短編 #0770の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
1 私の子供の話 この春、私の末娘も会社に就職した。 先日歓迎会があり、何か余興を考えておくようにと言われたので、割り箸を使って ビールの栓を抜く手品? をすることにした。 これは時折テレビ等で見かけるトリックで、自分で練習した時には1度もうまくで きなかったのに、宴会の本番には一発で栓が抜けて、ビールの泡がパッと辺りに飛び 散ったそうである。 ヤレヤレと言ったところ…。 2 島田氏の話 ラジオの人生読本の持間に、島田なにがしという世界的なMAGICIANの話を 聞いた。 マジックの技術・心・個性・商業性…。 「外国の観客の前で、燕尾服を着た日本人の私が、空中からボールを取り出す奇術を 演じて見せたとして、それがいかに高度な技術であっても、ショーとしての価値はあ まり高くありません。そこで、私は和服に袴を着けちょんまげのような髪型にして、 空中に傘を何本も開かせる手品を工夫しました。これは随分受けましたねえ。」 「今やラスベガスは家族ぐるみで楽しめるマジックのメッカ。ここの舞台に出演でき るようになれば一流のマジシャンです。」 3 子供の時の私と兄の話 私が小学2年生・兄が4年生の秋の1日、お祭りに呼ばれて、姉の嫁ぎ先へ遊びに 行った。 神社の境内は大層な人出で、屋台の店や見せ物が心を浮き立たせる。 その一角に、宗教活動のようなデモンストレーションをしている一群があり、人垣 の中で、中年の男の人が神秘的な奇跡について説明し、その傍らでは別の一人が呪文 を唱えている最中だった。 「門弟が今一心に祈りを続けておりますが、これは石上げの術と申しまして、ここに ある石が、やがて地面から約20センチほど浮き上がります。皆様方よくご覧下さ い。」 しかし、なかなか石は持ち上がらず、随分長く待たされた。 司会の男が言った。 「これは非常に集中力を要する技なので、暫く時間がかかります。その間を利用して、 教祖の早見先生をご紹介いたしましょう。」 「私が早見逆水です。私どもの**教では精神力を第一に考えておりまして、精神を 集中させることにより、何事をも見通すことができます。……そこで、ただいまから その念力をお見せいたしましょう。」 そう言って、群衆のうちの数人に筆箱の中から番号札を取り出させた。 「では、お持ちになっている番号を私が当てます。貴方のは56番ですね!」 「貴方はちょっと分かりにくいけれども、…82番ですか?」 無論、文句はない。 「それでは次に、私どもの霊験あらたかな神様のお札の不思議な力をご紹介いたしま しょう。この紙をお配りしますので、それに貴方がお聞きになりたい質問をどんなこ とでも書いてみて下さい。」 トランプくらいの大きさの薄手の紙が前の方の観客に配られ、それが回収されると、 早見教祖がそれを日光にかざした。 「このように太陽の光に当てますと、…答が紙に現れてきます。」 紙を1枚1枚読みながら、質問と解答を紹介していった。 「『私は先週見合いをしました。無事結婚できるでしょうか?』 ご安心下さい。ホ ラこの通り『大丈夫』と出ています。……」 中にはこんな室問もあった。 「『俺の財布の中に幾ら入っているか当ててみろ。』 『95円37銭』だそうです が、お確かめ下さい。」 「『明日は何月何日か?』 こんなばかばかしい質問には答えられないということで、 文字が出ません。白紙ですね。あまり幼稚な質問をお書きにならない方がよいかと思 いますが。」 先ほどから石上げの術を楽しみに待っているのだが、いっこうに変化はなく、その うちに休憩時間となってしまい、 「ただいまのお札を7枚一組10円でお分けいたしますので、ご希望の方はどうぞお 買い求め下さい。」 と言われて群衆の中の何人かが購入し、兄も大喜びで一袋買ったが、当時の10円 といえば、兄の小使銭の粗方をはたかねばならなかった。 昼になったので、姉の家に戻り、庭先で早速占いを実行した。 『弟の目は治りますか?』 そう書く手ももどかしく、兄はその紙を日の光にかざした。 「喜べ貝石! 『大丈夫』と出たぞ!」 二人は、この時ほど深く神様に感謝したことはない。 そこで兄はすばやく次の紙に質問を書いた。 『どうしたら治りますか』 すると、これはしたり。 『見込みある』 と出たではないか! 『本当に治りますか?』 『いつになったら治りますか?』 この2問に対しては白紙で答が出ず、さらにもう一度、 『どうしたら治りますか』 と書いて日にあぶったところ、 『心配ない』 という答が返ってきた。 「兄さん、今度は紙に何も書かずに日にあぶったらどうなるか、やってみようよ。」 「ウン。」 はたして、質問を書かない紙に、 『慎重に』 という文字が浮き出した。 かくして私たちは、ようやくだまされたことを知ったのであった。 午後からは、兄一人が見物に行き、帰って来て報告するには、 「やっぱりあれはごまかしだったよ。お客さんの中から一人の人が前へ出て行って、 太い鉄の火箸を小指で引っかけて簡単に曲げてしまったが、その時相手の人と顔を見 合わせてニソニソ笑ってた!」 昭和20年頃の小学生に、あぶりだし文字の知識が無かったのはやむを得ない所で ある。 [1997年4月23日 竹木貝石)
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