短編 #0574の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
漱石のため息1 我が輩は犬である。それもただの犬である。我が輩のご 主人はじいさんである。ひとり暮らしのじいさんである。 趣味は盆栽いじりと読書である。昔はさる有名な大学の先 生をしてたらしく、書斎にはびっちり本がドア以外の壁を 埋め尽くしているのである。そして、じいさんの話相手が このオレなのである。 近頃は犬の世界も住みにくくなってきたもんだぜ。最近 このじいさん、犬についての話を研究しはじめた。童話に 出てくる犬の話からノンフィクションの犬の話まで読みあ さっているのである。そして一冊の本を読み終わるたびに オレに話かけるのである。 「なあー。漱石(これオレのなまえ)おまえ、この花咲か じじいにでてくるシロって犬のこと知ってるか。賢くてな よく働いて、宝物は掘り出すしな。灰になってもじいさん にいい思いを差せてやったんだぞ。」 最後は口の中でぶつぶつとなにか言うのである。そして、 じーっとオレの顔を見つめるのである。少し危ないじいさ んである。 「おまえ、名前負けしとらんか。」 とか言いながらため息をひとつして、また次の本を読み はじめるのである。 まったくオレにはいい迷惑なのである。漱石なんて名前 勝手につけといて良い気なもんだぜ。オレにこのシロみた いになれってそりゃー無理な話だぜ。ありゃー昔話。この 世に埋蔵金を嗅ぎ分ける犬なんかいる訳がない。いくら犬 の鼻がいいったって。麻薬犬や警察犬くらいで勘弁してほ しいぜ。それに、あっちこっちコンクリートだらけ、庭だ ってネコのひたいほど。ここ掘れワンワンなんてやった日 にゃー大変だぜ。へたに掘れば水道管、ガス管なんかにぶ ちあたっちまうし。宅地開発で散々ほじくりかえしたあと になにが出てくるってんだよなあ。地盤が傾いちまうぜ。 そりゃー昔話でなく忠犬八公みたいなのやタロ、ジロな んてすげーのがいたけども全部が全部あんな犬だなんて思 われたらたまったもんじゃないぜ。 人間様と同様犬世界の中だって怠け犬もいるし勉強家の 犬だっているんだからなあ。 オレはといったらそうだなあー自分でいうのも照れるが 物知り犬の部類にはいると思うぜ。 しかし、世の中どんどん変わってくんだよな。生活様式 が変わってきてるんだから当然犬社会だって変わってきて るんだぜ。座敷ブタならぬ座敷犬なんかが増えたしな。自 前の100%の毛皮があるのにポリエステルだかウールだ かしらないが服を着る犬まででてくる時代だし、散歩だと いって車や自転車に乗っていく犬もいるしなあ。飯といえ ば非常食見てーな缶詰ばかり。いくら栄養を考えてあるか らったってよ。科学薬品や漢方薬を入れたり、自然じゃな いぜ。缶詰は所詮缶詰よ。ありゃー不精な人間の考えたも んだぜ。パッカーンと缶のふたをあけるだけ。思いやりも 愛情も入ってないんだぜ。あんなのを喜んで食う犬は犬じ ゃないぜ。 オレ、つくづく鏡をみて思うぜ。犬ってなんぞやって。 犬らしい犬ってどんなのか忘れちまいそうだぜ。 あーまたじいさんがやってきたぜ。今度はどんな本を読 んできたんだか。オレにとんでもない高望みをしょうてか。 「おい、漱石。どん松五郎って犬知ってるか。あの犬はな、 人語を話すんだぞ。ネコも年とると化けネコになれるそう だ。おまえ、この家にきて何年になる。一言ぐらい話して もばちは当たるまいよ。」 と、じーっとオレの顔を見つめてる。 (おい、おい、じいさんしっかりしてくれよ。ありゃー小 説の中の犬だぜ。) まったくこのじいさんにはつきあいきれないぜ。そこで オレはひたすら寝てるふりをすることにした。まともに、 つき合ってた日にゃーあほ犬になっちまいそうだからな。 「わしは、いい犬にめぐりあいたいなあ。」 そうつぶやくと、また次の本を読むために書斎に行って しまった。 まったくいい気なもんだぜ。そんな犬がいたらオレがお 目にかかりたいもんだぜ。 オレみたいな境遇の犬たちよ。お互いがんばって生きよ うぜ。
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