短編 #0617の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
※以下は当然、フィクションです。 「お題の方が書き上がりました。改めて、順番に見ていきましょう。『チョコ レート』、『酒』、『味知らぬ、天丼』。本日のお題は、以上のように決定し ました。 では、Zさん、Tさんのお二人には、先攻後攻を決めるじゃんけんをしてい ただきましょう」 「ったく、食いもんばっかり選びやがってぇ。ストーリー、一個しかこしらえ られへんがな」 「にいさん、余裕でんな」 「んなことあるかい! もう、開き直っとんのじゃ」 「せやったら、後攻いかしてもらいまひょ」 「勝ってから言え。行くで。−−あ、最初はグー、じゃんけんほい! ……あ あ、負けてもた」 「先」 「あれ? おまえぇ、さっきと言うとることちゃうやないか」 「僕も一個しか話ができませんねん」 「先攻はTさんと決定いたしました」 えー、人間いうのは面白いもんですね、ほんとに。色々好みがあって。僕は 大阪の人間ですから、特に食べ物にこだわってしまいまして。こないだも、友 達何人かと中華料理屋へ行ったんですわ。大きな皿に色んな料理載せて、テー ブルの真ん中にでーんと置いてあります。それを小皿に取っておかずに、白い ご飯を食べていくんですね。僕の隣におった奴がマーボードーフを食べよった んですわ。そいつが一人で食べてたらええんですけど、『Tちゃん、これ、お いしいで。食べてみ。ほら、マーボー丼』って、いきなり僕のご飯の上にマー ボードーフをかけてきよった。わしは丼にしたあなんかないんや! マーボー ドーフはマーボードーフで食べるいうのに、勝手なことされて、ほんま、気ぃ 悪い……。 『あなた。晩御飯、できたわよ。一緒に食べましょ』 『おう、そうか。今夜は何や』 『とにかく食べてみて』 『何や、もったいつけるなあ。−−どんぶりかいな。会社の食堂で、昼に食べ たで』 『何どんぶり?』 『天丼や。しょぼい海老の入った天丼』 『よかった。私が作ったのも天丼だから』 『な、何やそれ。同じやったらあかんやないか』 『いいから、ほらほら、蓋を取ってみてよ』 『しゃないなあ、まったく。……何やこれ? 妙なにおいがするぞ。甘いよう な、むせるような』 『うふ』 『気色悪いの。何の天丼や?』 『天丼は天丼よ。ただし、味知らぬ、天丼だけど』 『ごっつ、怪しげや』 『それもね、<みしらぬ>の<み>は、<見る>じゃなくて、<味>の方なの』 『……ちょっと待て。じゃあ、何か? おまえはこの得体の知れんもんを味見 もせず、俺に食わそうと言うんかい』 『そういうこと。未知との遭遇よ』 『開き直ったな』 『これしか用意してないから』 『とりあえず、食べてみるか。材料は?』 『だから、食べて、当ててみてって』 『……これ、酒のにおいや。おまえ、まさか』 『そうよ。あなたが大事にしている<Eの寒梅>、使わせてもらったわ。あん なもらい物、後生大事にちびちびなめてるのって、情けないったらありゃしな い。さっさと空っぽにして、安酒に戻しなさいな』 『くぅー、勝手なことを。くそ。酒を天つゆに混ぜるとは。いくら天ぷらの衣 にビールを入れたら風味が増すからって、日本酒を入れるなんて』 『冷めちゃうわ。お酒の香りが抜けない内に、早くどうぞ』 『……さっきから気になってたんだが、この甘ったるいの、何やねん? それ によう見たら、天ぷらの中から黒い物が染み出てきよった』 『あらら。溶けだしたみたい』 『溶ける? ……なめてみたろ。……甘っ! こ、これ、チョコレートやない かい!』 『当ったりぃ』 『冗談やないぞ! 食えるかい、こんなもん!』 『どうして?』 『決まっとるやないか。