連載 #4832の修正
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レギュラーシーズン、第10週。 西村は、例によってインターネットで今日の試合結果を取り出すなり、めぐみの 職場にダイヤルした。やっと、ついに、とうとう、待ちに待った、待ちくたびれた、 ファルコンズの初白星が出たのだ。しかも、結成2年目にしてプレイオフに出よう かという絶好調のパンサーズ相手にである。今年のファルコンズが勝利を上げると すれば、第13週のベンガルズ戦辺りだろうと、西村も水上も正木も思っていたの に。 ともかくこれでファルコンズは、バッカニアーズ、ジェッツと並んで1−8。チー ム状態から考えてもここからの大躍進というのは考えにくいが、16試合しかない レギュラーシーズンで、今週負けていれば負け越し一番乗りという悲惨を味わうと ころだったのだ。 電話がつながった。神林めぐみにつないでもらう。 『はい、神林です』 「めぐみ?俺、西村」 『何だ。どうしたの?』 「ファルコンズが勝ったぜ」 言いながら西村はマウスを操作して、ファルコンズ対パンサーズの試合の詳細を 呼び出す。 『え?』 「だから、ファルコンズが勝ったんだよ」 『うそ』 めぐみも、にわかには信じがたいらしい。試合の詳細をかいつまんで説明してや るまで、たっぷり5分はかかった。 ようやく奇跡を受け入れためぐみが電話を切り、西村はやっと、自分が応援する ジャイアンツの試合結果を見る気になった。 タバコをくわえ、Giants-Cardinalsをクリックする。3勝5敗同士の地区内対決 の結果は... 「勝ってるじゃんか」 ジャイアンツがタッチダウン1、フィールドゴール3で16対8とカージナルス を下していた。ジャイアンツはこれで2連勝で、地区最下位を脱した。来週の相手 は、今週ファルコンズに負けたパンサーズとの地区内対戦。これで勝てば勝率5割 復帰である。 「もしかしたら、けっこう行けるんじゃないか?」 一方水上チーフスは、ミネソタに乗り込んでのバイキングス戦であった。地区優 勝するためにはこれ以上ブロンコスから離されるわけにはいかない。そんな意気込 みの前には、開幕ダッシュしたバイキングスといえども、司令塔ムーンを欠いて勝 つことはできなかった。結果、21対6でチーフスの勝利。負け数の差を1として、 マンデーナイトのブロンコスatレイダーズ戦の結果を待つ。 そのブロンコスはここまで、開幕3連勝の後チーフスに負け、やはり今年もここ までかと思った翌週からいつの間にかの4連勝であった。第9週を終わって、2位 チーフスに2ゲーム差をつけて7勝1敗。一体、誰がこんなブロンコスを予想した だろう。 しかし、真価が問われるのは第10週、今日のアウェイでのレイダーズ戦であっ た。今季レイダーズは最悪の出来であるが、問題はブロンコスに苦手意識がないか、 である。レイダーズが古巣のオークランドに再移転する前、ロサンゼルス・レイダー スであった頃、ブロンコスはとことん、アウェイでは勝てなかった。あのロサンゼ ルスのメモリアルコロシアムは、ブロンコスにとって正に鬼門であった。が、去年 の最終戦であったオークランドでの試合は、わずかにフィールドゴール一本の差で ブロンコスの勝利。 団体戦か個人戦かを問わず、勝負の世界で勝ち上がるには苦手はいない方がいい のはアメフトに限らない。絶不調のレイダーズをここで叩いておけば、目の上のた んこぶが一つ取り除ける。ブロンコスは、レイダーズに負けてプレイオフにいけな かったとか、プレイオフに出てレイダーズに負けたとか、とかく恨みのあるチーム である。 余談かもしれないが、スーパーボウルでは過去10年以上、NFC代表が勝利を 収めている。最後に勝ったAFCのチームはロサンゼルス・レイダーズであった。 この間3度、ブロンコスはスーパーボウルに出場しながらNFCのチームに負けて いる。「レイダーズに勝ってスーパーボウルに行き、初優勝する」というのは、ブ ロンコスにとってある意味で究極の命題なのかもしれない。 マンデーナイトゲームは、その週の目玉となる好カードが組まれるが、今週は久々 の好ゲームとなった。 ブロンコスの自陣20ヤードからの攻撃で試合が始まったが、最初のプレーでエ ルウェイはパスを失敗。