短編 #0490の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「結晶と言葉」 耳にこべりつくような物凄い轟音が、どこからか聞こえてくる。 小さな脅えきったた瞳はとても美しく、ぼくを惹きつけてやまない。 だから、それは不思議と平穏日なのだった。 それは、ぼくが望む全てでは無くとも、大半を締める割合で幸せを感じているのだ。 物凄い轟音は、落雷の音? それとも地面の割れる音? そして、広大な天井から差し込む鋭い光。 「ねえ、しあわせ?」 脅えながらも、なんとか振り絞るようにして声を出すきみ----それは、ぼく。 「ああ、しあわせだ」 見合わせるきみの瞳の奥に写る、暗黒の闇。 揺れ動く世界は、まるで揺りかごのように心を落ち着かせてくれたのだ。 だから、ぼくは守ってあげたい----そして、守ってほしい。 「それはエゴイズムね」 きみは微笑みながら、ぼくに言うけれど。 「それもエゴイズムだ」 ぼくも微笑みながら、きみにいうけれど。 お互いに顔を見合わせて、ひとしきり笑いあう。 きみの顔を心に刻みつけようと、必死になっていた事をふと思い出した。 それはぼくにとって、最大の試練であるかのように繰り返された。 そんな事は、何一つとして必要ないのに。 不安そうなきみは、ぼくの鏡なのだ。 だから、ぼくは大丈夫。 「わたしは強いわ」 彼女は弱々しい声でつぶやく。 「ぼくは弱いんだ」 ぼくは、はっきりとした口調で言い切る。 何も無い、空虚な世界へと旅立つ事を憧れているきみは、確かにぼくより強い。 ただ、強さは何より弱く、脆いものだと言うことをぼくは知っていた。 すべては逆転の構図。 ぼくは、不幸だった。 それ以上に、ぼくはしあわせだった。 後ろを振り返りつつ、前を見ずに、言葉に発することもできずに、態度でも示せず に、心を開けれずに、生きる術をしらずに、何にも興味が無く、夢を持たず、何も聞 けなくて、何も触れることもできずに、ただ歩き続けていた。 熟れすぎて潰れたトマトのような夕日が、ぼくたちの細長い影を作っていた。 きみは、誰? ぼくは、誰? わからなかった。 それが、心から楽しかった。 闇へと移行する街並は、ひっそりとしていた。 「あいしているよ」 言葉はすぐに風化する。 「あいしているわ」 風に乗って流される。 後には何が残るのか、わからなかった。 沈みきった太陽の代わりに、空高く昇って行く巨大な月。 細々とした光を放つ、小さな----本当は巨大な恒星たち。 見渡す限りの、無人の街。 死を宣告された、全ての人。 ぼくの理性は感情を抑圧し続ける。 きみの感情は理性を抑圧し続ける。 広大な天井の片隅に、色々な世界が渦巻いている。 ぼくは否定した、全てを。 きみは肯定した、全てを。 ただ、ぼくは全てを愛していたが、きみは全てを憎んでいた。 天高く舞い上がる龍の背に乗り、遥かなる世界をふたりで目指そう。 「わたしは、ここにいたいの」 それは、拒絶のことば。 「ぼくは、ここにいたかった」 それは、否定のことば。 言葉は全てを伝えられない。 心は、全てを覆いかくしてしまう。 「ねえ、わたしはしあわせだわ」 感情のない瞳。 「ああ、ぼくもしあわせだ」 色あせる、全て。 きみの涙は結晶になり、天井の片隅に世界をつくりだす。 ぼくは創造することが出来る、きみが羨ましかった。 ただ、それは、嫉妬ではなく羨望の念だった。 そして、ぼくは言葉を紡ぎ出す。 それは、何一つ残すことが出来ない、ぼくのただ一つの願いだった。 (おわり)
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「短編」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE