短編 #0937の修正
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【小論/不器用者の悲しみ】 著 針谷 允之 私は、よく人から無神経な男だと罵られる。果たして本当にそうなのであろうか? 人の性格というのは実に面白いもので、大きく二つに分けることができる。それは、 器用な者と不器用な者とである。この両者の定義は端的に述べると、物事を旨くこなし 、平素何ら意識することなく無事、平穏な生活を送ることができるのが器用者。 それに対し、自分は不器用者だと自覚し、己のコンプレックスが故に自己改善を人生目 標の柱として、神経をすり減らし失敗をすまいと生活を送るも、一向に自分が理想とす る行動に結びつかない者を不器用者という。少なくとも私はそう考える。 この定義を示したところで、一つの問題点が浮かび上がる。それは器用者と不器用者 との反発の問題である。 その反発の核となるのが、定義中にも示した《物事をうまくこなし》と《一向に自分 が理想とする行動に結びつかない》がそれである。 この二点はプラス・マイナスの関係で、そこに反発が生じる。その具体例が今やマス メディアで取り上げられ一種の社会問題にまで発展した《イジメ》の問題である。 器用者の目から不器用者はどう映るのであろう。それは、紛れもなく不器用者のグズ な姿である。人間心理として自分より愚な者を馬鹿にしたくなることは自然なことで、 イジメもそこから発生する産物である。 私は長年、イジメの対象となる人間を見つめてきた。そして発見したのが、次のよう な事実なのである。 この文の読者は、今自分が通う学校、あるいは職場の人間関係を思い出してほしい。 どこの場面にも必ずいる存在。話をしていても要領を得ず、行動もどこかぎこちない。 このようなタイプの人間は真っ先に人から嫌われ、愚弄される。それが発展した者が、 いわゆるイジメである。それと同時に無神経な奴と弄されるのもこのタイプである。 私も実はこのタイプで、イジメられはしなかったものの、友人から「お前は無神経な奴 だ」と言われたり、まるで友人が自分の先生であるかの如く、説教されたことさえあっ た。その時はとても悲しかった。毎日のことではあるのだが、不器用者にしてみれば。 だいたいの不器用者は、自分が不器用であることを既に自覚している場合が多い。 なぜならば、不器用者にすれば、毎日が自分との戦いであり、いかにも自分が器用者で あるかの如く周囲に見せつけるかの試行錯誤の連続だからである。 しかし、不器用者はその心がけがかえって徒となり、人から愚弄され、嫌われる。 多くの不器用者の悩みは一生懸命に物事をこなそうとするも、それが逆効果をまねく という事である。具体的に述べると、例えば、友人などとの会話時に、話の内容につい て行けなくなって、自分だけが沈黙してしまったりすると、何か喋らなければいけない ような錯覚に襲われることがある。ようは焦りが生じるのだ。そうして無理矢理喋ろう と、意に反する事が口から出て、相手を傷つけたり、知ったかぶったために、以後、相 手から信用されないといった事がしばしばある。また、そういう人は常に軽く見られが ちだ。 しかし、ここで注目したいのが、これらの人々は、決して無神経では無いということ だ。ただ少し自分の不器用さを隠すために、無理に強がっているだけなのだ。 不器用者はそれだけに繊細な心の持ち主なのである。 ところで、ここで不器用者に朗報がある。 実は不器用者は、将来の成功を約束された者であると言うことである。 先にも述べたように、不器用者というのは、自分が不器用である事を自覚し、毎日、 物事が成功するように努力している者である。 これが不器用者の良さである。例えば、今食卓に並んでいる野菜食品の多くが、長年 の品種改良の研究の結果、世に送り出されたものであるのと同じ事である。 器用者というものは、生来ずっと何もさしたる問題も無く生きてきた。故、普段普通 に振る舞っていても、たいしたトラブルは発生しない。ところが不器用者は毎日がトラ ブルの連続であるだけに、試行錯誤が欠かせない。 そして、不器用者は自分の心に、器用者と比較して、足りないものを補い始める。これ が幸いした。 結果、器用者の心は裸一貫である。ところが不器用者はどうであろう。彼らは今自分 が持ち合わせている素晴らしい心に、試行錯誤によって作り上げられた、よりすぐれた 才能が幾重にも被せられるのである。 この重層構造的心理は、器用者の作り出す創作物と、不器用者の作り出す創作物を見 比べれば、歴然である。 重層構造的心理者の作り出す創作物は、個性に満ち溢れ、またよく工夫されたものと なるに違いない。 このことは競争社会と呼ばれる現代社会に飛び出したとき、元不器用者の作り出す個 性的な発想は有利に働くであろう。 最後に不器用者に告ぎたい。 あなたは、本当は不器用者では無いのである。そしてあなたは大器晩成型の人間だ。 今、焦ることは無い。悲しむことはない。あなたの心のエッセンスは誰よりも素晴らし く、貴重なものだ。自分を信じる事である。 平成九年十一月二日 針谷 允之 ◎ご意見、ご感想は下記まで。詳しくはプロフィ−ルを見て下さい。 東京BBS HARIGAI PC-VAN DCM83491 E-Mail hari@msb.biglobe.ne.jp 針谷 允之 宛て . y
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