連載 #4190の修正
★タイトルと名前
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サイの河原の物語 昔も今もサイの河原に善人悪人の関わりなくて、一度死んだ者が参る都でご ざいます。 * * * * * * * * * 死者といっても、いろいろ死に方ありまして、最初のバッター自殺といいま す、自殺は自分で死んだ者のことでございます。首つり、身なげにガソリンぶ っかけ火をつけてすべて自分で殺しまする。 セカンドバッター、他殺といえば、他人様に殺されまする。腹を刺されて痛 いといってすぐさま遺体にならずに板を転げまわり出血多量で死ぬことも、こ れも天命他殺になる定めになっておりまする。ぐぎゅっと首を絞められて特別 仕立ての化石製造機、コンクリートの棺桶そのままで海に放りこまれることも ありまする。いろいろ殺され方がありますけれど、自分の意志とは関係なくて、 他人様から殺されまする。これが他殺と云いまする。 なにを好んで、自分の手首に傷を入れて、人様殺せば、犯罪者、お手手に縄 をかけられて、別荘入れば麦まんま、米を食べるの嫌いであればいいませぬ。 だけど人間、うまいものは食べたかろ、人を殺して曵き回し、好んで麦のま んまを食べる者、誠多いは 不思議なものでございます。 * * * * * * * * * それにしてもおかしなことは、生者もいつかはみな死んで、みんななかよく あの世行き、生きてる間に、自殺のマニュアル、他殺のマニュアル買いまして、 殺し殺され方の勉強よ。みんな死ぬもの遅い早いはありますものを、たった数 年数十年、地球の年月比べりゃあっというまでございます。どうせ死ぬもの、 慌てることはないものを、それが本読み楽しんで、そんな本がベストセラー、 なんと不思議な現象、ああ楽し。 * * * * * * * * * 心の臓のポンプがとまり、脳の中には血がいかず、医師は聴診機から手を放 し、家族のみなさまご臨終、何時何分死にました。云う事いって看護婦残し、 さっさと医局へ帰ります。 医者のスタンプつきまして、近くの市役所行きまして、生きてたものは死者 となり、戸籍にゃ鬼籍に入ります。 どこで聞きつけたのか葬儀屋さん、ご愁傷様とそう云って、見知らぬ家に上 がり込む。なんまいだあと呪文と唱え、死んだものへお線香、じゅけむじゅ げむと手と手をあわせ、残った遺族にご相談。死んだものには愛情で、ここぞ とばかりと張り込んで、桐の箱くりゃ儲けは多い、ベニアの板じゃ懐寒い、で きれば桐がいいですとにやけた心でそういって顔は親切ご用心。 葬儀屋のおつぎの選手、紫茶色のささかけて、頭はつるつるぼうさまよ。髪 の毛なくし、現世の迷いをたって、表は賢人ごくろうさん。広い墓場のいらぬ 墓、中の無縁仏を一つにまとめ廃品回収出したあと、あらまあ墓は駐車場には やがわり、それでも残る大きな墓場、有効利用はないものか、子供のために遊 び場創り、親から育児の金とって、がっぽがっぽと大儲け。 戒名つけるに位がいって、よい戒名位はは高い、ついてにお金も高いので、 迷った遺族の心の隙に、よい位にしましょう、あちらの世界のさとりを唱え、 じゅげむじゅげむと念仏唱え、手と手をあわせて、合掌よ。 禿げた頭のさとりを開いたくそ坊主、頭すっきり脳味噌ずっしり、念仏とな えて、そろばんはじく、今日の収入いくらかな。 坊主はじゅげむじゅげむの念仏唱え、手には棒持ち、木魚を叩く、木魚は痛 いとぽくりと哭いて、叩く木魚に哭く木魚、あわせてぽくりぽくりと音がして、 死人はぽっくり死んでいた。 * * * * * * * * * 残った遺骨に泣く遺族。パパさん若死に子供は残る、ママさんがんばりパー トにでかけ、二人の生活きりつめて、残ったお金を使おうと心に誓い、ぴんぽ んぱーん。玄関でかけて見れみれば、どこかのわからぬ見知らぬ婆あ、生前パ パさん世話になり、この度死んだと聞きまして、少しだけでもお焼香。それで は、どうぞとママさんいえば、汚れたくつしたどだどだあがり、おくさんこれ からたいへんと、涙ながらに話しては、人情話しに花が咲く。婆のかばんの中 にゃ、目薬をそっとしのばせ婆がなく、ママさん、ママさんがんばろう。みん なこれも先祖が悪い。先祖が悪けりゃ若く死ぬ。パパさん死んだもこれがため、 このまましとけば子にかかり、子供も若死のソンと云う。 ママさん、びっくりどうしよう。おろおろするだけ、パパおらず、パパさん 死んでパパおらず、おろおろおろおろどうしよう。それを見ていた婆さんが、 そんな心配ありません。目薬さして、婆が云う。わたしの宗教幸福教、幸せ売 って大金貰う、とっても楽しい幸福教、田畑売って金作れ、パパさん保険があ るだろう。銀行行って金おろせ、証券すべて金にしろ、それでも足らぬ、どう するか、それではこの家売って金作れ。目薬さして婆が云う。 子供可愛さ、ああ哀し、ママさん、子供大事な宝、婆の云うことまに受けて お金を渡して、ごくろうさん。婆は受け取りにっこり笑う。これで先祖の崇り はなくなった。ついでに屋敷もなくなって、これから生活野宿になって、誰も 助けにこやしない。 冬のある日にママさん、子供はね、カチンコチンになっていてあちらの世界 に行っちゃったぁ。 * * * * * * * * * ようやく死んで、火葬が終わり、四九日も過ぎまして 死人はサイの河原に 渡ります だけど現世のことが忘れずに あたりをうろうろさまよって 石を つんでは父のため、石をつんでは母のため 石を積んでる子どもの横で死んだ 大人がおりまする。 鬼さん鬼さんこんにちはわたしは昔大臣で、これこれ位におりました。別荘 もって、金もってこんなにわたしは偉いです。だから鬼さんわたしのために早 く船をだしてくれ。 鬼さんじろりとにらむことにゃ、それじゃこれをくださいな。大きなお手の 親指出して、人差し指とあわせます。 死んだ大臣、大笑い、地獄の沙汰も金次第、それじゃこれだけ渡しましょ。 白い着物の袖をつかみ、中から差し出す札の山、大きな鬼の手に渡そうと札束 出したとたんにね。ぱっと真っ黒真っ黒け。 これはこれはどうしたことか。死んだ大臣目をまわし、目の前黒い札束みた よ。ポンと叩いてわかったぞ。これはお棺の熱でぱっと焼かれてこうなった。 それでは金はなしではね、地獄に行くしかございません。鬼さん、素面でそ ういった。 * * * * * * * * * 人間死ねばぁ、みな同じ、金を持っても、灰となる。生き物すべては土とな る。あら、ほら、さっさ、エントロピーの申し子よ、生き物すべて死者となる これは、まさしく誠の真理でございます。 大舞 仁
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