短編 #0428の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
1 今年は日本放送開始70年ということで、NHKのラジオ深夜便などで、懐かしい 番組を幾つか放送している。 今夜は、川端康成と高村光太郎のインタビュー録音、その後、徳山 環(文字不明) の歌である。一通り聞き終わってから、特に〈川端〉について、私の感想を書いてみ たい。が、Uploadするのは明日の昼頃になるだろう。 (以下は、私の聞き覚えなので、記憶違いも多いことと思う。) アナウンサー:「川端康成さんは、明治32年の生まれ……。この録音は昭和34 年、NHK教養特集で放送した物です。聞き手は、池島晋平(文字不明)さんと島中 ホウジ(文字不明)さんです。」 注記(オークフリー):川端康成の声を聞くのは初めてである。もっと老人くさい声かと 思ったが、案外であった。あまり良い声とは言えず、フワッと、軽く額から抜けて行 ってしまいそうな音質だが、話し方はさすがである。ゆっくりと間を置いて、自分の 言いたいことを的確に言い切る。ぶっきらぼうの中に、不思議なユーモアが漂ってい る。 (会話は、ごくゆっくりと、間を置いて進められたので、読者諸氏は、適当に区切 りや…を挿入してお読み頂きたい。) 問い:「川端先生は、ご自分の文学を、どのように見ていらっしゃいますか?」 川端:「怠け者の作品です。」 問い:「どういう意味で、怠け者とおっしゃるんですか?」 川端:「怠け者ですよ。」 問い:「先生の色々なご活動を拝見していると、決して怠け者とは思えませんが …。」 川端:「何しろ面倒なことはしませんから。」 問い:「でも、評論なども沢山書いていらっしゃいますね。」 川端:「書きました。」 問い:「川端先生に対する評論はお読みになりますか?」 川端:「読みますよ。」 問い:「それを、どうお思いになりますか?」 川端:「読むには読んでも、あまり従いませんから。」 問い「お弟子さんの某(名前を聞き落した)さんが書いた小説に対し、構成が悪い と言う評論がありましたが…。」 川端:「師匠に構成力がないんだから、そうなりますよ。」 問い:「構成力はありませんか?」 川端:「無いですね。」 問い:「例えば、長編小説をお書きになる場合も、先に結末とかはお考えにならな いんですか?」 川端:「考えません。」 問い:「女性の描き法が独特だと言われていますが、それはどうなんでしょう?」 川端:「そうですか。」 問い:「独特で分かりにくいと言う人もいますが?」 川端:「それぞれの作品には、経過という物がありますからねえ。その内のどれな のかと言うことですよ。」 問い:「女性の方が書きやすいですか?」 川端:「楽ですから。」 問い:「男性よりも女性の方が、どういう点で楽なんですか?」 川端:「男性には職業があるので、それを調べなきゃならない。私は怠け者だか ら。」 問い:「これからは、女性も職業が増えてきますね。…、ところで、先生は、女性 の手も握ったことも無いと言う説がありますが。」 川端:「そんなことはありません。」 問い:「外国で、川端文学はどのように評価されてますか?」 川端:「分かりにくいかも知れない。」 問い:「日本女性の恋は複雑だとか、そんな評論もありましたね。」 川端:「千羽鶴とか。」 問い:「なるほど、千羽鶴…。東洋の恋は難しいということになりますか。」 川端:「難しいと言えば、何だって難しいですよ。」 問い:「誰かの文章を手本にされたということはありますか?」 川端:「菊池さんには随分世話になっているからねえ、しかし、手本とは違うよう な気がするし、志賀さんの作品も沢山読んでいるけど、これとも違う。」 問い:「新感覚派とも言われましたが、それについてはいかがですか?」 川端:「そう言われた時期には、少しそのようにも書いてみました。」 問い:「新感覚派だと言った人は誰ですか?」 川端:「… …さん(聞き覚えのない名前)です。」 問い:「プロレタリア文学については、どう思われましたか?」 川端:「私は割合理解できましたよ。違和感はなかったですね。」 問い:「最近の若い人たちはどうでしょう?」 川端:「色々ですが、まず、概して良くないですね。」 問い:「どういう文章を好まれますか?」 川端:「私は、耳で聞いて、分かりやすい文章を書くようにしています。」 問い:「ホオー、音で聞いて解る文章ですか。」 川端:「世の中には、漢語ばかりで読みにくい物もあります」 問い:「誰の作品がお好きですか?」 川端:「森鴎外、志賀さんの物、宇野千代さんのもいいです。」 