短編 #1037の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
【誘拐】 作:沖田 珂圃 監修:永山 秀智 男は車を路肩に寄せて停めると、エンジンをかけたまま電話ボックスに入った。 (落ち着け、落ち着け、落ち着け……) 男はゆっくりテレホンカードを差し込むと、震える指でプッシュホンのボタン を押し始めた。頭の中で手順を確認しながら相手が出るのを待った。 (用件だけ伝える。10秒もあれば充分だ……そしてすぐにこの場から……) Pururururu…… Pururururu…… Pururururu…… (くそっ早く出ろ!) 『はい、○○です』 「お宅の娘を誘拐した。身代金として五千万用意しろ。警察には知らせるな」 『うちには娘なんていません!』 ぷつっ。 「2時間後にまた……なに!?」 『ぷ〜っぷ〜っぷ〜っ』 男は数秒固まっていたが、受話器をフックに戻した。 (○○? ちっ間違えたか……) (落ち着け、娘をかっさらってから1時間も経ってない。まだ警察にも通報して いないはずだ……) 男は大きく深呼吸すると、テレホンカードを入れ直し、左手のメモを凝視しな がらボタンを一つ一つ押し始めた。 『はい、☆☆です……』 「お宅の娘を……」 『……ただ今留守にしてます。御用の方は発信音の後にメッセージをどうぞ。 お急ぎの方は050−***−****へお電話ください。ぴぃ〜〜〜』 男は電話のフックを押し下げた。 (あのうちには専業主婦の母親とばばぁが居るはずだが……留守電じゃ声が残っ ちまう。証拠を残す訳にはいかねぇ。) (くそっ!) 男は数瞬考えたが、また同じ番号をプッシュした。 『……へお電話ください。ぴぃ〜』 (この番号は携帯、いやPHSか。医者のくせしてケチるんじゃねぇ。携帯く らい持て、馬鹿野郎……) 男は言葉に出さずに毒突きながら乱暴にボタンを叩いた。 Pururururu…… Pururururu…… Pururururu…… 『おかけになった電話は電波の届かない……』 男はフックを殴り付けた。 (仕方ねぇ。親父の病院に直接かけるか。だが、直接本人が出る可能性は低い。 多分受付けから呼び出しになる……まぁ、大丈夫だろう。まだ1時間も経ってな いんだ、警察が居る訳はない……) 男はくしゃくしゃになったメモをにらみ付けながら、予め調べておいた父親が 経営する個人病院に電話をかけ始めた。 『ぴぃ〜ががががが……』 男は受話器をフックに叩き付けた。 (FAXだと!) (待てよ。番号を調べた時にもう一つ電話番号があったな。あっちか!) 男は足元の電話帳を取ると、めくり始めた。 (あった。これだ!) 男は電話帳を片手に、勢い良くボタンを押し込んだ。 Pururururu…… Pururururu…… Pururururu…… 『はい、☆☆整形外科です。』 「△△と申しますが、院長先生をお願いします」 男は適当な名前をでっち上げながら言った。 『申し訳ございません。院長は急用で席を外しております』 「……何時頃お戻りでしょうか?」 『今日は戻らないとの事です。よろしければ御用件を承りますが?』 「いえ、結構です」 男は受話器をフックに戻すと、ため息をついた。 (待てよ、ひょっとして自宅に戻ってるんじゃ……) (10秒で用件だけ伝える!すぐにこの場から離れる!よっしゃ!) 男は、受話器を取るとテレホンカードが吸い込まれると同時にメモの番号を勢 い良く打ち込んだ。 『はい。☆☆です』 「お宅の娘を誘拐した。身代金として五千万用意しろ。警察には知らせるな」 『ま、待って下さい!娘は、幸恵は無事なんでしょうね!?』 「2時間後にまた連絡する」 (身代金の受け渡しが一番危険だが、なぁに、俺が考えたあの方法なら完璧だ。 これで借金を叩き返して、海外へ……) 電話ボックスから出ようとした男の動きが凍り付いた。 いつの間にか、目つきの鋭い男が二人、遮るように立っていた。 「ちょっとお話を聞かせてもらえませんか」 手にした手帳には、菊の紋章が輝いていた。 男は弾かれたように車を振り返った。婦人警官が毛布に包まれた子供の様子 を確認しているところだった。 「逆探知ってのは今じゃ一瞬で済むんだよ。あとはいかに犯人をその場に留ま らせるか、でね。最初の間違い電話、あれ、番号が違ってた訳じゃないんだ」 「きったねぇ……」 男のつぶやきは、誰の耳にも届かなかった。 夜のニュースでは、この誘拐事件についてほんの数十秒だけふれた。 『今日午後1時頃、東京都新宿区**で誘拐事件がありましたが、事件発生か らおよそ70分という短時間で犯人が現行犯逮捕され、同時に犯人の車から被 害者の☆☆幸恵ちゃん10歳も無事に保護されました』 『被害者のお子さんが無事だったのは、なによりでした。日本の誘拐事件の検 挙率は世界一だそうです。日本の警察は優秀ですからね……』 −終り− 【後書き】 UPしてから、フレッシュボイスで永山さんに色々教えていただいて、次回 は気を付けよう!と思っていたのですが、助詞を間違ってたのが発覚しました。 あと、UPする前に文章を削ったところの前後がやはり気になったので、反則 かもしれませんが、改訂版をUPしました。 改訂前のやつを削除しようと思ったんですが、削除の仕方が判かりません。 どの程度変わったか比較してもらうのも面白いと思うので、このまま置いて おきたい気もしますが、いいでしょうか?
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