短編 #0618の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ぼくはかあさんの落とし物を探しに、沼の脇を歩いている。今、濁った水面には真 っ赤な夕日が写り、ぼくのポケットには昔稼いだ数枚の金貨がちゃりん、ちゃりんと 涼しい音を立てて鳴り響いている。 ぼくは薮や、泥の中をかき混ぜ、かあさんの落とし物を探していたが、いくら探し ても見つからなかった。 それもそのはずだ。かあさんはぼくに落とし物が何だったのか、はっきり言わなか ったのを思い出した。ただぼくの顔を見ては、面白そうに笑い、行けばわかると言っ ていたのだった。 諦めて帰ろうとしたとき、あーん、あーん、あ〜ん、暗い水の底で何かが泣いてい る声が聞こえてきた。ぼくは泥の中に入り、それを拾った。それは顔のない赤子だっ た。 ぼくはその赤子を背負いかあさんに落とし物のかわりにこの赤子を家で連れ帰ろう とした。赤子は低い男の声で、おまえを長い間待っていたぞと耳元でつぶやいた。 その声を聞いたとたん、ぼくは、昔、この沼で男に石をぶつけて沈めたことを思い 出していた。かあさんは、昔ぼくがしたことを知っていて、罰を与えるために、ここ で落とし物をしたと嘘を言ったのだった。 背中の赤子は石のように重くなり、ぼくは泥の中にどこまでも沈んでいくを感じて いた。
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