短編 #0441の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「アルバム」 写真立ての中の一枚きりの写真。 ぎこちない微笑みを浮かべる僕の横で、楽しそうに腕を組んで来た君が写ってる。 写真を見る度に思い出す情景は一つだけだった。 まだ、恋とも呼べないような、ほろ苦いときめきを胸に、時に哀しく、時に楽しく。 一緒に過ごした日々は、もう帰らないのに。 幾度となく繰り返した、出会いと別れの中で、他の娘には悪いのだけれど、一度で も君のことが頭から離れた日は無かった。 もちろん、繰り返すつもりはない。 ただ、淡い思い出としての、君と過ごした日々を思い出すだけで満足だった。 そう、あの日までは----。 午前中はあんなに良い天気だったのに、急に降り出すなんてついてない。 僕は、重々しくのしかかって来るような雲を軽く睨むと、暫くためらった後、意を 決して雨の中へと飛び出した。 それが、全ての始まりだった。 それが、全ての終わりだった。 僕が、鞄を傘変わりに、頭の上にかざして走っていると、君を見つけた。 五年振りの再会だった。 僕が思わず立ち止まると、驚いたような顔をして、君も立ち止まった。 長い、長い、永遠に続くと思われる程の一瞬の後、君はあのころの僕のように、ぎ こちない微笑みで答えてくれた。 「ひさしぶり、ね」 目の前で、今の君と、五年前の君とがオーバーラップする。 僕は、言葉が出ないまま軽く肯くと、逃げ出したくなる衝動を必至に押さえた。 いつも、会いたいと思っていたのに。 会えば、もっと切なくなるのも分かっていた。 「元気‥‥だった?」 僕はなんとか声を絞り出す。 「うん、まあ、ね」 簡単な挨拶だけで、僕たちは別れ、別々の道へと歩き出す。 僕は歩きながら、涙が溢れ出るのを感じていた。 もっと、色々と話したかったのに。 もっと、一緒にいたかったのに。 今は雨が心地よかった。 身も心も雨で濡れている。 微かに震えているのは、心の震えだろうか? 後は、大粒の雨だけが、全てを洗い流してくれる感じがした。 ★ それから、数日経ってから、君からの電話がかかって来た。 そして、幾度と無く友達として会うようになったのだが、心が張り裂けそうだった。 切なくて、哀しくて、こんなことなら会わなかった方が良かった。 しかし、君と一緒にいる時には、顔には表わすことが出来ない。 友達以上には、なれないことは分かっていた。 もし、友達以上になれたとしても、うまくやっていける自信も持てなかった。 同じ繰り返しになるのを、心のどこかで恐れているのだろうか? 一人の時には、自然と涙が溢れて来る。 昔のアルバムをめくると、楽しそうな君の笑顔と、はにかんだ僕の笑顔が写ってる。 そして、今の写真には、はにかんだ二つの笑顔だけが焼き付いていた。 何かが違っていた。 何かが変わっていた。 君と会っている時でも、瞼を閉じて浮かぶのは、あのころの君。 五年の歳月と共に、君も、僕も、変わってしまったのだろうか? 僕の知っている君がいて、僕の知らない君がいる。 すべては時と共に変貌し、いつしか風化していくのだろう。 僕が好きだったのは、あの頃の君。 いや、あの頃の君をモチーフにして、嫌な部分を切り捨てた、理想しての----愚像 としての君が好きだったのだろう。 君への憧れが恋に変わり、恋から愛に変わり、そして別れた後、いつしか思いだけ が独り歩きをはじめてしまったのだ。 心の中の価値感が、音を立てて崩れていくのを感じていた。 やっと、君の愚像の呪縛が解けるのを感じていた。 いつしか、アルバムのページを一緒に積み重ねていくのは、もしかしたら君とかも 知れないし、君の知らない他の人とかもしれないが、きっと、沢山の中の一つの思い 出として笑い飛ばせるだろうと感じていた----。 (おわり)
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