短編 #0421の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
白い指先が無表情にすっと空を翔昇り、他意に束縛され得ぬ湾曲の幽かな蟠りが 静寂の微動に同調するかのような震幅の装いに形を整えると、芳緒里の瞳は、湧き 居出る泉の精霊にも値する清らかな雫の溢れんばかりに紺碧の虚空を斜に射る。 凍雪に晒され冬の虚ろい陽を分離輝かせる蜘蛛の糸の僅かに吹き来る様に漂う儚 さに似て、今にも春の緩やかな陽射しにすら解けて消え入りそうな切ない肢体には 微塵ばかりにもあの激しい夢の開落など伺う術もなく、乱れ波打つ心のうねりにす らも誰ぞ気遣うに及ばざらん面もちも妖しく艶めき、唯一その懐裡において、あた かも、芳緒里のみに与えられたが如く深層の更なる皺襞に絡まる乖離への激責が熔 けた鐵の様に激しく揺れ燃えて居る。 息をするでもなく、綿の糸のひと編みの靡く様もなく、弱々しく開かれた唇は、 桃の果実の香りに似て白く清らかな吐息に泡沫言の熱を帯び、瞬きの束の間にその 身は空に舞い背を射るおぼろ月の明かりの中で崩れ始める。春に咲き誇る切なさに 似て、激しく乱れ舞う桜の嵐を待つ悪戯な儚さを予感させながら今花は開き墜ちて 行く時を待ちわびるのだ。 夜は闇の訪れを知らせる為に静かに陽光を西の峰に運び去り、微かに朱みを帯び た斜光が東の尾根を走り去る様に駆け登り、大気の流れは一瞬の戸惑いの中で淀み を帯び、静かに逆流を始める。それは恰も整えられた秩序を逆撫でしながら荒振る 沼の湖面に訪れた緩い靄の陰に佇む影がその激しさに整然と秩序を授け静寂に誘い 惑わせる様に、或いは今し方目覚めたばかりの春風を遮る少女の涙のように… 言 い得ぬ胸の苛立ちにも魅せられた一瞬では無かったか… 心に突きつけられた短刀の切っ先は深紅に焼けた針のように熱くその輝きは真冬 の氷柱に反射する月明かりのように冷たい。 魔酔堕ちて行く程に狂おしく、その躰を弄ぶ影の激しさにあらがう術もなく芳緒 里は束の間の夢を魅る。 短刀は容赦なく芳緒里の心に深く切り込まれ、永遠の痛みと引き替えに束の間の 悦楽を約束するのだ。 少女から女に代わる束の間… 恍惚の輝きに包まれた芳緒里に与えられる明日は 散り逝く花の掟… 桜貝の爪先を基点に同心円を描きながら地に加速する芳緒里の髪は深海のうねり に天を夢見る藻屑のように闇に融けるでもなく鮮やかな黒い影となり薄紅の乱れ散 る蛍の乱舞を背舞台に幾億年もの時を巡る彗星の一瞬を凝視するほどの緩慢な流れ に任せて今その瞳に最後の月を映し、静かに瞼を合わせた時、幾筋もの銀の雫が天 に向かい輝き、総てが闇に抱かれて眠り始める。 聖 紫
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