連載 #4023の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
こんにちは。伊井暇幻の双子の弟(という設定の)夢幻亭暇幻学こと久作です。 兄のイーカゲンは人のことを考えずに勝手気侭に訳しているようです。あれでは 読者に不親切だと思います。よって此処で、伊井暇幻訳・南総里見八犬伝に対し 解説を加えることにしました。ただ、血は争えず実は私も読者に対し必ずしも親 切ではありませんので、予め御了承下さい。 五行説:フレッシュボイス上で、久作が何か云っていたようですが、この点に就 いては連載終了後に随想の形ででも詳らかにしたいと思います。 ただ、簡単に言いますと、五行説というのは一種の科学パラダイムでし て、世界が「木火土金水(もくかどごんすい)」の五元素によって構成 されていると考えます。各々、「陰(タロットの逆位置とでも言おうか)」 と「陽(正位置)」としての性質をはらんでいます。所謂、「陰陽五行 (おんみょうごぎょう)」。そんでもって、五元素は「相生(互いに産 み出し補完する)」「相克(互いに破壊し否定する)」という二つの法 則に支配されている。即ち、木は互いに擦り合って火を生じる。火は万 物を焼き付くし焦土と化さしめ土に帰す。土の中から金(金属)が産出 される。金属の表面には飽和水蒸気量の関係で水滴が生じる。水は木を 育成する。また、逆に、火は水に消され、水は土にせき止められ、土は 木の根に侵食され、木は金(の斧)で打ち倒され、金は火に溶かされる。 こういう大雑把な感覚的経験に基づいて、五行説は建てられているので す。 で、総ての物質、時間、気候、現象、色までもが、五元素によって構成 されていると考える。例えば犬が「金」に配当され、白も「金」気とさ れる。多分、源氏ひいては一族たる里見家も旗の色が白なので、「金」 だと思う。だから、「白」という字が唐突もしくは無理矢理に出てきた ら、それは里見家の運命に何か影響を及ぼす。01−2の「白屋(あば らや)」で義実らは漸く安らぎを得、浜辺では「白鴎(白カモメ)」が 義実の運命を象徴するように波間に翻弄され、「白水郎(あま/漁民)」 の子に土を投げつけられるが中国の故事にもあるように其れは義実が国 主になる予兆であった、とかね。 そして、ご行に配当された以上、相生、相克の理に従って補完し合い、 否定し合う。因みに中国の歴代王朝も、それぞれ五行に配当され、その 興亡が説明されたりする。ですから、五行説というのは、さっき「科学 パラダイム」と申しましたが、今でいう自然科学のみならず社会科学な んかのパラダイムでもあったりする。 里見家:実在の大名家です。源姓新田一族。戦国時代の十六世紀ごろには安房一 国を領していました。後に秀吉、家康、と主人を変えながら江戸時代初 期(慶長19)に、ある疑獄事件に連座して断絶します。先祖は源頼朝 に従った武士の一人です。本を辿ると清和天皇。いわゆる清和源氏で、 有名な源義家の子孫ということになっています。八犬伝では「源家の嫡 流」としていますが……。なんで新田が「嫡流」やねん! ま、良ぇけ ど。 実在の里見家の伝説では、里見家基(季基ではない!)が結城合戦に反 幕府側として参戦、落城のときに嫡子の義実(八犬伝でも義実)を逃が すため討ち死にをする。義実は安房に逃げ込む。となっているようです。 ですから、冒頭の場面は、当時、史実と思われていた話を下敷きにして いるようです。ただ、これを史実と思うのは危険みたいですけど。 この義実の安房渡来は、源頼朝の安房渡来を本にした創作の可能性があ るよーなんす。馬琴が此のエピソードを採用した理由も、冒頭の主人公 である義実を、伝説的な武家の棟梁である頼朝に重ね合わせるためだっ たみたいですけどね。(腐敗した)貴族から政権を奪い、新しい王都・ 鎌倉を建設した世直し大明神とでも考えていたのかも。書かれたのは、 民衆が世直しを待望していた幕末ですしね。石橋山の合戦で敗れた頼朝 が安房へ逃げる。結城合戦で敗れた義実が安房に逃げる。そして二人と も苦労して、だけど盛り返す。ワザワザ義実を「源家の嫡流」と云って いるのも、(一般的に源家の嫡流と云われる)頼朝にダブらせるためだ と思います。第二回、第三回でも執拗に頼朝と比べる表記があります。 で、実際の里見家の伝説では、物語の起点は、「家基(里見の家のもと)」 ですけど、八犬伝では「季基(季/時間の初め)」と改められてられて いる点が興味深い。季とはシーズンです。香辛料、じゃなくって季節。 春夏秋冬。時間を季節で区切って、各季節に意味を見いだすのが、五行 循環法則の基本ですし……。 