短編 #1322の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
おとこが部屋に入ってきた。丸太のように太い足で乱暴にドアを閉めた。 だんだん気持ちが不安に傾いていく。六畳の部屋に私は独りだから。 いんきそうなおとこは視線を沈めたまま「あの〜」といった。 はい? 業務用の笑みを私は浮かべた。 かなり昔ことで恐縮ですが、とおとこがいった。 げひんな声だ。私は耳をふさぎたくなった。 ろくでもない話なのは百も承知です。 うるさいくらい何度もおとこはそうつぶやいてから、 おしらせしなければなら無いことがあるのです! と、いって腕を振り回した。 だいたんにもおとこは机前まできて、私の手を握りしめた。 いきなりだったので、身構える暇もなかった。 はらを割って話します。おとこは私の目を見つめて離さなかった。 かまいませんよ。市の何でも相談員という仕事柄そう応える。 げんせいで会うのはこれが最後ですが、とおとこがいう。 ろくでもないと感じたのは間違いではないらしい。 うんめいですよ。 おとこが小声でささやき、唇を重ねようとした。 だめです! と私は叫びたかったが、呼気が漏れただけだった。 いすくめられた私は身動きもできなかった。 はっきりといえるのは、おとこの目が優しかったということ。 かなり長い時間、おとこは私の唇の感触を楽しんでいた。 げっそりとした、そう男がわたしから離れると、やせ衰えていたのだ。 ろうそくの燃え残りみたい物ですよ、私はね。と、おとこがいった。 うんめいってやつは無常でねえ、と話を継ぎ足した。 おとこに昔……どこかであった記憶がある。私は想い出をあさり始めた。 だめもと、って言葉があるけど、やはりダメだったようですね。 いいかげん思い出してもよさそうなものですが。 はたちになったら私と結婚するといったでしょう? 男は一気にまくしたてた。 かなり昔、そう私が幼児のころ、誰かとそんな約束をした覚えがある。 げんきのかけらもでませんよ。といいながらおとこはうつむいた。 ろくに声も出ない私は、声にならない声を漏らした。 うんめいですよね、死に神があなたに恋をしてしまい、結婚するなんて。 おとこは寂しそうな、それでいて暖かな声で私にふれてきた。 だんだんとおとこの影が薄くなっていく。 いいんですよ。結婚が人生の墓場なら、私は本望です。 はなしながらもおとこの姿は消えていく。やがて痕跡すら消えてしまった。 かなしみが私を支配した。 げっそりとした顔が脳裏に浮かぶ。 ろくでもないのは、私の方だったのに・・・。 うそをついたのは私の方だった。ただアイスクリームが欲しかっただけ。 おさない私は見知らぬ男をだましたのだ。胸が痛む。 シニガミカア。いつのまにか、かすれてはいるが声が戻っていた。 まだ唇に感触が残っている。私はおとこに恋をしたのだろうか? いきているうちには答えがでないかもしれない。 −完− (代理アップbyジョッシュ)
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