こんな、常識外れの料理の仕方』 『どうしても食べられへん?』 『おうっ。おまえもなあ、もうちっと、まともな考え方せえよ。長い付き合い ねんやから』 『……私、よかれと思ってしたことやのに、裏目になるなんて……天丼だけに、 つゆとも予想せんかったわ』 ででん(お囃子の太鼓) ああ、やっぱり、似たような話、考えとった。しもたな。 ま、ええ。何とかなるやろ。 『えー、かつてない料理番組、<何とかなるやろ>のお時間です。今日のテー マ、えー、<味知らぬ、天丼>、これですな。 では、ここでゲストの舞さんに出て来てもらいましょう。さあ、舞さん。よ うこそ』 「初めましてえ。私、料理苦手ですけど、頑張りますう』 『かわい子ぶっても、ここでは通用しません。自信ないんやったら、私の言う 通りにやったらそれでいいんです』 『でも』 『何か文句あるんか? ばーん!て、いてまうでぇ』 『は、はい。分かりましたあ』 『何や、その返事は! ちゃんとした日本語、使わんかい』 『えー、でもう、Zさんの話し方だっておかしい』 『これは伝統的な大阪弁です。だからいいのです。舞さん、あなたの話し言葉 には伝統がありません。それだけでもう失格』 『納得行かなあい』 『うるさい! ごちゃごちゃ言うんやったら、包丁の背で、いてまうで!』 『わ、分かりました。早く、料理したいな』 『よろしい。今日のテーマは味知らぬ天丼。天丼の味を決めるのは、最終的に はたれ、これです。だから、たれ造りをやります』 『材料は何を使いますか?』 『お酒とチョコレートが欠かせません』 『お酒はともかくとしても、チョコレートですか。と、とても、天丼にかける たれには思えませんね』 『何が言いたいんや?』 『い、いえ。凄く独創的だなって』 『そうなのだ。私は常に独創的なのだ。だからこそ、味知らぬ天丼と言えるの だー! 分かったか!』 『はい』 『よろしい。では、始める前に、手順を言っておこう。まず、鍋を用意し、お 酒をなみなみと注ぐ。それを煮立てて、ぐっらぐっら言い出したら、この大量 の板チョコを、細かく割った物をどんどん放り込んでいく。もう溢れんばかり に、どっさりと。それも溶けてどろどろになったところへ、醤油を数滴垂らし、 鰹の削り節をぶち込みます。それをまた、ぐっらぐっら、ぐっらぐっらと煮詰 めて、削り節がとろとろになったら、濾してください。それで完成です』 『は、はあ……』 という訳でー、料理に取りかかりました二人は、協力してたれを完成させま した。 ・・ 『Zさん、このたれ、だれが味見するんですか?』 −−あかんな、こんな下げは。これやったらTと同レベルや。天丼だけにつ ゆ知らず、なんてあほくさいの、やれるかい。 『それは決まってる。ゲストの君だよ。この通り、白いご飯に天ぷらも用意し てある』 『ええー?』 『ええ、じゃない! 芸能界は厳しいんだ。落語の世界もアイドルの世界もお んなじやろ』 『私、お笑いはやりませーん』 『何ぃ? 逆らうんか? 多少の違いはあっても、大先輩やぞ、俺は。もう堪 忍袋の緒が切れた。もう番組は終わりや。おまえを具にしてやる』 Zはゲストをつかまえると、包丁を振るってぶつ切りにし始めました。 『ほー、たくさん肉が取れたなあ。これはええ料理がでける。誰も食うたこと のない天丼を作れる』 Zは天丼を完成させましたが、その瞬間に警察が踏み込んできました。 『こら、Z。おまえを殺人容疑で逮捕する!』 『な、何でばれたんや。中継は切らせたはずやぞ』 『おまえが天丼を作ったからだよ』 『−−ああ、そうか。はみ出た尻尾をつかまれたんやな……』 でんでん(お囃子の太鼓) −−終わり
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