短編 #0514の修正
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車道を挟んだ向かいの花壇には、大輪の薔薇が濃桃色と淡桃色を競うように大 胆に花開き、純白の薔薇は密やかに微風に揺れ、黒い薔薇は気高く初秋の空を見 上げ、濃黄色の薔薇と淡黄色の薔薇は清々しく芳香を放つ。 桜の古木は梢の先の方から次第に秋を演出し始め、その木陰では木瓜の実が色 付き始めている。 木槿の神秘的な淡い紫の花は、留まることもなく開き続けているが、大凡の木 々は華やかな色合いで実を結び初めている。 遠目にも山肌は単調な緑色から、黄色や紅い色へと日毎に様を変え、野原には 彼岸花の紅が映え、沿道には秋桜が揺れている。 … 今年も確実に秋は巡り来た。 生憎の曇り空の下で未だ早い夕刻前に、秋の虫が美しい音色を奏でて居るのは既 に風が秋の其れに変わったことを教えている。 初夏の透明な陽射しを浴びてやわらかい緑の先に白い小さな鈴を連ねていた鈴 蘭の花もいつの間にか落ち、その葉も堅さを見せる濃い緑色に変わり、その中の 幾つかは今年も赤い実を結んだ。 鈴蘭の白い花が咲いている頃には気にも掛からない事が、こうして赤い実を結 ぶ頃になると、決まって遠い想いに巡り逢った様な錯覚で懐かしく蘇る。 今は こうして一坪余りまでに群生している鈴蘭も、元はたった一株の鉢植えだった。 … さあ、幾歳月が積み重ねられたのであろうか… 十年、二十年… もっと だったろうか… 啓子が鈴蘭の鉢植えをくれてから、既に二十数年… あの夜、 間違いなく殺した啓子が、今此の花壇の鈴蘭の下で眠って居たとすれば、既に肉 は無く、骨さえも啓子の影など残しては居まい。 かろうじて、その白骨が、啓 子のものだと分かるとすれば、首に巻き付いたままの帯留めと、ふくよかだった 筈の胸の辺りで錆ついたナイフくらいか… もしも… あの嵐の夜、間違いなく 殺した筈の啓子が… 眠って居ようと、眠って居まいと、今年も秋は来たのだ。 聖 紫
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