短編 #0633の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「あなたの尻の拭き方は間違っている」 突然声が聞こえたような気がして喜三郎は凍り付いた。 いや、それは単なる気のせいだった。ここは自分の家のトイレ。声などする わけがない。(別に、働き過ぎでもないのにな)喜三郎は苦笑いした。 特に深い考えもなく水を流そうとした喜三郎。だが、さっきの言葉は妙にひ っかかった。 (間違っている……ねえ) 喜三郎は新しいトイレットペーパーをたぐり、もう一度自分の自分の拭き方 をシミュレーションした。まず、四つに折り畳み、右手でもって腰の後ろ側を 回し、臀部の谷間を中心線に沿うように下から上へ拭う。 紙を手に持ったまま拭き具合を眺めていたが、ふと何気なく新しいトイレッ トペーパーを引き出して折り畳んだ。紙を持った右手を腰の後ろ側へ回し、今 度は上から下へ押さえるようにして拭いた。 (やっぱ変だ。こんなの普通の拭き方じゃない)喜三郎は紙を流そうとした。 (そうだよな。普通のやつは……)急に喜三郎はその考えに自信がなくなった。 普通、というが自分は他のやつが尻を拭くのを見たことがあるのか。 喜三郎は新しい紙を出し、足を拡げ手を前から股の間に突っ込み拭った。 (いくらなんでもこんなことはしないだろう)それで実験は終わりにするつも りだったが、紙を水に落とそうとしてふと思いついた。本当に紙はこうやって 畳むものなのか。 勢いよく紙をたぐり寄せると、くるくるっと縦長の巨大なこよりを作った。 体の前後でこよりを持ち、鋸でも挽くかのように拭いてみる。(こんなもんは 普通じゃない)紙をくしゃくしゃに丸め、尻の間に挟んで揉みほぐす。(拭い た気がせん)紙を便座いっぱいに拡げ、思い切りなすりつける……。 ……三日後、喜三郎はトイレをウォシュレットに変えた。 [完]
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