問い:「今日は、ラジオ出演ということで、テレビだったら、先生のそのギョロリ としたにらみが、また格別なのに、やや残念な気もいたします。」 川端:「そうでもないでしょう。」 問い:「今回、NHKの放送に出て下さいとお願いに行ったら、先生が、へこまさ れに行くのか とおっしゃいましたが、結局はこちら二人がへこまされてしまいまし た。」 川端:「だったら今へこまして下さい。」 (一同爆笑) 問い:「本日は、どうもありがとうございました。」 アナウンサー:「川端さんは、昭和47年、73歳で亡くなられました。」 注記(オークフリー):以上が全てである。多少私の創作が入ったかも知れないが、なる べく雰囲気を壊さぬようそのまま書いたつもりではある。 お詫び:ところが、ここでさらに、私の駄文を追加しなければならないことになっ た。と言うのは、インタビューの最後の所で、「へこまされる」と言う言葉が2回出 てきたが、実は「へこまされる」ではなく、何か別の言い回しだったのを、私が度忘 れしてしまったのである。つい今し方まで記憶していた言葉で、一番大切な動詞、こ の『随想』の中で最も正確に書きたかった表現、それがどうしても思い出せないのだ。 『やっつける』『コケにする』『鴨にする』…のような意味で、正にこの放送にぴっ たりの言葉!残念ながら、私はそれを忘却してしまったのであった。情けない! 補足:と言う訳で、すっかり意欲を失った私ではあるが、気を取り直して書き続け ることとする。元来私は川端康成の小説を差ほどには好まない。美しさと悲しみと・ 雪国・古都などのの文学的価値が分からないのである。しかし、伊豆の踊り子・千羽 鶴・山の音・眠れる美女の四作は大変素晴らしいと思う。そして、昨夜の放送を聞い てから、私は川端康成という人物を好きになった。 2 今月のラジオ深夜便で、往年の名歌手を紹介しており、24日は藤原美江、25日 は四谷文子、26日は徳山環、27日は藤山一郎である。それらの歌手と歌について は、いずれまた述べさせてもらう機会があるとして、ここでは、解説および司会者の 森数也(文字不明)氏について書きたい。 この人は、 音楽学校で藤山一郎の1、2級後輩だそうで、一時期NHK名古屋放送局(JOCK) の音楽番組を担当していたことがあり、当地では知られた音楽評論家である。やや高 めの声で優しく話す語り口には好感が持てる。最近では、地方局だけでなく、全国放 送にも時折登場し、特に大衆音楽に関する博識と豊富な資料には感服させられる。も う70歳を越えていると思うが、まことに若々しい。 昭和30年頃、私が盲学校の高等部に在学中のある日、森氏が学校へ慰問に来てく れたことがあった。当時はまだ、民間ラジオ放送とかコマーシャルとかクイズ番組な どが目新しく感じられた時代で、森氏は、全校生徒の前で音楽クイズを演じてくれた。 「今から私がアコーディオンで流行歌の一部分を挽きます。但し、そのメロディー は、歌の中の『アア』と言う箇所です。いったい何の曲なのか、その歌の題名を当て て下さい。」 そう言って何曲かの歌謡曲の『アア』に相当する箇所を挽いて聞かせた。当時盲学 生が150人くらいは居ただろうか。私は、歌の題名が喉の所まで出てきているのに、 ついに1曲も当てることができず、賞品の歯磨きセットをもらうことができなかった。 今でも覚えているが、最後から2曲目が『シベリアエレジー』(伊藤久男)、最後 の曲が『アアそれなのに』(美ち奴)であった。 歌謡曲と言えども、青少年時代によく聞いた曲は懐かしく美しい。私の幼少の頃は、 軍歌一点張りだったから、思想的にはともかくとして、それらの歌は懐かしくわびし い。そういう意味で、大衆音楽もなるべく美しい物を子供たちに聞かせてやりたいと 考えること頻りである。 3 夕べのラジオは、その後、思い出の名作として、ドラマ『…ファーム』を放送した。 北千島から引き上げてきて、北海道の原始林を開拓している人たちと、新しい機械を 導入して新式農業を始めようとする人たちとの、微妙な食い違いを題材にした物語、 生活苦から生ずる矛盾と確執・一方では隣人同士の思いやりの心…。劇の内容や演出 もさることながら、声優の見事な北海道弁には驚嘆した。多分札幌放送劇団の出演だ とばかり思っていたら、なんと、東京の劇団の人々がほとんどで、私のよく知ってい る若山源蔵や白坂道子(文字不明)その他そうそうたるメンバーであった。 芸術とは、かくも素晴らしいものかな。 OAK
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