短編 #0424の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
空梅雨の空を突然閃光が走り抜け、深い轟と共に激しく降り始めた雨は、そ の日の昼過ぎから夕刻迄の間、それは、まるで晩夏を告げ、初秋を迎える時の、 あの嵐の様に続いた。そして、幾度かの停電は電気仕掛けのデジタル時計の時 を寸断刻みに止めて終い、何も知らない数字板だけが過去から現在を追い掛け るように時刻を告げていた。 『まだこんな時間だ…』 と思うのと同時にその事に気がついた時、ふと脳裏を過ったあの日の言葉。 『1分1秒が、大切な時があるでしょ?』 それは、始まりの時を告げる為に(?)或いは、終わりの時を告げる為に… 今思えばやはりそれは、始まりの時から終わりの時を告げる迄の、その時間の 中で止め様も無く流れ続ける1分1秒が、彼女にとって何よりも大切なもので 在ったのだと… せめて今はそう考えたい。 幾日もの雨を集めて濁り淀んだ濁流の中を、いま何かが海へと運ばれている のであろうか、それは流される物の意志とは裏腹に海へ海へと引流されて行く。 一体、果たして流されていたものは何であったのか等と今更思い返しては不可 のでは無いか。 憂鬱で重苦しい、まるで今日の、このどんよりとした空の様に総てが不確か な状態で、一時を共有していただけなのでは無いか。自分の意志を持って流れ に飛び込んだ彼女は、幾度も躊躇いながら、激しい激流に傷つきながら、立ち 止まり、流され、幾度かの繰り返しの中で果たして自分を見失っていたのであ ろうか… 今、この川の流れに逆らいつつ、泥水に喘ぎながら流されて行く魚たちのよ うに… 『流れが速すぎて、ついて行けないの』 と云った、あの日の彼女は既に流れの外に居たのでは無いか。 果たして、その流れは、彼女を本当に海まで流し運ぶだけの勢いで流れ切るだ けの激しさが在ったのかと振り返る時、或いは彼女は其の流れにも増して激し い流れで在ったのではないかと思いたい。 濃緑の山々を湿気を帯びた暑い風が通り過ぎると、その色合いは遠く目には 白緑色に映る。 木々が一斉にその葉を返し、湿った風を求めているのだ。夏が来る。あの日 の様に、晩夏を迎える為に夏が来る。訪れる夏の向こう側に、この息苦しい梅 雨明けのムッとした空気を遥に越えて、あの形容しがたい夏の終わりが待って いる。 束の間の一生を終える虫達に似て、何もかも総てのものが激しく、一瞬の内 に燃え尽きて終うその季節を、精一杯過ごしたもの達にとって、幾度も繰り返 す夏は余りにも残酷な季節なのかも知れない。 『夢は覚めるから夢なんじゃないか(?)』 『夢なら覚めずに見続けたいわ、 覚めない夢だって在っても良いでしょ(?)』 彼女に執って… 『覚めない夢』 とはいったい何であったのか等と、今さ らの様に考える事も無いのではないか… 『夢を見続ける』にはこの季節は束の間にすぎず、一生は、余りにも途方も 無く永い。 せめてもの夢を見続ける為に、彼女自身がこの現実の中で演じる事の出来た あの幾月日を、目覚めた後までも夢として見続ける為に。 幾つかの願いは他愛無い約束として、或いは其の約束自体が破られる為に… 「泡沫の戯言」として振り返る日々が如何にその心の痛みとして大きなもので あるかを知り得る為に、総ては終わった。 祭りの後の誕生日、彼女は必ず今日1日を2人の為にとっておくと云った。 約束は、お互いの心の中で黙殺され、微かな期待の彼方で揺れ動き、現実とな って今日の日は消え去り総てが終わった。 あの日、数箇月の沈黙を破り突然『逢いたい』と云って来た彼女にとって、 今更… お互いの間に何1つとしてその理由の無い事を如何に知らせ得たか、 私はあの日確かに、彼女には「2度と逢わない」と云った。 『1度流れからはぐれた者は2度と同じ流れには戻れない、私自身の流れは 彼女を取り残したまま遥彼方にあるから、再び彼女自身が同じ流れを目指 す時、既に私はその流れには無い… 何処までも果てしなく遥かな隔たり を、誰が埋め得ようか… 』 それを承知で、私の流れから彼女自身が、立ち去ったその日を境に、再び、 彼女が私を必要とする定義は何処にも存在しないとは思えないか… 彼女は「約束を守れなかった」事を詫びた。私は既に「お互いの間で」如何 なる約束も存在し得無い事を、否、否。お互いが如何なる約束も、その効力を 持たない存在である事を、否。お互いが其の様な存在でしか無くなった事を知 って居た。 既に其の時、私は、「今日」という日も、お互いにとっては、如何なる意味 も持ち得ない日にかわっている事を改めて感じ、彼女自身もそうで在ったのだ と、今は思い続けていたい。 それは、まるで冬を越した病葉が、春の陽射しに輝きながら朽ち行く様に… 聖 紫
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