背 景:室町幕府とか戦国時代とか云われた時代が舞台です。当時の関東はグチ ャグチャな状況だったようです。さて、事の起こりは「永享の乱」と、 それに続く「結城合戦」です。 ええっと、合戦の話の前に、室町幕府の関東支社に就いて。室町幕府の 前には、鎌倉幕府というのがありました。三代で正統将軍は絶え(しか も暗殺で!)、実権は「執権」それから「得宗」に移りますが、どうに か幕府は百数十年続きます。だもんだから、南北朝の乱世を経て足利尊 氏が京都に幕府を開いても、まだまだ関東には武士がウヨウヨしてまし て物騒だった。そこで尊氏は当初は弟ついで嫡子を鎌倉に配置して、関 東に睨みを利かせた。「鎌倉府」という軍事拠点です。嫡子は京都の本 家に戻り二代将軍となりますが、庶子の基氏を据えて以後、鎌倉府の長 は世襲。このとき長は「管領(かんれい/かんりょう)」と呼ばれてい ました。京都の将軍の補佐官も「管領」ですので区別して、「関東管領」 とでも云っておきます。また、関東管領の副官を「執事」と云っていま した。しかし、鎌倉府が、行政・司法機能を充実拡大したので格上げし て、関東管領を「関東公方(くぼう)」と称するようになりました。公 方とは将軍の別名ですが、官職は征夷大将軍ではありません。執事が、 「関東管領」と呼ばれるようになりました。八犬伝の時代には、長を関 東公方、副官を関東管領と云っていました(八犬伝では関東公方のこと を「鎌倉の副将」と表記しています)。 さて、八犬伝の冒頭の事件、永享の乱です。関東公方・足利持氏はムラ ムラと野心を脹らませていました。「室町将軍になりたい!」。なかな か身の程知らずでワガママな人だったようです。しかし、そんな人が将 軍になったら周りが困ります。義教が将軍職を継ぎます。……実は、こ の義教、持氏に輪をかけてワガママな人だったのですが……。持氏の野 望はアッケなく潰えました。少しは身の程というモノを知ったのでしょ う。持氏は野望を変更しました。「関東を俺のモンにしちゃる!」。や っぱりハタ迷惑な人です。そんな所に義教の部下たちが関東に浸食して きました。持氏はムッとしました。事あるごとに幕府と対立します。高 じて幕府側の武士を殺害したります。こういうとき誰が苦労するかって、 部下ですわいね。関東管領の上杉憲実は、一方でガキみたいにワガママ で唯我独尊・直接の上司である持氏を宥め、一方ではこりゃまた取っつ きにくい専制政治の権化である義教に対し持氏の無礼をヒタスラ謝り、 ドタバタ走り回ります。そんな苦労人の憲実を、次第に持氏は疎んじて いきます。だって、ワガママ云っても聞いてくれないもん。甘えさせて くれない部下を嫌うのが、バカ殿の常識。とうとう二人は決裂。持氏は 憲実に軍勢を送って攻めたてました。此処で幕府が介入します。当たり 前なんです。関東公方って所詮は「室町幕府関東支社長」なんです。下 っ端の人事は好きにできても、次長である管領の人事は本社が握ってた。 まぁ実際は、管領も世襲に近い形なんですけど。しかも本社に嫌われて た支社長が、社長の覚えめでたい次長の首を勝手に切ろうとしたんだか ら。持氏Vs幕府/憲実という構図になった。憲実あっての持氏だった のに、墓穴を掘ったってヤツでしょかね。持氏は敗北。ここで憲実は、 幕府に持氏の助命を嘆願します。しかし容れられず、持氏は鎌倉の安永 寺に押し込められ自殺、嫡子の義成も相模報国寺で詰め腹を切らされま す。憲実は、主君を救えなかったと出家してしまいます。でもぉ、一年 後には、幕府の要請で鎌倉府の実権を掌握しますけど。 この永享の乱に続いて起こるのが結城合戦です。持氏には義成の他に、 実は八、九人の子供がありまして、春王、安王、永寿王の三人が、逃走 します。三人は下総の豪族で、持氏恩顧の武士、結城一族に拾われます。 結城氏朝は、三人を自分の主君として擁立します。持氏に忠節を誓った 武将が幾人か加勢し、篭城して幕府に反旗を翻します。幕府は軍を差し 向けますが、結城城は難攻不落。攻めあぐんだ末、ようやく落城させま す。 このとき一つのエピソードが生まれます。負けを覚った氏朝は、寄せ手 に対して、こう提案します。「俺は腹を切る。だから城にいる女たちだ けは助けてくれ」。寄せ手は承知します。春王と安王は女装し、逃げ出 ようとします。この二人、「結城合戦絵詞」では美貌で賢くて優しくて 和歌も上手だったとされています。確かに絵で見ると、すごく可愛い。 これが女の子だったら、捕まればイタズラされそう。まぁ偶に男の子に もイタズラする人がいるみたいですが。で、二人は輿に乗って逃げ出す が、寄せ手の軍奉行はピンときた。