連載 #4027の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
5 その夜私は早くに寝所へ戻った。私をなおも歓待したがるこの城の善良な 人達には、昼間の狩で少し疲れたのだと言っておいた。ホレイショ嬢のすが るような顔に良心が痛んだが、あえて彼女に言葉はかけなかった。彼女には 私などよりももっとふさわしい人がいるに違いない。 長椅子に横になって酒を揺らす私が考えるのは彼女、エセルのことだった。 あんな場所に3年も...かつては彼女が笑い、草原を駆けた時もあったの だろうか。明るい日射しの元で花を摘む彼女を私は想像できなかった。私は ゆっくりと立ち上がると、寝椅子にかけてあった上着を羽織った。もう一度 彼女に会いたい。会って話をしなければならない。 「お出かけかしら。」 「ホレイショ嬢」 廊下に出た私を待っていたのは、黒髪の少女だった。彼女は私の横をすり 抜けると部屋の中に入って来た。 「エナよ。私はあなたにとってホレイショ侯爵の娘ってだけなの。」 「ではエナ、こんな遅くに何か御用ですか。淑女のなさることではありませ んよ。」 私は精一杯しかめつらしい顔をしてみせた。 「まあ、お固い。昨日はあんなにお優しかったのに。」 「昨夜は失礼致しました。なにぶん酔っていたもので。」 エナは私が先ほどまで座っていた寝椅子に座ると、私の酒を口に含んだ。 「私酔っていますの。昨夜は陛下に、今夜はお酒にね。」 「エナ、お帰りなさい。父上に言いつけますよ。」 エナは喉を見せて笑った。精一杯大人びて見せようとする彼女に、私は苛 立ちを募らせていた。彼女の持つグラスを奪うと、酒を注ぎ向いの椅子に座 って私は酒を喉に流し込んだ。 「私、お友達と賭をしましたのよ。今夜を私が自分のベッドで過ごせば私の 負け。陛下のベッド過ごせば私の勝ち。お優しい陛下は私に恥をかかせたり しませんわよね。ホレイショ家の家名に傷が付けば、父が悲しみますわ。」 するとしつけのなってない小娘どもが、酒に酔ったエナをけしかけたのだ。 「お帰りなさい。」 「では私が帰ったら、陛下はどなたと過ごされるのですか。」 私は苛立ちに、眉間にしわが寄るのを感じた。 「エナ」 「メディセル様ですか。あの方はいろんな殿方と遊んでいらっしゃるのです よ。陛下はご存じなのですか。」 「そんな事はどうでもいい。私と彼女は何の関係もない。」 「ではエセル様ですか?」 私の心の中に彼女への凶暴な感情が生まれた。私は緊張と興奮のないまぜ になった、エナのぎこちない笑みを前に、その感情を必死で押さえつけてい た。しかし彼女が次の言葉を発した時その憎しみは瞬時に凍り付いた。 「エセルは魔女です。」 「どういうことだ。」 私のきしるような言葉に、酔ったエナも私の怒りを感じたのだろう。とめ どなく喋り始めた。 「エセルは魔女です。この城の者は皆知っています。昔私達の王、自分の父 をたぶらかせて、罪を起こさせたのです。」 「真夜中に城壁の上で悪魔と話すエセルを皆が見ています。牢屋に入れられ たエセルの部屋には、忌まわしい道具が山ほど見つかっています。」 「悪魔などと、ばかばかしい。それをこの城の皆が信じたというのか。」 この小娘は自分の言っていることを判っているのだろうか。私は先ほどま で共に酒を酌み交わした、この城の開けっぴろげな人々を思い浮かべた。私 の不審を感じ取ったのだろう。エナはあわてて続けた。 「ゲオルグ殿下もエセルが魔女であると認めたのですよ。」 私は知らないうちに彼女の頬を張っていた。 赤くなった頬を押さえたエナは、止める間もなく部屋から出て行った。 つづく by カズキ
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