短編 #0588の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
この表題は、かつて私が自費出版した『ベルタ おいで』(盲導犬と共に)という 小さな本の中で用いたタイトルと同じである。 人間は、悲しい時・苦しい時・失意の時よりも、嬉しい時・楽しい時・得意の絶頂 にある時こそ注意が肝要で、気が緩むと取り返しのつかぬ大きな失敗をしかねない。 私自身そういう経験が何度もあり、大学入試に合格した時には有頂天になって、 ついつい高慢な人間に見られたり、学校に勤めてからも、正論が通った後で思わぬ 巻き返しをくらったり、自信満々で打ち込んでいた教育が空虚なものであったり、 愛情を傾けて教えてきた生徒に裏切られたり……、それらは私の人生そのものであっ たような気さえする。 1 パソコン ここで書くパソコンの話は、それほど深刻な出来事ではないが、それでも上の教訓 がよく当てはまる。 (1) 私がパソコンを始めたのは、AOKという点字ワープロが最初である。 これがなかなか起動しなくて、やっと動くようになるまでに、半月かかった。 ようやく快調に使えるようになったので、今度はDISK BASICで音楽を 作ろうと考えた。 ところが、AOKとBASICを切り替えるのに、SWITCHコマンドを使って いたのが、あまり度々繰り返したせいか、それともパソコン本体のディップスイッチ の設定とぶつかっていたためか、突然ストップして、ウンともスンとも言わなくなっ てしまった。 これの回復に、どれほど苦心したことか! (2) いよいよハードディスクを取り付ける決心をし、当時100メガバイトで12万円 もするICM社製の物を購入した。 マニュアル類を読んでもらってテープレコーダーで録音して勉強したので、「初期 化」「領域設定」「領域確保」「アクティブとスリープ」「システム転送」…と順調 に進み、私としては珍しくスラスラと組み込みに成功した。 そこでよせばよかったのに、あちこちのディレクトリーを分割あるいは整理して、 納得のいく階層構造に整えようとしたものである。 けれども、まだかろうじてハードディスクという物を使い始めた私などには、所詮 無理な作業であったらしく、パソコンを立ち上げ直してみると、グルグルグルグルと あちこちのディレクトリーやコマンドを回り歩いて全然停止しなくなってしまった。 無限ループにでも入ったのだろうか? 今ならSTOPキーかESCキーを押して 止めることもできるが、その時は途方に暮れ、仕方なく電源スイッチを切って、 もう一度ハードディスクのフォーマットからやり直しをしたのであった。 (3) リムーバブル ハードディスクを取り付け、2枚目のディスクの組み込みとエラー チェックに苦労した話については、以前このボードに書いたが、あの時の失敗も、 1枚目のディスクの設定・起動が順調に出来上がった直後のことであった。 (4) 昨日と今日は連休で、VEMというメモリーツールを組み込む作業をした。 元来私はパソコン下手なので、PCVANで質問を出しながら、関連する色々な ツールをも組み込んで、CONVENTIONAL MEMORYがほとんど空っぽ になるくらいにまでメモリーを整理・節約することができた。 こんなにうまく出来たのならと、もう1台のコンピューターとリムーバブルの ディスクにも、このメモリー設定をしてみようと考えたのが誤りだった。 詳しい経緯は省くが、このリムーバブルは私の場合、もう1台のハードディスクと 連動して立ち上がる方式になっており、さて、VEM・ALLUMB・HMACFG MVCOM・RSETVなどを使ってメモリーを変更したところ、全く動かなくなっ て、二日間の連休を無駄にしたどころか、リムーバブルのディスク1枚をアクセス 不能にしてしまったのである。 2 友人の新築と車の事故 妻の中学時代からの友達が交通事故で鞭打ち症になり、5ケ月過ぎた今も、まだ頚 が十分回らない。 交差点で、こちらが青信号だったのに、左から信号無視で走って来た車に横合いか らぶつけられ、意識不明のまま救急車で病院へ運ばれたそうである。目撃者が 居て証言してくれたからよかったものの、当初、加害者は警察の取り調べに対し、 「自分は間違いなく青信号で渡った。」と主張して譲らなかったとのこと。 不幸中の幸い、被害者のBさんは頚の運動制限の他には、右手が少ししびれる感じ がするだけにまで回復したが、一つ間違えば命に関わる重大事故であった。 従来Bさん宅は、住まいと仕事場と販売の店とが一つの建物だったのを、 その家の裏側に土地を購入し、今年の1月に住居を新築したばかりだった。 本人も言うように、もしかしたら「普請負け」ということもあるのだろうか? えてして、『良い事の後には良くない事がある』というのは世の常の現象、私は決 して縁起をかつぐ訳ではないが、新築というような大仕事を終えた後は、気疲れする とか、ホッと気が緩むとかで、集中力が抜けることもありそうに思える。 友人の運転に落ち度があったとは言わないまでも、あの時、もし交差点で、 「もう一瞬早く相手の車の暴走に気がついていたら…」ということは全くなかった のだろうか? などと想像してしまう。 3 順調な時こそ [以下の文章は、『ベルタ おいで』より抜粋した物で、私が札幌から東京に出て きて、一ヶ月間の盲導犬訓練を受けていた頃の話である。] 私どもは必死で研究しました。時にはうまくいかずにがっかりすることもありまし たが、おおむね順調に進歩していくようでした。 毎週土曜日には、一人ずつ歩いて、先生方にテストしていただき、合格点に達した ら次のコースへ進みます。歩く距離も次第に増して、卒業時には一人当り通算150 キロを越えました。幸い好天が続いたので、訓練の出来なかった日は一日もありま せんでした。私ども訓練を受ける方は、毎日キロ数が増えていくのを楽しみに歩きま したが、先生方にしてみれば、4人分を歩かなければなりませんから、さぞ大変だっ たことでしょう。 2週目すなわちBコースに入ったある日、突然Yさんが膝関節を痛めて歩けなくな りました。色々手を尽くしたにも関わらず、結局、涙を飲んで舞鶴へ帰るのやむなき に至ったことは、実にお気の毒でした。 そろそろ全員に疲れが見え始めました。私は日頃、小登山や市民歩け運動などに参 加して足を鍛えておりましたので、全く疲労はなく快調でした。 ところが、そう思っていたある日、ちょっとしたコンクリートのでこぼこに躓いて 生爪を剥がしてしまったのです。幸い化膿することなく治りましたが、物事に慣れた 時、うまく行っている時こそ、最も注意しなければならないという教訓を、身にしみ て味わわされました。
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「短編」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE