連載 #3490の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「どういうことなのかしらね」のぞみが低く呟いた。 「さあね。・・・ただ俺が小さい頃、近所にこんな風な建物があったんだ。そ こにやっぱりこんなふうに黒猫の首をくくって吊してる奴がいたのを覚えてる。 今思うと、黒板の落書きにも見覚えがあるんだ。同じ奴がいるのかもしれない。 分からないけど」 のぞみはカバンから出したナイフを、聡は30センチほどの大理石のビーナス の置物を手にしてソファに寄り添って座っていた。聡の肩にのぞみの小刻みに 震えているのが伝わってくる。 「大丈夫だって」聡はドアを見据えて言った。「ごめん、その・・・怖がらせ る気はなかったんだ、さっきの話。結局そこで何があったってワケじゃないし さ。用心に越したことないから、こーして身を守るものを持つってワケで」 一瞬の沈黙のあと、のぞみがうつむいて言った。 「聡くんはやさしいね」 「へ?」 「聡くん」 「ん」聡は片手に大理石のビーナスを構えたまま、返事をした。 「私のこと、守ってくれる?」のぞみは思いつめたように聡を見た。 「当たり前だろ」 聡はのぞみの目を見てちょっとほほ笑んだ。のぞみは聡に笑い返そうとして、 顔をひきつらせた。 「・・・何? どうかした?」聡は一瞬緊張して自分の背後に視線をおくる。 何もかかっていない壁にステレオ。それだけだった。 「何にも。何にもない」のぞみはぶんぶんと頭を振った。聡がその顔を見よう とした瞬間、のぞみが聡の腕の中に体をもたせかけた。 「どうしよう。もうこんなのヤなのに。怖い。怖い。怖いよ」 「大丈夫だって。何にも起こらない。帰ったら全部笑い話だよ。思い出になっ ちゃうって。大丈夫だよ」 のぞみは泣いていた。聡は大理石のヴィーナスを構えた左手のやり場に当惑し つつ、答えた。「大丈夫だよ、落ち着いて」 「・・・落ち着いてるよ」のぞみは涙声で低く呟いて、顔をあげた。そして聡 の顔を見据えて笑った。「そうよね。大丈夫だよね」 サーーーと静かな雨音。いつのまにかまた降り始めたようだった。 「ねえ、聡くん」 「ん?」少しうとうとしていた聡は、はっとして返事をする。 「何か話して」 「何かってなに?」聡はねむい目をこする。 だだっこのようにのぞみがねだる。「何でもいいからー」 「それよりのぞみちゃん、寝てていいよ。眠くないの?」 「眠くない」のぞみはきっぱり返事をした。 「じゃ、のぞみちゃんが何か話してよ」 「やだよ」 しばらく二人は沈黙した。聡がぴたぴたと自分の頬をたたいている。 「あれは雨上がりだった」 「え」 「友達とお化け屋敷って呼ばれてるこんな洋館に来た。玄関先に黒猫が吊して あった。物音がする方向に進んで行くと、黒板のある部屋に大人の人と女の子 がいた。男の背中と女の子の泣いてる顔が見えた。そうでしょ」 のぞみは一気に喋った。聡は目を見開いてのぞみの顔を見つめた。のぞみは苦 しそうな表情のまま言葉を続けた。「女の子はスカートも下着も脱がされてた、 耳元で“逆らったら殺すよ”と言われてた。女の子は途中でやって来た男の子 二人に気付いた。男の子の一人は女の子の口が動くのを見たわよね。“助けて サトルくん”って」 聡は唖然としてのぞみを見ている。のぞみが薄くほほ笑んだ。 「ヤッパリそうなんだ。よく覚えてるでしょ。ずっと忘れてたのに。あのとき の女の子は、私だよ」 つづく
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