連載 #3210の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
兵庫県芦神宮市花宮町……。だからどうした、という表現が最もふさわしいで あろう、ほんわかストーリーの開幕である。 さて、とにかくこの日は暑かった。テレビでも朝から、この夏一番の猛暑でど うたら、こうたらと、アナウンサーが、がなりたてていた。 真夏。 クーラーを持たない岡史満にとっては、まさに地獄といえよう。 ☆★☆★☆ 花宮南商店街、福良書店。この物語の要となる、スペースである。 「しっかし暑いわね。これだけクーラー強くしてても、ちっともききやしない」 この店の娘で、店員でもある福良愛子が言う。 「そうだね、今日の学校帰りはメチャクチャしんどかった」 商店街内の近所に店を持つ、レンタルビデオショップたかの(通称RVSたか の)の息子で、愛子のいとこであり、小学三年生の高野太郎(たかの・たろう) 君が言った。 「そっか。今日は登校日だったのね。あんた達も大変ね」 「そう。ほら見てよ、このTシャツ」 と言うと、太郎君は自らTシャツを脱ぎ始めた。それも店内で。 「こらこら、何する気よ」 男の上半身ヌードに、愛子さん目を覆ってイヤーン……などと言う訳もなく、 あくまで冷静に対応する。 「ほら」 「うわわ」 太郎君は、自分の着ていたTシャツを、しぼり始めたのだった。汗を含んだT シャツからは、水分が床にポタポタと落ち、やがて水たまりを作り、そしてそれ が津波となる。 「ぐわあああ、ごぼごぼごぼ。そんなアホなぁっ!」 「……と、いうほど、すごい汗をかいたんだぁぁぁっ……」 ごぽ。 二人は汗の海へと、沈んだ。 ☆★☆★☆ しかし、あくまでギャグ小説である。そのまま二人の命が尽きる筈もなく、次 のシーンでは既に二人とも服を着替え、オカシマンこと岡史満の住む、塀星館の 方へと歩いていた。 「この暑さだから、シマちゃん死んでるかもね」 愛子が、縁起でもないことを演技でなく言う。 「大丈夫だよ。オカシマンさんは、スーパーヒーローだもん」 太郎が、根拠もないことを根気よく語る。 塀星館へと通じる路地は、本当に細く、車一台通れるかも微妙なぐらいだ。そ こを立ちこぎで自転車に乗った外人が、通りすぎて行く。本編とは、なんの関係 もない情景である。 やがて、塀星館へどたどり着くと、アパートの建物自体がもはや、熱気を帯び ている。 「うわあ、暑そう。ここって、クーラー普及率低いのよね」 「ハイビジョン並だよね」 と、二人、意味がありそうでなさそうな会話をしながら、岡と、手書きのボー ル紙で作られた表札のかかった、201号室のドアをノックする。 「おーい、シマちゃん。開けてよ」 しかし、中からは何の返事もない。 愛子がドアノブを回すと、抵抗なくスルリとドアが開いた。 「まったく、無用心……だあああっ」 「ぎえええっ」 ドアの内部からの、モワンとした熱気とともに、二人が思わずのけぞる。 なんと、史満は万年床の上で、うつぶせのまま、のしいかになっていたのだっ た。 「一、二、の三、四で、たたんでのしいか……」 愛子が思わず、ものすごく古い歌を口ずさむ。それほどに、二人のショックは 大きかった。 「おい、シマちゃん。おーい」 愛子は、いかになってしまった史満を、とりあえず仰向けにさせた。 「イカんなあ」 太郎が、つまらないことを言う。作者の私としても、遺憾である。 「イカれちゃったのかなあ、シマちゃん」 愛子が三角になった、史満の頭をひっぱっても、なんの動きもない。逝ってし まったのか、オカシマン! イカないで! 「ま、いイカ。そのうち、元に戻るでしょ」 「愛子、お姉さん。なんか、いイカげんだね」 「今は、こういうノリがイカすのよ」 イカイカイカイカ、うるさい二人である。 「シマちゃん、たイカ(退化)しちゃったのかしら」 「オカシマンさんの祖先って、イカだったの? へえ、知らなかった。早速、 夏休みの自由研究のネタに……」 人を疑うことを知らない子供だ。 「でも、それにしてもやっぱ暑いわねえ。せめて、ドア開けて通気をよくしと かないと」 風が差し込んでくる。涼しいとまではいかないものの、かなり空気の流れが正 常に戻っていく。 奇跡が起こった。 まったく、動かなかった史満の手足(イカになぜ手があるのかはともかく)が、 ぴくん、ぴくんと反応し始めたのだ。 「この調子よ! 太郎君、団扇であおぐのよ」 「うん」 パタパタパタパタ。史満、かば焼き状態である。 しかし、団扇の風がきいたのか、徐々に史満の体の揺れが大きくなっていく。 「最後の仕上げよっ。『いかいかがブギ』っ!」 そう言うと、愛子が例によって、訳のわからない歌を歌い始めた。 「いかいかが、いかいかが、いかはいかがか、いかいかが、いかがほしいか、 いかいかが(アソレ)、いかいかが(チョイナ)、いかいかがーっ」 「……あれ、俺どうしてたんだ?」 元の姿に戻った史満が、起き上がった。愛子の歌は呪術か。 「戻ったのね、シマちゃん!」 「オカシマンさんーっ!」 「しかし、なんでこんなにイカのにおいがしてるんだ?」 史満の言葉に、愛子がポンと手を叩いた。 「俗に、独身男性の部屋はイカ臭いと言われます」 ……シャイナラー。 (つづく)
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「連載」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE