短編 #0414の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
むかしむかし、まだ虎が煙草を吸っていたころの話。 あるお城で、小鬼が一匹捕まった。城主さまは、小鬼が宝物を盗みに来たのだと思っ て小鬼を牢屋に閉じこめた。重い鎖をじゃらじゃらと巻いた。 小鬼が、宝物を盗んではどこかにため込んでいるというお話は、みんな知っていたか らな。城主さまも、小鬼を返り討ちにして、逆に宝物を奪ってしまおうと思ったのだろ う。日も射さない地下の深い牢屋で、小鬼を毎日毎日責め続けた。 けれども小鬼は少しも痛そうなそぶりは見せない。殴っても、叩いても、そう、焼き ごてで傷を付けても、不思議なことに次の日には直ってしまうのだった。 腕を切り落とそうとしたおさむらいは、刀を折られてしまった。小鬼は黙って嗤うだ けだった。 驚いたことはもう一つあった。 言うことを聞かない小鬼を水牢に移そうと、役人が鎖を外した。 小鬼は立ち上がらない。そこで抱えて行こうとしたら、なんとも小さな鬼なのに、び くともせん。ぴくりとも動かん。 そこで城主さまは、小鬼をほったらかすことにした。 食べ物を少しだけやって、鍵を閉めて、時々覗くのは一番たちの悪い牢役人だけ。 そうやって、一年。二年。三年たった。 お城は戦になっていたので、だれも小鬼のことを思い出さなかった。小鬼を殴ったり 叩いたりしたおさむらいも、牢番も、次々死んでしまった。 お城は取り囲まれ、あちこちに火が上がり、もうみんな死んでしまうだろうと思った 時だ。 城主さまは突然小鬼のことを思い出した。 小鬼は宝物を隠しているのだ。小鬼も城が焼けては死んでしまうだろうから、逃がし てやると言って追いかけて、そっと小鬼の宝を見つけよう。 小鬼は不思議な力を持っているし、お城には抜け穴があるから、小鬼をだまして一緒 に逃げてもいい。 そうすれば、戦に負けて城も宝も取られても、楽な暮らしが出来るのだ。 城主さまは急いで城の一番下のそのまた下の、小鬼の牢屋に駆けつけた。 牢役人はとっくに死んだか逃げ出したか裏切ったかしていたので、鍵は廊下にほっぽ りだされていた。 長い間ほおって置かれた牢屋の鍵は、錆びていてなかなか開かない。それでも城主さ まは自分の命が大切だから、がんばった。 鍵は開いたと一緒に折れてしまった。城主さまはぼろくずのようにうずくまったまま 動かない小鬼を見て死んでしまったのかと恐れた。 だか、小鬼は死んじゃいなかった。 小鬼が目を開けると、火が灯ったみたいに強く光った。 城主さまは小鬼に、逃がしてやるから、と言って近付いた。 腕を掴んで、立ち上がらせようとした。重い鎖は、錆びて動かなかったけれど。 小鬼は、立ち上がった。 だけど小鬼は実は、小鬼じゃなかったのだ。 暗くてよく見えなかったけれど、小鬼の背中からお尻にかけて、何か太い物がぐいと ばかりに生えていた。 尻尾だ。 太くて大きな尻尾が生えていた。 城主さまは驚いて腰を抜かしてしまったので、よく見なかったが、その尻尾は緑色を していたかもしれない。 尻尾の先は壁にめり込んでいて、立ち上がった拍子にばりばりとひびが入った。 小鬼は城主さまの半分しかなかったけれど、そうして立ち上がると、何倍にもふくれ あがったみたいに堂々としている。 そのころ、外では大騒ぎだった。 お城を取り囲んだ兵隊たちは、地面がゆれてとても立ってはいられないのだ。 刀をほうりだし、頭をかかえて転がるばかりだ。一番偉いのから、一番そうでないの まで、誰でも地面に転がった。 小鬼じゃない小鬼は、なんだったかというと、どらごだった。 どらごってのは何かってえと、父さんの父さんの、そのまた親父の父さんの、はじま りのうんとはじめにたくさんいた生き物だ。 たくさんのどらごが世界を焼いて、その焼け跡にはじめの父さんが生まれたのだ。 それからほとんどのどらごは、月や星の世界に飛んでってしまったのだけれど、ほん の少しのどらごは残ってしまった。 どらごは頭がいいし、何にでも化けられるので今は小鬼に化けていたのだ。 本当は、大きな緑の鳥みたいなんだというけれど、本当の本当は誰も知らない。 とにかく小鬼のどらごは立って、城主さまをランプみたいな目でにらみつけた。 腰を抜かした城主さまは、顎が勝手に笑い出してしまって、どらごが何を聞いても答 えられない。 どらごは城主さまよりうんとせっかちだったので、怒って足を踏みならした。 でも三年もほっておかれたら、誰だって気が短くなるだろう。世界を燃やしたどらご だって、おんなじだ。 どらごの足踏みが一つ。二つ。三つあると、お城はがしゃんと崩れてしまった。 地面に転がって震えていた兵隊や大将たちは、この世の終わりだと思って震えていた が、ようやく揺れがおさまってしばらくすると、何もなかったように崩れたお城に向か って行進をした。 さて、最初に小鬼のどらごが盗もうとしたお宝が、お城にはあったはずだ。行進は、 その宝物をめざして進んでいった。 さっきまでお城の石垣だった大きな石がばりばりと割れた。 また地面が揺れ出すのかと思って、みんながしゃがんでしまうと、何か光るものが石 の間から飛び出した。 どらごだ。 小鬼のどらごが、何か光るものと一緒に飛び出したのだ。 どらごが抱えたそいつは、なんと光るお姫さまだった。お姫さまは眠っているみたい で目をつぶっていたが、たいそう綺麗ですてきだった。 城主さまにそんな綺麗なお姫さまはいなかった。もちろん綺麗なお妃さまもな。城主 さまはひどくけちだったのだ。お妃さまに食べさせるご飯がもったいなくて結婚しない のだと誰もが言ってたほどにな。 では、その綺麗ですてきなお姫さまは誰かというと、実はこの光るお姫さまが宝物だ ったんだよ。お城の奥ふかーくしまってあったんだ。 どらごは三年かかってその尻尾をお城中にはりめぐらした。お姫さまをさがしたんだ けど、どうしてもうまく行かなくて、とうとうお城をこわしてしまったんだ。 飛んで行くどらごがどこに行ってしまったのか、他のどらごみたいに月や星に行って しまったのか、それともどこかでお姫さまと今も幸せに暮らしてるのか、それは誰も知 らない。どらごだって知られたこっちゃないと思ってるさ。 城主さまは石の下さ。俺の父さんの父さんの親父は、地面に転がって震えながら、飛 んでくどらごを見たって言うぜ。 さあ、今日はもう終わりだ。 みんな、気をつけてかえんな。 帝国古代の神話と伝承より 「小鬼のどらご」
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