続くプレーもパスを試みたが、これをレイダーズのリンチ がいきなりインターセプト。レイダーズはこれをタッチダウンにつなげ、試合開始 3分で0対7と先制した。しかしブロンコスも第1Q終了前に、エルウェイからシャ ープへのタッチダウンパスが決まって、7対7の同点。 第2Qは、レイダーズが勝ち越しのフィールドゴールを狙ったが失敗。直後にブ ロンコスがフィールドゴールを決めて10対7と逆転、前半終了前にさらにフィー ルドゴールを追加して13対7とした。 第3Qは双方とも決め手を欠き、パントの蹴り合いに終始して無得点。6点差の まま最終第4Qに突入する。 第4Q、自陣34ヤードからのブロンコスの攻撃は、エンドゾーン手前10ヤー ドまで攻め込むが、レイダーズも踏ん張ってタッチダウンを許さなかった。フィー ルドゴールに終わって16対7。続くレイダーズの攻撃は、QBホステトラーがテ ンポよくパスをつないで、7プレーでタッチダウンを返した。これで16対14。 さっきのブロンコスの攻撃がタッチダウンだったなら、そこで勝負がついていたか もしれないのだが、これで試合はわからなくなってきた。 次のブロンコスの攻撃は、一度もファーストダウンをとれずパント。このパント が飛距離が出ず、レイダーズはハーフウェイライン手前の自陣46ヤードからの攻 撃となった。ホステトラーは最初のプレーでクロケットへ12ヤードのパスを通し、 ブロンコス陣内に入る。次のブラウンへのパスは一気に42ヤードを突き進み、わ ずか2プレーでタッチダウン。試合時間残り5分というところで、レイダーズが16 対21と逆転した。 俄然盛り上がる、地元レイダーズファン。今日レイダーズがブロンコスに勝てば、 ブロンコス7勝、チーフス6勝、レイダーズがチャージャーズとともに5勝となり、 残り7試合でレイダーズにも十分に地区優勝の可能性が出てくるのだ。しかもブロ ンコスの得点はここまで、最初の第1Qのタッチダウン以外すべてフィールドゴー ルである。得点差は5点。フィールドゴールでは再逆転できない。 がしかし、ブロンコスのエルウェイも、だてに「ミラクル・エルウェイ」とか「 ミスター・カムバック(逆転野郎)」とか呼ばれているわけではない。 自陣27ヤードからのブロンコスの攻撃は、伝家の宝刀・ショットガンフォーメー ションであった。W.ムーンのラン&シュートやJ.モンタナのニッケル&ダイム と同様、エルウェイの必殺技である。のってしまうと誰にも止められない。 果たしてエルウェイは、最初のパスは失敗したものの、ミラーへの13ヤードパ スとスミスへの11ヤードパスで敵陣に侵入。2回のパス失敗の後、スミスへ49 ヤードのロングタッチタウンパスで22対21と逆転したのである。6回のプレー はすべてショットガン、73ヤードを前進するのに要した時間はたったの47秒だっ た。ブロンコスのベンチが沸き上がる。 タッチダウンの後のエキストラポイントは、キックではなく2点コンバージョン を狙いにいった。逆転したとはいえ、試合時間は4分強も残っている。ここでキッ クを決めて1点追加しても2点差となり、フィールドゴールで逆転されてしまうの だ。一方2点コンバージョンを失敗すれば1点差のままで、フィールドゴールで逆 転されるという意味では2点差と変わらないが、成功すれば3点差となりフィール ドゴールを決められても同点にしかならない。 がしかし、エルウェイからスミスへのパスは失敗し、点差は1点のままとなった。 今度はレイダーズのベンチが盛り上がる。次のブロンコスの攻撃が、得点が不可能 なくらい時間が少なくなるように、残り約4分をぎりぎりまで消費しながら前進し てフィールドゴールを決めれば、レイダーズの勝利となる。 ブロンコスのイーラムのキックオフを自陣16ヤードでキャッチしたレイダーズ のキッドは、これを自陣26ヤードまでリターンした。ここからレイダーズの最後 のドライブが始まる。残り時間4分14秒。 まずホステトラーはウィリアムへの17ヤードのパスを成功し、1発でファース トダウンを更新。 自陣43ヤードからのプレーはノーハドルオフェンスだった。が、ホッブスへの パスは失敗。2ndダウンもノーハドルで攻撃するが、ブラウンへのパスも失敗。 次はハドルを組んで、作戦を確認してからショートバスに出たが、ブラウンはパ スキャッチしてから走ることができず、進めたのはわずかに4ヤードだった。 