連載 #3325の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「こ、こないだの、おもろない漫才コンビ!」 「おもろないは失礼やな……」 “福良”に入ってきたのは、例の素人漫才コンビ、マヨドレであった。今日は、 この前のような特異な格好はしていないので、一見、普通の女の子のようだ。 「お前ら! 店の本、どこやったんや! 返さんかい!!!」 史満が詰め寄る。 「そ、そないに“!”マーク、いっぱい飛ばさんでも。本て何のことですのん、 あたしら全然知りませんで」 「んなアホなことあるかい! ほんなら、なんでお前らこないだ、ここで漫才 やってん」 マヨドレの片割れで、姉のマヨネーズ八戸が、史満らに事情を説明する。トッ ポ事情(それはジージョ)。 「なるほど。ほな、お前らは、そのミスター・スナックと名乗る通りがかりの 中年男に頼まれて、漫才やりに来たっちゅー訳やな」 「三ツ矢」 「な、なんやねん、三ツ矢て……」 「さいだ」 疲れ切った顔をして、うつむく史満。壁を叩く、依音。歯ぎしりをする、太郎。 ひたすら、ケケケケケと笑っている愛子。 「で、お前ら、ここに何しにきてん……」 我に帰って、史満が言う。 「いやあ、この前の漫才、面白かったかどうか、聞きに来たんですけど……聞 くまでもないみたいですね……」 「そのようやな……」 “福良”が、シーンと静まり返る。なんとも言えない、気まずさだ。まるで、 お笑いスター誕生で、一週も勝ち抜けなかったコンビを見ているかのようである。 「姉ちゃん、やっぱりあたしら、漫才むいてへんのやろうか」 「良子のバカ! あんたの漫才にかける情熱は、そんなもんやったんか! だ いいち、今あたしらから漫才をとったら、何が残るいうねん!」 「……そうやな姉ちゃん、あたしが間違ってたわ」 「わかればええねん、良子。で、心機一転、この際、コンビ名をかえてみたら どないやろう、思うねん」 「どうかえるん?」 「足塚やったら、いつまでたっても手塚先生に追いつけへん思うねん。せやか ら、二人の名前をとって“満才茂道”という……」 「さっさと帰れ!」 二人の会話に、しまいに史満が切れる。パロディで遊んでいる場合ではないの だ。 「それにしても、そのミスター・スナックって何者だろうね」 太郎君が、話を戻す。しっかりした、小学生である。史満らより、よっぽど先 のことを考えている。 「そうね。犯人を捕まえないことには、本も戻って来ない訳だし……福良先輩 も……」 依音が、ちらっと愛子の方を見た。愛子は、相変わらずのんきに、ケケケケや りながら、ハタキをかけている。そんな愛子の姿を見て、三人はふうとため息を ついた。 「よし、とりあえず犯人と遭遇せな」 「遭遇? どうやって?」 史満の言葉に、依音と太郎がハモる。 「ふっふっふ。必殺技を使えばええねん」 そう言うと、史満は両手を広げ、右手を上にかざし、大声で叫んだ。 「秘技! くぎり行っ!」 ☆★☆★☆ 依音「な、何が起こったんですか?」 史満「ふっふっふ、三行前に星のマークのラインがあるやろ。これは、“くぎ り行”と言ってな。これが出てくると、むりやりシーンを変えないといけ ない。だから、なんか展開がある、という訳やな」 スナ「なるほど、そうだっただべか」 気がつくと、店内には、愛子、史満、依音、太郎の他にもう一人、人間が増え ていた。 史満「現れたな! ミスター・スナック!」 スナ「ちょ、ちょっと待つべよ。あんた、私とは初対面のはずなのに、なんで 私がミスター・スナックだと決めつけるだべ」 史満「ちゃんとカギカッコの前に“スナ”と書いてあるだろうが!」 スナ「そんな、いい加減な!」 太郎「そう言えば、いつの間にか、台詞の前に名前がついてるね。これで、誰 の発言が一目瞭然って訳だね」 乃栄「その昔、こういう小説の書き方をしていた頃、私はただ読みやすいと思っ て、名前をつけただけなのに、それだけで『お前の書くものは小説じゃな い』と差別されてしまったことがあったんです」 依音「大変ねえ」 史満「なんで、作者がここにおるんじゃあっ!」 愛子「ケケケケケ」 もはや、何がなんだかわからない。 史満「とにかく、店の本を返してもらおうか」 スナ「何ぃ? なぜ、お前は、マヨドレの二人が店内で漫才をやっているスキ に、我々の工作員がこっそり忍び込んで、店の本すべてを外に運び出した ことを、知ってるだべかっ!」 史満「今、お前が、全部説明したからや」 スナ「し、しまったあっ!」 依音「ああ、不条理な会話。たまらない……」 書いてる方が、一番たまらないのである。こんな状態の時に、有松乃栄に『最 近、スランプなんとちゃう?』なんて言ったら、血を見ることになるので、読者 は気をつけていただきたいもんである。 史満「なぜ、福良書店を狙った!」 スナ「……ふっ、我々の最終目標は、世界征服」 史満「なんやと!」 スナ「世界は広い。だからまず、地盤を固めなければならないだべ。そこで、 アジア征服から始めようと思っただべが、アジアも広い。それで、アジア、 日本、関西、兵庫、芦神宮と落ちて、花宮征服から始めることにしただべ」 依音「な、なんの地盤も出来てないのね……まだ……」 スナ「花宮征服を成し遂げる上で、もっとも邪魔な存在。我々の強敵になりそ うな人物を、まず倒さなければならない……。それが、オカシマン、お前 だべ!」 史満「なんだとおっ!」 史満は、体をブルブルと震わせてうずくまった。そして、込み上げるかのよう に、勢いよく、両手の拳を握りしめながら、立ち上がった。 ジィィィィィンッ。 依音「……な、なんだなんだ?」 史満「俺は今、モーレツに感動している! この、花宮南商店街以外では、ま るで知名度の低い俺のことを、強力なライバルだと思ってくれる悪人が、 この世に存在するとはっ! ありがたいっ!」 太郎「そんな、のんきなことを言ってる場合かっ!」 愛子の、ケケケケがひどくなる。ついには、空っぽの本棚をよじのぼり、棚の 段にぶら下がりながら、ケラケラ笑い始めた。完全に、おかしくなってしまった ようである。 史満「そうだ、そんな場合ではない! よくも、アイコンをこんな目にっ。正 義の名にかけて、お前のような悪を許しておく訳にはいかん!」 今度は、ミスター・スナックがジィィィィンッ状態に陥った。 スナ「うううっ、私も名指して、悪人扱いされたのは初めてだべよっ。ありが とう、オカシマン。私の存在を、認めてくれて」 史満「いやあ、お互い様」 照れる、史満であった。 太郎「おのれら、遊んでる暇があったら、さっさと勝負でもせんかーいっ!」 (つづく)
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