短編 #0866の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
『当座Pをタダ今上演しております』 またあの劇場の前にこの立て看板が立った。 「あ、また変なことしてますよ」 と会社員B。例によって、あの会社員AとBである。 「このPってのはなんなんだ?!−−ピーってのは」 と会社員Aはツッコミを入れたが、誰も答える者はいなかった。 入り口のポスターには、 『当座Pをタダ今上演しております。 アバターとニキビスの戦いは新たな戦いの始まりでしかなかった。 ホクロ導師に導かれ、今、勇者ソバカスの戦いが始まる。 たたかえ、ソバカス!魔王シミニナリマスの野望を打ち砕くのだ!! これで完結編。今、すべての謎が説き明かされる!!!』 とあった。かんぜんに空想の世界に逃げている。 「完結編だそうですよ」と会社員B。 「きっと最終版だな」と会社員A。 「じゃあ、次はディレクターズ・カット版ですかね」 「いや。今回はプロデューサーズ・カット版のほうが先だろう」 一般に、プロデューサーズ・カット版のことを製品版というのだが、今回はどう でもよかった。それで話が完結するわけでもない。 「−−で、また行くんですか?」 と会社員BがAにきいた。 「ああ、それが我々の運命(さだめ)というものだろう」 Aは視線を遠くやりながら、それが当然のように物語った。 ただのバカを乗り越えて、二人には後ろから後光がさしてみえた。 まずスーツの着こなしを整えてから、二人は堂々と劇場へ乗り込んでいった。 が、その正面には、妙な占いババアが席をすえて、来る客を待ち構えていた。 「まだ早い!」 ババアは二人を見るなり、そう叫んだ。 「なにが早いんだ?」 Aはきいたが、ババアは 「まだ早い!」 と叫ぶだけだった。 「まだ開演時間じゃないのか?」 とAはきいたが、 「おしい!ちょっと違う!」 と意味不明なことを口走るだけである。 「まだシナリオが上がってないんでごまかしてるのか?」 Bは聞き直したが、 「間違ってる。おしい!」 とババアは叫ぶだけである。 「バアさん、ここでクイズなんかする気はないんだ。劇を見に来たんだ。 そこを通してくれ」 Bが少し怒り気味に言ったが、 「おしい!」 とババアは言うだけである。 「まさか40才未満鑑賞不可なんていう妙な成人規制があるんじゃないだろうな? またいつもの妙な障害だな。先へ行かしてもらうぞ!」 Aは占いババアの席を強引にとっぱらって、劇場の階段へ足を踏みいれた。 「違う。逆だ!」 後ろから男の声がしたが、その助言は無意味だった。 −−−うわーーーっ!!! AもBもまさか劇場の階段がないなどとは気付かず、思いっきり劇場の暗闇の中 へ飛び込んでしまった。あとは急転真っ逆さまである。この騒ぎに巻き込まれて、 占いババアもこの暗闇へ突き落とされた。が、マントをくくるヒモが上に引っ掛かっ て、ババアはなんとか下に落ちるのだけは逃れることができた。 うわーーーっ!! が、AもBもどうすることもできず、ただひたすら暗闇がつづく奈落に落ち込ん でいった。上で、てるてる坊主のように首吊りをして揺れているババアだけが、い つまでも二人の視界の中にあった−−−− −−教訓−− タイプ28。スタックはアプリケーションヒープでイッてしまった。
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