短編 #0385の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
あなたと、おなじものを聴いていないと不安です。 おなじものを食べおなじものを飲みおなじ話に頷きおなじ服を着て、それがけ れどできないならせめて、おなじものを聴いていたい。そうでないと不安です。 あなたがあの日手にしていたのとおなじレコードジャケットを今、手にしてい ます。あなたはあの日これを聴きながら私と転がりわらったね、おぼえています か。 きっとおなじことについてわらったのだと思うけど、そのときはそう思ったけ れど、どうしてあの頃そうやって無邪気に信じていられたのかが今ではとても不 思議です。 素晴らしい人生なんて絶対なくって、振り返ると輝くのはほんのひとかけら。 そのあまりの小ささともったいなさで悲しく思えます。あの日、あの時、どうし てもっとあなたと一緒の時間を大切にしなかったのだろう。宝石箱に入れるよう に。ううん、食費を切り詰めるように。あの一瞬をこぼしてしまわずにとってお いたら、まだ今もてのひらに残しておけたんじゃないかな、って。 レコードをかけたから大丈夫、今日あたりそろそろ眠ることもできるでしょう。 いえ、眠っていないわけではない。眠ろうと思った記憶がないだけです。気が付 いたら眠っているらしく、ふいに頬に落ちる涙の筋に起こされる。そんな暮らし がつづいています、そう、あなたと過ごす時間をなくしてから。 あなたと、おなじものを聴いていたいと思っています。確かに二人がいたのだ と、今でも愛していると。そばにいられなくなっただけで今でも私を愛している、 というあなたを信じているために。 レコードは、私があの日気に入って何度も聴いた曲を奏でています。いつまで もこの曲だけ聴いていましょう。この曲の檻の中にだけ住みましょう。今あなた が心に浮かべる私も、今私が心に浮かべるあなたも、もうとうにあの日の形見に なってしまっているのだから。 了 1995.02.01.09:15
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