4thダウン、残り6ヤード。自陣47ヤードで残り時間は3分14秒。ここで レイダーズは後半2度目のタイムアウトをとり、作戦を練る。レイダーズの選択肢 は二つだ。 4thダウンギャンブルに出る場合、成功すれば逆転勝利の可能性は高くなる。 しかし6ヤードを一発で前進しなくてはならず、失敗すればレイダース陣内のこの 地点でブロンコスの攻撃となり、たとえブロンコスの前進をくい止めても、最後に ブロンコスがパントを蹴れば自陣深くから攻撃しなければならない。 ギャンブルに出ないでパントを蹴った場合、蹴ったボールがブロンコス陣内深く で止まれば、ブロンコスの攻撃を止めやすいし、パントを蹴られてもフィールド中 盤から次の攻撃を再開できる。 レイダーズのオーナー、アル・ディビスが直接指揮を執っていれば、あるいはギャ ンブルに出たかもしれない。しかしレイダーズのベンチが選んだのはパントだった。 ゴーセットの蹴ったボールは、しかし期待されたほど奥へは飛ばず、ブロンコス はこれを自陣35ヤードでフェアキャッチ。レイダーズのディフェンスのがんばり 次第という展開になり、タイムアウトで時計を止めたりもしたが、ブロンコスはラ ン攻撃2回でファーストダウン獲得し、この時点で残り2分。 後はエルウェイが、無理に前進することを考えずに時間をたっぷり使っていって ゲームオーバー。22対21でブロンコスが宿敵を敵地で倒したのであった。 レイダーズが、もしノーハドルオフェンスでなく慎重に攻めれば4thダウン6 ヤードにならなかったのではとか、もし4thダウンでパントを蹴らずにギャンブ ルしていればとか、結果論ではいろいろ出てくるだろう。しかし勝負に”たら・れ ば”はないし、仮にそうしていたとしても勝てた保証はない。 残ったのは、8勝目のブロンコスに対し、4勝のレイダーズが追いついて地区優 勝という可能性はほぼ完全に消えたという事実だけである。 1位:ブロンコス 8勝1敗(地区内4勝1敗) 2位:チーフス 6勝3敗(地区内4勝2敗) 3位:チャージャース 5勝4敗(地区内3勝3敗) 4位:レイダーズ 4勝5敗(地区内1勝3敗) 5位:シーホークス 4勝5敗(地区内1勝4敗) 次週(第11週) ブロンコス 対 ベアーズ (ブロンコスのホームゲーム) チーフス 対 パッカーズ (チーフスのホームゲーム) ファルコンズ 対 ラムズ (ラムズのホームゲーム) ジャイアンツ 対 パンサーズ (パンサーズのホームゲーム) −To be continued.− <<註>> インターセプト パスインターセプトやファンブルリカバー(相手の落としたボールを確保するこ と)といった、攻撃側が予期せぬ場面でボールを守備側に奪われ攻守交代となるこ とをターンオーバーといい、試合の流れを大きく左右する。ましてや、ターンオー バーで得た攻撃権でそのまま得点すると、やられた側は非常にダメージを受ける。 ショットガンフォーメーション 散弾の様にワイドレシーバーがフィールド一杯に散開するフォーメーション。パ ス攻撃を重視し、一発で長い距離を前進できる。日大フェニックスのかつての黄金 期は、このフォーメーションを得意とするハイパーオフェンスが猛威を振るったこ とによる。 ノーハドルオフェンス 攻撃側が、1プレー終わるごとに組む円陣をハドルといい、ここでQBやベンチ からの伝令が次のプレーを指示する。残り時間が少ない場合などは、ハドルを組む 時間を省くためにQBからの暗号で次のプレーを指示することがあるが、これをノー ハドルオフェンスという。守備側に迎撃体制を整える間を与えないために、残り時 間に余裕があってもノーハドルで攻めることもある。 フェアキャッチ パントやキックオフのをレシーブする選手が、レシーブ前に手を挙げてリターン しない意志を表示した場合、その選手にタックルできない。蹴った側のダッシュが 早い時や、絶対に落球の危険を冒せないシチュエーションによくある。エンドゾー ン内でのフェアキャッチは自陣20ヤードからの攻撃になる(タッチバック)。 余裕があるときにフェアキャッチすると"Kiss your sister."とか言われてしま う(書けないようなひどいブーイングが出ることも・・・)。
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