連載 #3392の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ほう。 美術と金じゃと。ははあ、それは面白い。 まさにあれじゃな、ほれこんな風に一杯やりながら酒の肴にするには うってつけじゃ。まあ、今現在もそこらへんを「金」にすることについ ては儂もやぶさかではないがな。 あれはいつの事じゃったか。儂がまだ十代の若い頃、友人逹のグルー プ展でな、そこの画廊の主人にえらく気に入られてしもうてな。ま、自 家製の葉巻を吸っとるというともう有名じゃがの。儂も暇じゃて、いろ いろ手伝いをしとったんだが、ある時、部屋で商談をしとるんじゃ。儂 も好奇心でな、ついつい聞いてしまった。 「素描二十枚で、このぐらいで。色つけて欲しいんですが」 「ちょっとそれでは色はつきませんな」 「では数を少し削りまして、このくらいでセットという事でなんとか」 「まあ、一色か二色つけますか」 まあ、これが印刷の事でもなんでもない。どうも、絵画の受注生産の 打合せじゃ。なんだか「現場」という感じでな。ま、箱に入れてリボン かけないと芸術にならんといったのは矢作さんじゃったが、それはそれ、 画廊の仕事というわけじゃ。 後でわかった事だが、けっこうなんとか会のなんとかさんなども、こ れと五十歩百歩で、若い頃に描いた作品の模写なぞやっておるそうでな。 なまじひとつ有名になると、これが先生の「画風」という事でおいそれ と変える訳にはいかない。本人もどうもそれ以外描いてはいけんような 気になってしまう。まあ、気の弱い輩が多いせいもあるがな。そのよう なやつに限って妙に金にうるさくてな。 なんじゃ。ほう、これはこれわ。長浜名物フナ寿司。そうそう、こう いう気遣いがあっちの方でも大切でな。他にも、洗濯船の例があるから というわけでもないのじゃろうが、絵描きとなるとなかなか色ならぬ色 の方も。わははははは。それはまたいつか。 上野のT美術館。あそこでバイトをしとった時じゃ。 儂が十代の若者の頃じゃから、まあ昔話と思ってくれていいんじゃが、 出来たてでの。まあぴかぴか。なのじゃが、もう出来たての時から問題 のある構造でな。 展示室の巨大な壁なんじゃが、ぶらさげ式でな。左右二十メーターも の壁を十人ぐらいで「せーの」と押すわけじゃ。これがどうやってもま っすぐいかない。その上天井のレールを見上げながらなもので、バリバ リと塗装が剥がれ落ちて、眼の中に入ってたまらん。 なんで儂が、美術館の館員でもないのにそんな事をしとったかという と、委託というか、裏の方にいくつか会社が入っておる。搬入、搬出と いうのはもう強烈な肉体労働でな。役人はそんな事はしない。考えてみ れば公の施設の中で昼飯にがぶがぶビールを飲んでいるというのはちょ っと問題じゃが、持ちつ持たれずという訳じゃて。 まあ、そのうちのひとつに雇われていたんじゃ。勿論、アルバイトは 全部美大、もしくは美術学園の有名どころじゃ。それ、作品を角でぶつ けて引っ掻いたの、落っことしたの、年がら年中じゃ。そこで、「日本 画ぁ」というわけじゃ。にかわの鍋を持って専門のやつが飛んで来る。 これがもう、ものすごい会社でな。それはまたの話にして、問題はやた らと深い地下室で行われる審査なのじゃ。 仮りにもみんなアーティストじゃから、一家言あるわけじゃ。で、審 査の前にみんなで講評じゃ。どいつも良い眼をしとってなあ。儂とも意 見はぴったりする。ところがな、結果はいつも逆になってしまうんじゃ な。 というのはな、審査員というのがもはや人間というより「妖怪」に近 い。芸術家と変人を取り違えたというか、知識というか教養というか、 そういったものを自分の「才能」とは別じゃと決め付けているというか。 中には見事なトルソーにも関わらず、ナニが描いていないという理由で 落選とし、女が描いたというだけで入選とする。年寄りが見事な絵を描 くと嫉妬して落す。中学生が描いたら「天才」という事で入選とする。 居眠りをしていた奴が突然名前を聞いたとたん「それ、たのむ」なんて いって入選になったり。なんだか儂等は悲しくなってしもうた。 中には怒ってしまったやつもいてな。通常「入選」の場合、キャンバ スの裏に丸印を付け、落選はバツ印を付けるんじゃが、落選にもかかわ らず丸印を付けたんじゃ。それは見事に入選として扱われたよ。芸術家 は事務には向いていないという事じゃな。 それにしても日和見というか何というか、TGSJが現われた時は凄 かった。いままで夜中の上野動物園のごとく大騒ぎをしていた連中が、 水を打ったように静まりかえってな。そのTGSJがよたよたと付添い を連れて席に付くのを戦々恐々として見ているのじゃ。 それからはみんな、おずおずと手をあげるだけでな。親分、子分の世 界じゃて。まあ、会友、無審査の連中、「美術年間」の世界はだいたい こんなもんじゃ。 しかしな、公募展みんなこうだったわけじゃあない。中には骨のある のもあったよ。ひとりが「これはいい、入れよう」と言うと、いきなり 立上り「こんな物のどーこがいいのだ」というわけで、もう、大変な騒 ぎじゃ。勿論、それを止めるのは儂等の仕事じゃがの。たしかSS作と かいったな。 おっと飲み過ぎたかな。ううい。また明日、来てくれんか。おお。こ んな事をされたんじゃ。いやいや、ご好意には感謝しとるが。なんだね、 うん。そうか。そうかね。いやいや、先生の方には話を付けとく。まー かせなさい、まかせなさい。ははははははははっと。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 作者注/ごめんなさい。
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