輿を止めさせ、中の女の子(実は春 王と安王)を略奪する。多分、脱がせて全裸にして、ネチネチなぶった か如何かは書いていませんが、とにかくバレた。寄せ手は「氏朝の野郎、 騙しやがって」と怒り狂い総攻撃をかけた。氏朝は「こりゃ堪まらん」 と切腹、城には火の手が上がり、チョン。 氏朝は斬首され、京都の六条河原に梟首。三人の幼君は生け捕りの辱め を受けます。春王と安王の二人は京都への護送途中で、首を斬られて殺 されます。え? 誰か忘れてない? そーです。永寿王は如何なったん でしょー。 さて、結城合戦の勝利に京都は沸きました。幕府の重臣・赤松満佑は、 祝勝パーティーを開き、将軍・義教を招待しました。当時流行していた 猿楽を、みんなで楽しんでいました。と、そのとき突如、バラバラッと 武装した兵士が乱入してきました。驚く義教を取り囲み、切り刻み、串 刺しにして、首級を挙げました。将軍暗殺事件・嘉吉の乱でございます。 まぁ義教みたいなワガママな人は、殺され易い。馬鹿は死ななきゃ治ら ないと云いますが。気に入らない大名たちを次々に殺していったもんだ から、身の危険を感じた満佑に「殺らなきゃ殺られる」と思わせたんで しょうね。で、永寿王は偶々処刑が遅れていて、そこに将軍暗殺の報せ が入ってきたもんだから、ドタバタの混乱のうちに、処刑がウヤムヤに なちゃったんす。 えぇと、この永寿王は後に足利成氏となって関東公方に任命される。成 氏が鎌倉に下ったとき、憲実は鎌倉府の職を退き、再び出家してしまう。 今回は幕府の留任要請を無視して諸国遍歴の旅にフッと出ていっちゃう。 それまで猫を被っていた成氏は本性を顕して、上杉家の当主・憲忠を殺 してしまう。再度、関東公方と関東管領・上杉一族が対立する。此処で も幕府が介入、早くから出家していた義教の子・政知を還俗させ、彼を 指揮官として成氏を攻めさせた。しかし政知は鎌倉まで辿り着けず、伊 豆の堀越に留まった。対する成氏も鎌倉には落ち着けず、古河へ退いた。 此処に幕府公認の「堀越公方」と、正統性を喪いながらも存続した「古 河公方」が両立。此処に上杉一族内部の紛争が絡んでグッチャングッチ ャンと乱れに乱れてアフンアフン。ま、この騒ぎも北条早雲がフラッと 現われてケリをつけちゃうんですけども。 竜 女:仏教守護神(←龍神八部という)シャガラ竜王の娘で、生まれつきの天 才。八歳にして悟りの境地に達する。でも「生まれつき穢れた存在であ る女に、悟りが開ける筈がない!」と偽物扱いされます。そこで竜女は 皆に、まだ毛も生えてない襞もはみ出ていないツルツルの●●●を見せ ます。幸い、ロリコンはいなかったようで、別に性犯罪事件は起こりま せんが、その代わり、竜女が小さな掌を合わせ「以汝神力観我成仏」と か何とか、アンアンと仏に祈る。すると、●●●からニョキニョキ男根 が生えちゃう。「忽然之間、変成男子」。そんで南の「無垢世界」に赴 き宝蓮華に座る。そこで仏としての悟りを開き、四八・三十二の目出度 い特徴と、十かけ八・八十種類の財産が増える特徴を備えた顔に変わっ て、本当の仏様になっちゃった。 この法華経の提婆達多品(第十二)の話は有名でして、これを以て、女 性だって悟りを得られるとゆー証拠とした人もいた。私には逆の意味し か読みとれませんけどもね。そんなことより、八歳の少女が突然、魔羅 を生やした、って現象に目がいく。多分、江戸の大変態・馬琴も、そう だったでしょう。美少女がペニスを生やす。それだけで、エロ漫画にな りそうですが、この「少女から少年」という転換は八犬伝では重要な意 味を持つ。そのために、竜の説明部分で馬琴は、筋とは関係ない筈の、 法華経に出てくる竜女のエピソードを持ち出した、と思料されるのです。 「法華経の提婆品に八歳の竜女、成仏の説あり」と馬琴が書いたとき、 念頭にあったのは、この性転換の場面であったろう。法華経は、お経の 中でも、宗派によっては根本聖典として崇め、その説く所を全く知らな くても「法華経に帰依します」と唱えただけで救われたりするそーです。 南無妙法蓮華経って、お題目。ソーカと思ったりするけど。ええっと、 ですから、このエピソードは有名で、当時の読者には、「竜女」といえ ば「男に変わった変な女の子」ぐらいの了解事項があったと思います。 えぇっと、こんなモンで如何でっしゃろ。上記以外の箇所で疑問があれば、一緒 に考えてみたいと思います。 今回は、初回なので、特大増刊出血サービス。次回から、こんなに書きません。 疲れるから(^_^;)。
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