短編 #0846の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
『当座サギサギをタダ今上演しております』 とある劇場の立て看板にそう書かれていた。またあの劇場である。 「当座サギサギ?」とまたあの会社員A。 「当座サギなんたらがとんでもない詐欺だったということを再現する劇じゃないで すか?』 とまたあの会社員B。 表のポスターには、 『当座サギサギをタダ今上演しております 前作を上回るサギ商法。またもや誰が役者か判らなくなるスリルとサスペンス!! 別に入ってもいいが、何が起こっても知らんぞ』 とあった。完全に居直っている。いつまでも続けるつもりなのだろうか。 「いってみますか?」 と会社員B。ぜんぜん懲りてない。 「この前はひどい目にあったからな」 と会社員A。こちらもあきらめてない。 よせばいいのに、会社員AとBはまたこの劇場へ入ってしまうのであった。今度は 玉砕覚悟である。 ぐるぐると落ちていく階段の底に劇場はあった。知らぬ間に改装されて、前より奇 麗になっている。 劇場の質と劇内容の質はまったく別のところで作用しているようである。 だが例によって場内は真っ暗で、手さぐりで席につかねばならなかった。 「相変わらず席につくのもひと苦労ですね」と会社員B。 「だが、なんでこんな劇がいつも満員なんだ?」 と会社員A。それは永遠の謎であった。 ほどなくしてブザーが鳴り、場内アナウンスが入る。 『当座サギサギを只今上演しております。始まります。 ……なお、上演中は禁煙、禁酒、禁食事、禁私語、禁せき、禁あくび、禁しゃっく り、禁居眠り、禁おもらしとなっております』 「なに?前にもまして禁止が多くなってないか」 と会社員Aが口をはさんだが、無視するように場内アナウンスは続いた。 『また、上演中の立席も禁止しておりますので、開演後は扉を全て施錠いたします。 あらかじめご了承のうえ、お楽しみください』 しかし観客が了解する間もなく扉はしめ切られ、上演は開始されてしまった。 「おもらしも許さないなんて、ムチャですよ」 会社員Bが不平を漏らしたが、周りから白い目を向けられて黙りこくってしまった。 「劇団の人が必死に演劇してるのにおもらしなんて失禁よ!」 どこかからか小声がしてきた。 第一幕の話の筋は前と同じだったが、前のにましてクサい演技だった。観てて眠気 をもよおしてくるようなサル芝居である。それでも二人はあくびも我慢して観た。 最後にヤクザが出てハデに撃ち合ってくれるかと期待したが、そんなことはなく、 だらだらとしたまま第一幕は終ってしまった。 幕が下り、場内アナウンスが流れる。 『第一幕が終了しました。ひきつづき第二幕が始まります』 「なに?」 まさかと二人は動揺したが、そんな二人はほっといて、幕は上へと上がっていった。 第二幕の始まりである。 「客に休憩もさせないのか?」 と会社員AもBも怒ったが、そんな彼らには周りの冷たい視線が浴びせつけられた。 「私語禁止よ」ぼそりと声がした。 「席を立たないで。前が見えないわ」 という声もしてきた。だが席を立ってもいくところはなかった。扉はすべて、閉め 切られたままである。ひきつづき上演されるので、扉もひきつづき閉め切られてい るのだ。 二人はくだらない劇を観続けねばならなかったが、しかし、その続きはどこかで見 たような話だった。役者が違うだけで、第一幕とまったく同じストーリーだったの だ。が、なぜか、話は第一幕からうまくつながっている。 最後にヤクザと警官が銃撃戦のまねごとをして、第二幕も終わってしまった。 場内アナウンスが流れる。 『第二幕が終了しました。ひきつづき、第三幕がはじまります』 「やっぱりか!!!」 会社員2人は叫んだが、どうにもならなかった。第三幕のあとにはすぐ第四幕が始 まったが、内容は前と全く同じである。そのあとの第五幕もそうであった。扉は閉 め切られつづけ、観てて眠たくなるようなクサい芝居がいつまでも繰り返されるの であった。 《当座サギサギ・終》 −−教訓−− タイプ39。EOFエラー。書類の終わりに問題があります。
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