短編 #0405の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
【入院中】 そう書き込まれたホワイトボードを目で追いながら 「ぼくはここにいるのに」 思わず声に出してしまってからあわててあたりを見 回したんだ。 けれども、後ろに座った川口くんがアクビをした以 外は教室はいつものように静かで、せんせいの声だ けが聞こえるのさ。 誰もぼくが声を出したなんて気にしちゃいない。 それだけじゃない。こうして机に座って、せんせい に背を向けてこんなふうに後のボードを見ていれば、 いつもだったら「武くん、何してるの!やめなさい」 って怒りだすのに、今日はなんにも言わないしさ。 そこで急に思い出したのさ。ぼくは幽霊なんだって。 この間大きな地震があったんだ。ぼくは寝てたから よくわかんないけど、怪獣のうなり声みたいな音が して、いきなりベットが逆立ちしたんだ。 ぼくは何か叫んだみたいだけど今は思い出せないや。 目が覚めたら病院のベットにいたんだ。 なんでかからだが軽くて気持ちがいいから、パパと ママが横で居眠りしてる時に病院から抜け出したの さ。でもからだのはんぶんはベットに残ってるんだ。 じぶんを天井から見るのは面白いよ。 けどぼくがからだを抜け出すと、病院の偉いお医者 さんや看護婦さんが駆けつけて来て、みんなで大騒 ぎするんだよ。 いろいろなテレビみたいなのを持ってきてさ。 ぼくはみんなの前に立つけど誰にも見えないみたい。 でも、そうなるとパパとママはいつも悲しそうな顔 をするんだ。 ぼくは前からパパとママが好きじゃなかったから別 にどうでもいいんだけど。 パパは毎日仕事で「疲れた、疲れた」を繰り返して 日曜日も遊んでくれないし、ママは僕がTVゲーム で遊んでいるとTVのコンセントを抜いて怒るんだ。 サッカーをいっしょにやっていた隣の木戸くんが、 2日前にしんじゃったから、ぼくの友達はもう松村 くんしかいないんだけど、松村くんも最近はぼくの 事なんか忘れちゃったみたいに、昔、嫌いだって言 っていた、いじめっ子の伊藤くんなんかと遊んでい るんだもの。頭にきちゃうよ。 あれから2週間が過ぎてもう誰もぼくのことなんか 覚えていないみたいだし、つまらないから木戸くん がいる天国に行っちゃおうかな、なんて考えてさ、 ぼぅ、と今日は一日中教室でこうやって座っていた んだ。 あれ、みんなが騒ぎだした。授業が終わったんだな。 前の席からぼくが一番嫌いなレイコがやってくる。 コイツはぼくの嫌いなニンジンを残すと、すぐ先生 に言いつけに行くし、すぐウソ泣きをするんだ。 え?みっちゃんと一緒だな。みっちゃんはばくが前 から好きだった女の子なんだけど、なんでレイコみ たいなイジワルな奴と遊ぶんだろう? みんなホントはイジワルなんだよ。きっとさ。 どんどん、こっちに向かって歩いてくるよ。うわぁ ぼくの事が見えるのかなぁ、と思わず机から降りて しまった。けど二人とも僕の机の所で立ち止まったぞ。 「たけし君、だいじょうぶだよね?ミッコ」 「でも最近、お見舞いも出来ないんだって」 「うん、この間も行ったけど会わせてもらえなかった」 え?レイコが病院に行ったって。どういう事なの? 机の横を出て後を振り向いたレイコは、ホワイトボ ードの中のぼくの欄の【入院中】という文字をじっ と見つめたんだ。そしたら信じられない事にレイコ の眼から涙が一粒ぽたんと床に落ちたのさ。 「たけし君が早くよくなりますように!」 その言葉は魔法の呪文だったのかもしれないな。 いきなり目の前の教室が崩れだしたんだよ。 僕はそのとき「また地震が起きたんだ」と信じて疑 わなかったけど、まわりを見るとぼく以外の人間は みんな驚いてもいないんだ。 景色がますます崩れだしたんで、僕は前の地震で叫 んだ言葉を思い出したんだ。 「おかあさ〜ん、助けて!」 その瞬間、景色が急に白と黒に変わったかと思った ら、からだが電気ショック受けたみたいにしびれて 吹き飛んだのさ。 その後に目をおそるおそる開けたら、そこは病院の ベットの中で、偉い先生がぼくの顔を見てにっこり と笑ったんだ。その顔はあんまり好きじゃないから 横を見たんだけど、難しい顔をしたパパと目を真っ 赤にしたママが二人並んで座っていたんだよ。 「もう大丈夫でしょう。峠は越えました。」 そのとたんにママは泣き出すし、パパはますます変 な顔になってハンカチなんか取りだすから、僕はど うしていいかわかんなくてドキドキしちゃった。 僕を見つめながら、先生はパパとママにこう言った んだ。 「最後は本人の生きようとする気力が奇跡を呼んだのです」 僕は退院してから、パパとママと一緒に公園にテン ト張って暮らしているんだ。 パパも毎日遊んでくれるし、ママもあんまり怒らな くなったよ。 いじめっ子だと思っていた伊藤くんも本当はいい奴 だったみたい。 レイコは相変わらず僕にイジワルするけど、前ほど 憎らしくないんだ。 それどころか最近少し可愛く見えるよ。へんだね。 END / 香奈代
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「短編」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE