短編 #0667の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
読み終えて、思わず口走るほどのひどさ。 「これは……ひどい」 ついさっきダウンロードしたばかりの小説を読み、山サキはため息をついた。 話の筋は無茶苦茶だし、視点は変わりまくっているし、誤字脱字は山ほどあ るし、何よりも文章作法がなっていない。 山サキは保存価値なしと判断し、とっとと削除しようと思った。マウスをご ろごろ動かし、デリート機能を呼び出して実行……の直前、手の動きが止まる。 ここまでひどいできなら、小難しい理屈をこねずとも、簡単にけなす−−も とい、批評することができる。この新入りを、ちょっと叩いてやるのもいいか もしれない。それが古株としての務めじゃないか。素直に受け止めればそれで よし、出て来なくなってもかまうものか。 そう考えた山サキは削除をやめ、感想を書くために画面をもう一つ、開いた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 感想>「エターナル・サガ」 山サキ 初めまして、いいぐるさん。「エターナル・サガ」、拝読しました。いきな りきつい書き方になるかもしれませんが……とにかく、始めます。 ・ダッシュは共通する適切な文字がないので、「----」もしくは「−−」で代 用してください。今のままでは一部の人にしか見えていません。 ・リーダー点は「・・・」や「...」ではなく、「……」を使うべきです。 ・読点がときどき、「,」になっています。「、」に統一してください。 ・句点のあとを一升空けては、かえって読みにくい。詰めましょう。 ・会話文と地の文の間を一行空けるのは無意味です。詰めてください。 ・会話文の最初を一段下げて始めるのもやめましょう。会話文直後の地の文の 方を、一升下げてください。 ・とじかっこの直前の「。」は省略すること。 ・「?」「!」等に文が続く場合、記号の直後一升を空けること。文がそこで 終わる場合や、とじかっこが来る場合は不要。 以上の決まりは、実際の小説の九〇パーセントで守られているはずです。 ・「勇者は馬に跨り(略)勇ましく立ち向かった」「できることなら、危ない ことは避けたい」「だいず豆(=大豆豆)」等、同じ語の重複が目立ちます。 意味は通じますが、読んでいて見苦しい場合もあります。 ・「水道の蛇口を捻って」−−蛇口を捻ることは難しいです。普通、捻る部分 はカランと言います。 ・「幸先が悪い」−−誤用が定着したのでうるさく言っても仕方ないのかもし れませんが、「幸先」とは本来、よいことにしか使いませんでした。参考まで。 ・「けんけんがくがく」−−これは完全な誤り。「けんけんごうごう」と「か んかんがくがく」を混同しているようですね。 ・「的を得た」−−「的を射た」が正しい。 ・「とりつく暇もない」−−正しくは「とりつく島もない」。 ・「衛生都市」「城の内部に浸入する」「我が国の点滴」「親不幸」「膝まず く」「刀の唾」といった誤字(誤変換)も多く目につきました。 ・視点、描写方法について。同じ一つの場面で、視点がころころ変わるのはあ まり好ましいとは思えません。数えてみたところ、一つの場面で最大六つの立 場から描写していますね。読者は混乱してしまいます。多くても味方と敵の二 つ+いわゆる神の視点、この三つまでにとどめてほしいです。 また、不用意な描写も目につきました。例えば、主人公の味方のふりをして いるスーティの内面を描いた部分で、どう考えても本当に味方でなければ考え ないような思考をしているのは、まずいでしょう。極端な言い方をすれば、嘘 を書いているとさえ言えます。 ・主人公達の動きが、論理的でない。いや、まあ、愛と友情が全てであっても、 別にいいんですけどね。(^^;) この物語の中では、運のよさもあって(?)、 それでうまく行ってるし。でも、主人公の一行全員が同じ思考をしているみた く、感じてしまいましたね。一人ぐらい、反対を唱える「冷静な」役所のキャ ラクターを配してもよかったんじゃないでしょうか。 ・肝心なところで、敵が間抜け。さっきの「主人公達の運のよさ」に関連して、 人質を殺せるところで殺さないわ、処刑寸前に「冥土の土産」を持たせて−− つまり秘密をばらしてぐずぐずしている内に救出に来られちゃうわ、兵力が妙 に分散されちゃってるわ……。とにかく、わざと負ける方負ける方に向かって る感じを受けました。 この辺りでやめておきます。(^_^) お気に障りましたら、お詫び申し上げま す。m(__)m 次回作、期待してます。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 文章を書き上げると、山サキはファイル保存し、ついで通信ソフトを立ち上 げる。早速、UPしておくつもりなのだ。 午後十時五分。大都会とは言い難いアクセスポイントのためか、即、アクセ スに成功。ホスト局の応答は、最前より若干、遅くなっているかもしれない。 文筆創作コーナーにジャンプし、雑談用のボードを選択する。1.前回の続 きから読む、2.最初から読む、3.タイトル一覧、4.メッセージを書く、 の中から、とりあえず1を選んだ。 −−新しいメッセージは、ありません。 画面に表示された文章に、山サキはうなずいた。四十分ほど前に見たばかり なのだから、新たな書き込みがなくても不思議でない。 次に4を選ぶ。用意して置いた感想メッセージを書き込むのだ。五十行余り の文章は、一分もかからずに送信できた。 どんな反応があるかな−−山サキは、口元をふっとゆるめた。 いいぐるさんがどういうレスポンスをよこすかはもちろん、他の人達の反応 も楽しみだ。ま、誰が読んだって、同じだろうけどさ。 そんなことを思いながら、山サキは通信を終えた。 翌日の午後九時半頃、山サキは再び文筆創作のコーナーを覗きに行った。何 か書き込みがあるかなと、少しばかり期待しながら。 雑談ボードに行き、1.前回の続きから読む、を選んだ。 最初に表示されたのは、当然のごとく、昨日、山サキ自身がUPした文章で ある。 が、山サキはその時点で気抜けしてしまった。カウンターの番号を確認した ところ、山サキ自身のそのメッセージ以外に、新たな書き込みはなされていな いと分かったからだ。 自分みたいな暇人は、そんなにいないってことか。自嘲気味に笑いつつ、山 サキはさっさと通信を切り上げた。 それから二日後。山サキはまたも落胆を味わった。 −−新しいメッセージは、ありません。 どうなってるんだ? これまで、三日も続けて、誰も書き込まないなんて、 あったっけな? たまたま、みんながみんな、忙しいんだろうか。うーん。ま あ、もう一日ぐらい待てば、誰か何か書くだろう。期待する山サキだった。 が、彼の期待感は、その後も裏切られ続ける。 山サキのメッセージがUPされてから、五日経ち、一週間が過ぎ、十日にな った。やがて一ヶ月を迎える。 無論、山サキだって、黙って待っていた訳ではない。彼のような人間にして は珍しく、寂しさもわき起こったので、「オーイ。皆さん、どうしたの? 長 らくご無沙汰してますねえ」等の呼掛けのメッセージを書き込んでみたり、ホ ストコンピュータが故障した可能性を考え、2.最初から読む、を選択し、本 当に最新のメッセージが山サキ自身の物なのかどうかを確かめたりもした。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 何かあったのでしょうか 山サキ 皆様が書き込まなくなってから、すでに五週間が経過いたしました。何かあ ったのでしょうか? 私の他に、アクティブメンバーが二十名近くいたはずですよね、ね? 一人 や二人でしたら、偶然、忙しい時期が重なったりとか、ご病気になったりとか も納得できるんですけど、全員がアクセス不能になるなんて、考えられません。 もしかして、私のメッセージ中、皆様をご不快にするような部分があったの でございましょうか? もしそうであれば、はっきりと教えてください。反省 すべき点は反省いたすつもりです。 特に、いいぐるさん。あの感想メッセージが原因で、出て来られなくなった のでしたら、お詫びいたします。ご希望でしたら、削除にも応じます。 皆様からのご連絡をお待ちしております。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ===ラクガキのーと=== 1.前回の続きから読む 2.最初から読む 3.タイトル一覧 4.メッセージを書く ============= コマンドまたは番号=1 >新しいメッセージは、ありません。 コマンドまたは番号= −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 謎は解けた 山サキ 分かったぞ。みんなして、私をからかっているんだ。そうだろ? そうでな ければ、二ヶ月近くもだーれも書き込まないなんて、あり得ないからな。 ふん。どんな理由でこんなことしているのか知らないが、つまらない。ぜー んぜん、面白くねえ。おふざけは適度なところで収めるのが、粋ってもの。い い加減、やめてくれ。 ああ、それからな、みんなが書き込まない限り、こっちも書かないことにし たからな。無反応がどれだけつまらんか、思い知れ! −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ===ラクガキのーと=== 1.前回の続きから読む 2.最初から読む 3.タイトル一覧 4.メッセージを書く ============= コマンドまたは番号=1 >新しいメッセージは、ありません。 コマンドまたは番号= −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− どうしたのですか>ALL 山サキ おかしいじゃありませんか。私があれだけ低姿勢に出ても、あるいは突き放 しても、何もないなんて。もう半年になります。どうなっているのでしょうか。 教えてください。お願いします。 これまでのみんなが書かなくても、新しい人が来て書き込んでくれたってい いじゃないですか。それさえ一つもないなんて。 私、心配になりました。ひょっとして、私以外の人は全員、ここのネットを やめたのではないかと。そこで、よそも覗いてみたところ、安心できましたよ。 ちゃんと書き込みがあって、やり取りも活発なんです。うれしかったですねぇ。 少なくとも、この世界に独りぼっちになったんじゃないと分かった。涙が出そ うですよ。 でも、ここが閑散としているのは、紛れもない事実であります。これはどう したことでしょう? 皆さんが裏で示し合わせているのでないとすれば、何が あるか。考えてみました。 いやあ、難しいですね。けど、一つ、ありそうな可能性を見つけました。 −−皆さんは全員、同じ人なんですね? これなら納得できます。二十個近くIDを別々に取得して、様々な人格を使 い分ける。うーん、素晴らしい。難しいでしょうけど、できないことじゃない。 それをやり遂げた『あなた』は実に立派です。偉い。 それは認めますから、出て来てください。このままでは、私は退屈で死にそ うです。生き甲斐を感じなくなりました。ここでの活動を捨てることもできそ うにない。それはこれまでの人生の一部を捨てるに等しいから。頼みます、出 て来てくださいませ。 やい! 聞いてるのか! これだけ頼んでるんだ、読んだらすぐメールをよ こすなり、レスするなりが、礼儀ってもんだろーが! 三日待ってやる。それ でも返事なけりゃ、おまえをコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテ ヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシ テヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ===ラクガキのーと=== 1.前回の続きから読む 2.最初から読む 3.タイトル一覧 4.メッセージを書く ============= コマンドまたは番号=1 >新しいメッセージは、ありません。 コマンドまたは番号= −−終わり
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