゼなんか怖くない。お山の天 気は快晴だ。あ、それ、ワン、ツー、ワン、ツー、スリー、フォー、オレたち ゃヌカーダカイホーキョー。−−−−」 雪渓の脇を黙々と登っていく登山者たちは、場違いの躁病者たちを白い目で 見守っている。ぼくら「額田解放教わがままクラブ」は本来慎重であるべき雪 渓をハイピッチで登り、疲れると雪の上で下界を見下ろしながらビールを飲ん だ。 「ご隠居、下の方からえらくめんこい娘が登って来ますぜ。」とテッちゃんが 枕を振れば、ムラさんがすぐに受ける。 「これ、八兵衛。おまえは食いしん坊だけでなく女にも目がないのう。弥七、 あの娘をちょっと連れてきなさい。」 そこでぼくが、「お代官様、お代官様もなかなかのワルですなぁ。」と言う と、ムラさん、「何を申す、上州屋。おまえほどでもないわ。これ、娘。おと なしく言うことを聞け。騒いでも誰も来ぬわ。」てな具合で即興の水戸黄門が 演じられたり、「むかーし、昔。ある村にイシカワというおそろしく女好きな 男がおったそうな。」と日本昔話が語られたりする。 そんなばか話をしながら、ぼくらはほろ酔い気分で大雪渓を軽く登りきった が、白馬岳山頂に近づくにつれ気圧のせいかアルコールのせいか頭痛やめまい に襲われ、最後は這いずるようにして山頂小屋にたどり着いた。それでも翌朝 のご来光は美しく、惑星的景観として隊員一同感動をもって迎えることができ た。 この旅行でイシカワは実力ある同僚の友達ができ、登校拒否からは立ち直る ことができたが、別の蟻地獄に落ちることになる。ぼくとテッちゃんとイシカ ワは毎晩のように飲み歩き、一年半後、イシカワが工業高校に転出するまで三 人の月給のほとんどが飲食費となり、ぼくの体重は一冬で五キロ、イシカワの 体重は十キロ増加した。(テッちゃんは一日三回食後すぐ排泄するので太らな い) またイシカワのプライバシーはすべて酒の肴になり、悪い先輩にしゃぶり尽 くされた。その内容は別の章に譲る。 ..
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